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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第27章 女神たちの輪舞曲
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我に続け -27-02-


ルイは昨日から続けられるこのべた甘な会話に嫌気を感じながら欠伸を1つした。

すでにグリティアは落ちていると思われるが、なかなか首を縦に振らないせいでゼリが延々口説きつづけている。

当の本人は真っ赤で固まっているが、恥ずかしいならさっさと止めさせてほしい。こっちも恥ずかしいのだから。


「ダメだろうか、グリティア」


「も、もういいから!やめて、それ、もう!」


どうやら諦めがついたようだ。

しかし、タイミングを見計らったかのように乱入者が現れる。

部屋へ強引に入ってきたのは2人の魔人。


「グリティア様、魔王様からの託を………あら?なぜゼリ様がここに?」


「ん?魔王に言ってなかったかい?グリティアを嫁に貰いたいから、口説きに行くって」


「まあ!それはおめでとうございます!それで、グリティア様――税率の引き上げと兵士の拡充についてなんですが――――あら、ゼリ様まだ何か?」


「その話はいい。しなくて結構だ」


主に話していた女の魔人に悟られないよう、後ろに控えていた男の魔人を昏倒させ、封印する。

ゼリにしか意識が行ってなかったため、割と簡単にできた。

封印した隊員は符をルイに手渡すと、姿を隠す。


「……それで、メリアール。何の話?」


その工程を見ていたグリティアは動揺しながら魔人・メリアールの気を引く。


「グリティア、聞かなくていいよ。すぐに体制は変わる」


「……ゼリ様、いったい何の話を?」


「ここに僕がいることを魔王に知らせることをさせるわけにはいかないから、君にもカイザーと同じ目にあってもらわないといけないんだけど」


「カイザーなら、私の後ろに……カイザー!?どこへ!?」


背後には扉の前にて待機しているルイしかいない。


「……そこの獣人の貴女、どうしてそんなところにいるのかは聞きませんが――カイザーをどこへやりましたの?」


「ご安心を、ここに」


ルイが符を一枚見せる。


「何をふざけたことを……」


「メリアール、今君が選べる選択肢を教えよう」


いつの間にか背後に移動したゼリがメリアールの肩を掴みながら問いかける。


「1つ、抵抗せずにおとなしく僕に主を変えること。2つ、おとなしく――カイザーと同じように封印されること。3つ、ここで殺されること」


「バカな話を……実力に差があるとはいえ、こんなところで戦えば街が滅びますわよ?」


「安心しなよ」


ゼリが魔法珠を握っていた魔法珠が発動する。


「ここなら問題ないだろ?」


「転移!?」


周りは荒野。ゼリと一対一の状況だ。


「そうそう」


「そ、そんな。待ってください、ゼリ様。どうして、魔王様を裏切るような真似を」


「君は本当にあれが魔王だと?“王”としての責任を果たせないのならば、高いところにいられると邪魔なんだよ。軍備の強化よりも先にやるべきことがあるだろうに……そもそも、あれがいるだけで魔国にとって害悪でしかない」


「そんな……」


「選べないのであれば斃させてもらう」


「まっ「あれ、何してるのこんなところで」


「ああ、オトハ君か。どうしてもどってきたんだ?」


「今日か明日にニージェル落としに行くらしいから。私たちはグリティア側からってことで。ゼリさんはとりあえず自分の領地に戻って欲しいって」


「わかった」


「ゼリ様!?」


「メリアール。悪いが3日ほど眠っていてくれ。それですべて片付ける」


「そんな「ごめんねー、一撃で終わらせるから」ちょ!?」


オトハの一撃はメリアールの意識を奪うのには十分だった。すぐに封印がなされる。


「そろそろ封印の符がなくなりそうだな……」


「姉君から補充を受けていないのか?」


「ちょっと忘れてて。でも、もう終わるなら大丈夫でしょ?」


その後、オトハと共に帰還したゼリはルイに驚かれることとなる。


「しかし、ここまで来るとまずいな。早めに決着を付けないと」


「気づかれる前に強襲だね」


「完全に悪役のやり方だけどね……」


あ、そういえば。とオトハが何かを思い出し、一枚の紙を取り出す。


「これ、ちゃんとし台紙作って売り出すことにしたんだ。神殿巡礼で刻印を集めるんだって。さすがに、売り出すのはインクの印だけど、これは本物ね」


そういうとオトハは、紙を一度ルイに手渡し、再度刻印を押させる。


「じゃん、女神からお二人への祝福です」


「……ゼリ、なんだか随分一気に増えたのだけど」


「ありがとう、オトハ君」


「今は天・冥・無・光・闇・火・風・地だけだけど、残りの女神にも会えたら捺してもらってね」


「……フィー、なんか諦めがついた」


「えっと、嫁入りの準備をした方がいいのでしょうか」


「とりあえず、他の場所がどうなるかわからないからそっちが落ち着いたらね」


「ハルトさんが、帰る前に式ぐらいは盛大にしてあげるって言ってたよ」


「そうか、ありがたいな」


「……フィー、なんか詰められてるみたいなんだけど」


「そうですね。まあ、いいじゃないですか。ゼリ様、素敵ですし、強いですし、もし魔王になられるのでしたらそれこそ地位も高いですし」


「だよね」


ようやく諦めがついたグリティア。

そして、他の地区でも作戦は順調に進んでいる。


「―――はい。わかりました」


「どうかした?ルイ」


「爆神殿、解放完了です。それに伴って、リビード領の攻略が開始されました」


「スズネさん、無事に女神に成れたのかな」


「そのようですね」


「女神に成る、とはまたすごいね」


「よくある話ですよ」


「そうかい?何はともあれ、僕は一度自分の領地に戻るよ。王になるには計画が甘いとマクロファーにも言われたところだし、法関係の整備とかもあるしね。きちんとした王でないと、民はついてこない。あれが魔王になって深く実感したから」


「反面教師という奴ですね」


「まあ、がんばってね」


ゼリは転移珠を使いその場から姿を消した。


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