龍の嘆き -27-01-
ハルト達は荒野を抜け、アルンガンディから得た情報の通りの方角に進んでいた。
そして、それらしい場所を見つけたのだが、
「いや、火山帯なんて聞いてないんだけど」
「暑いですね」
「とりあえず、私の加護かけるから全員集合」
1番隊は一部をアルンガンディ領に残して進行している。
「もうそろそろ朝日が昇るけど、全員準備は?」
「問題はないがさすがに眠い」
「だろうね。僕も眠いよ―――ふぁ……」
「シズネさん、冷水を」
「了解」
欠伸をしたハルトに冷水が浴びせられる。
「ぶわ!?何するんだ!?」
「目、醒めた?」
「――そろそろ進むぞ」
エンマが先頭に立ち溶岩の吹きだす山肌を登っていく。
「火の神殿はこんなのじゃなかったのに」
「ハルトさん、よそ見してると融けますよ」
足場はそれほどよくはないが、傾斜が緩やかなのでそれほど上るのは難しくない山だったが、酷い高温が全員のやる気を削いだ。
「あっつ……エンマ、なんで平気なの?」
「元がイフリートだからじゃないだろうか」
「あー、あったねそういう設定」
「ところで神殿らしきものは見えてきたんだけど、龍はどこ?」
シズネがエンマの手を借り岩を登りながら問いかける。
「そうだね、基本的に見通しはいいからそろそろ見つかってもいいはずだけど」
「ハルトさん、ハルトさん」
「どうしたのスズネ……あ、手なら貸すよ」
「ありがとうございます――いえ、そうではなく。今、3人が昇った岩が龍なのでは?」
「は?」「え?」「そうなのか?」
3人が慌てて飛び降りる。
岩肌とまったく同じ色でごつごつとしている。
しかし、言われてみればそんな形をしているような気もしてくる。
「死んでるの?」
「いや、でも籍?は残ってるんでしょ?」
「龍っぽい岩かもよ?」
ハルトが手を置いた瞬間に、龍っぽい岩は炎を吹き出しながら起き上がった。
「違った」
「いいから離れなさい」
即座に反応したシズネが龍の頭に氷の塊を撃ち込む。
一瞬で氷が水蒸気へと変わり、周囲が曇る。
「今のうちに体勢を立て直す!水系の魔法で攻めろ、それほどの敵ではない」
エンマの号令で、全員が一斉に魔法を起動する。
「ハルト、指揮は任せる」
「ああ、うん。でもそんなに持ちそうにないよ、この龍。だいぶん弱ってるみたいだし」
「そうなのか」
「そうそう、戦術『逢危須棄』発動。さて、2分で終わるよ――攻撃開始」
ハルトの号令で魔法を一斉に放つ。
弱点である水の魔法に大きく怯む龍、その隙にエンマが頭に剣を振り下ろす。
悲鳴を上げてよろける龍の頭に、スズネの放つ連射が浴びせられる。
「いい調子だ―――――ダメだ」
「どっちですか!?」
「全員離れろ、自爆するぞ」
ハルトの声に全員が反応し、一斉に後退する。ハルトは結界を起動させるとそれを魔力を急速に練り上げる龍へと放る。
「3、2、1……うぉ!?っと」
強い衝撃で山が揺れる。
「丈夫ですか、ハルトさん」
「問題ないよ……しかし、暴走してたとはいえ自爆とは」
「最初から弱ってたのも何故だろうか」
「……魔人が居るか」
「そのようですね」
「……ハルト、エンマ、ここは任せる」
「シズネさん、何を!?」
シズネはスズネの手を引いて駆けだす。
1番隊の隊員たちもエンマの指示でその後を追う。
「3人か……行けるかな?」
「たまには恰好良いところ見せないとな」
「君と僕ではタイプが違うと思うんだけど、まあいいか」
ハルトが鎖鎌を構え、エンマも剣を構える。
「名乗らせる前に潰す」
「酷いね、それ」
こちらに近づく影へと駆けだす。
ハルトの魔法によって速度はかなり上昇し、一気に距離を詰められ驚く魔人たち。
そのうちに一人を、エンマが剣で弾き飛ばし、
「あれが帰ってくる前にこちらを潰す」
「了解」
ハルトは相手の懐へと潜り込む。
しかし、相手の短剣に攻撃ははばまれる、というのも想定内の出来事でその短剣を腕ごと弾き飛ばし、鎌の刃を首へとあてる。
「降参かな?」
「貴様……」
「まあ、降参かどうかなんて関係ないけどね」
いつの間にか投じていた分銅が一周して戻り、それをキャッチするとハルトは相手の後ろに回り込み、首を締め上げた。
「……何をえぐいことしているんだ」
「いや、秒殺した君に言われたくない。というか、封印してくれない?」
「わかった」
どんどん色がおかしくなっていく顔に符をぺたりと貼り付ける。
「それで、殴り飛ばした奴は?」
「……帰ってこないな」
「打ち所が悪くて死んだとか?」
「…………」
スズネ達もまだ戻らないので、とりあえず二人は探しに行くことにした。




