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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第26章 支配者たちの円舞曲
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武人の心得 -26-04-

魔王直属の将とハルト達をぶつけて勝った方に着こうなどと小賢しいことを考えていたアルガンディの思惑は、エンマとシズネによって将二人を瞬殺されたことにより終了し、さらにその思惑をスズネに見破られたことにやって酷い譲歩をしたうえで、女神陣営へ着くこととなった。

いくらか対抗策もあったのだが、ハルトとスズネのように言葉を交わすのに慣れていなかったため矢継ぎ早に決められていく事項に口を挟めないまま終わってしまった。


その舌戦――というにはあまりに一方的な戦いの裏では、イラム領に向かった2班とマクロファーによる交渉が進められていた。


「しかし、酷い場所だったな」


「あの速度で魔物が湧いてこられると、我々だけじゃ正直ヤバかったですね」


「ああ、カナデ達がついてなかったら無傷とはいかなかったな――というかオレたち何もしてないけど」


「イラムは武人だ。あまり頭の良い方ではないが、単純な戦闘力ならばゼリに迫る。気を付けてくれ」


「りょーかい、さっさと終わらせてキャンプに向かうぞ」


マクロファー領よりも少し劣るレベルの街だが十分に整備されているといえよう。

ただし、住民の活気のなさを見る限り、あまり豊かとはいえないだろう。


「クピなんとかの所よりは全然マシだが……いいともいえないな」


「ふむ、守衛もなしとはアイツらしくもない」


「いえ、どうやら。お出ましのようです」


マクロファーを強引に下がらせ、前に出たカケルが上空から落下してきたバトルアックスを剣で弾き、軌道を逸らす。


「はっは、ワシのそれを弾く猛者がおるとは、マクロファー、その若造どこで拾ったんだ?」


「相変わらず荒々しい歓迎だなイラム」


マクロファーが前に出る。


「今日はお前に話が合って来た」


「東の智将と呼ばれたお前さんが、戦うしか能のないワシになんのようじゃい」


「私はゼリ程に武力があるわけでないのでな、できればお前に味方に付いて欲しいのだ」


「ゼリと戦争でもするんか?それよりお前さん、娘はどうした」


「娘の事は解決した。故にここまで出向いたわけだ」


「なるほど、見えて来たぞ」


イラムがバトルアックスを地面から引き抜きながら言う。


「娘の事で心配がなくなったから魔王さんに復讐ってことか」


「そうではないが、そうでもある」


「ふむ、難しいことを言うな。つまりどういう事だ?」


「魔王を潰しに行くから力を貸せ」


「はっはっは、最初からそう言えや」


「協力してくれるか?」


「うむ。断る」


えええ!?という声をエイダイとカケルが上げる。


「そういうと思った。一応理由を聞こう」


「ワシは武人じゃからな。どんなに堕ちていても、一度忠誠を誓った主君に刃を向けることはできん」


「なるほど、それでは魔王の手勢に加わらないという確約も無理か」


「そうなるな」


「わかった。エイダイ、後は頼む。この石頭をさっさと封じてしまえ」


「まあ、構わんけど、いいのか?このオッサン話わかる気がするけど」


「気にするな、全部終わってからもう一回話した方が早い。この男はそういう奴だ」


「おっけー、じゃあぱぱっとやるか」


「ふん、若造ごときがこのワシに勝てるのか?」


「やってみねぇとわからんだろ?カケルは他の連中を頼む」


「わかりました」


「ああ、悪いがうちの連中は見逃しておいてくれ。少しはできる奴を置いとかないと民だけでは海と荒野からの魔物を防ぎきれないからな。なんだったら全員マクロファーの指揮下に入れてくれて構わない」


「わかった、そのようにしよう。だがひとつ言っておくが、お前にもすぐに働いてもらうことになるぞ」


「はっはっは、まるでワシが負けるような言い種じゃな」


手に持ったバトルアックスを構える。


「行くぞ若造」


「どこからでも来いよオッサン」


エイダイも剣を構える。


「行くぞ」


重い大斧を抱えているとは思えないほどの速さで動き出す。

エイダイはその攻撃を受けきると、反撃をの一手を打ちこむ。


「なかなかできるではないか」


「お褒めにあずかり光栄だよ!」


エイダイの一撃を防ぎきると、すぐさま反撃を撃ちこもうとする、しかし、エイダイの追撃の方が速い。


「むう!?」


「雑魚ばっかり相手してると体が鈍っていけねーや、そうだろ?」


エイダイの動きは徐々に速度を上げ、一撃の撃ちこみの威力も上がっている。


「魔法剣VII:JUDGMENT」


「不味いな」


そう言いつつも笑みを浮かべ、イラムは斧に魔力を通わせる。


「行くぞ」

「来い!」


一気に距離を詰めたエイダイが剣を振り切る。

その瞬間、血を吹き上げてイラムが地に伏した。


「こんなものか。生きてるな?オッサン」


「はっはっは、なるほど、こりゃ勝てんわ」


「なんで笑ってんだよ……まあいい、カケル、傷だけ塞いでさっさと封印だ」


「了解です」


「しばらく休んでもらう。まああと二日の辛抱だ」


「2日で城を落とすのか?」


「そうなるな」


「そりゃ、面白い。後で詳しく聞かせてくれ。お前らも、少しの間頼んだぞ」


「了解です!」


一番実力があると思われる配下の魔人が返事をする。

それと同時に、カケルが封印の符を発動させた。


「終わりました、それではマクロファーさん、お話が終わり次第キャンプに出発します」


「わかった。手早く済まそう。現在の筆頭はニレアか?」


「はい!」


先ほどの女の魔人の所へとマクロファーが向かっていく。


「カナデ、こっちは終わった。イラムを封印、制圧完了だな」


『了解です。こっちはいろいろ準備しているので楽しみにしててください』


「おう、話が終わったらすぐ戻る。座標はカケルの方に送っといてくれ」


『わかりました』


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