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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第26章 支配者たちの円舞曲
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小心者の城塞 -26-03-

クピディタス領からアルンガンディ領までは徒歩で丸一日かかってもいいほどにはなれている。しかし、彼らの場合は別だ。

全体に加速魔法を重ね掛けし道ともいえないような荒野を突っ切っている。


「時速何キロ出てるんだろうね、これ」


「ハルトさん、ぶつかったら死にますよ。前見てください」


「ああ、ごめん」


「全員ついてきてる?エンマは大丈夫?」


「問題ない。それよりも、もう30分ぐらい走ってる気がするが、この先に本当に街なんかあるのか?」


「それは確かだよ。多分もうすぐ見えて来るんじゃないかな」


ハルトが前方を指さす、それから10分ほどたったころには、前方に大きな城壁が見え始めた。


「クピディタス領とはえらい違いだね……」


「どうやって入るの?」


「門をかち割ればいいんじゃないか?」


「なるほど」


「いやいや、そんなことしたら交渉に支障が出るだろ!?」


「しかし、簡単に交渉に応じてくれるとは思いませんが……」


「その時はヤるしかないよ」


「お前も大概だな」


エンマにツッコまれながらさらに走っていると、徐々に道が整い始める。

そして、門が見え始めるころになると道が舗装されているようになった。


「デヴァ―スよりもきれいじゃない?」


「あそこは廃都をそのまま活用してただけですからね……元は王国領らしいです」


「へぇ……さて、全員速度落して……後魔法は何分?」


「少し前に掛けなおしたところなので、あと5分は大丈夫だと思います」


「じゃあ、このまま行こうか」


「入れてくれるのかしら……」


「一応、ゼリさんとマクロファーさんからの親書がありますから」


そういうと、スズネは一人先行し、門番の所へと向かう。

何やら会話をしたのちに、封書を2枚手渡す。

すると慌てて、警備の1人が街の中へと駆けて行った。しばらくして、何人かが戻りスズネと言葉を交わしたのちに、


『大丈夫です。入れます』


「行こうか」


「なんかずいぶん焦ってたけど」


「スズネ、なんかしたんじゃないかしら」


「何もしたないと信じよう。聞くのが怖いから」


ハルトはスズネに合流し、街の中へと進む。

途中、すれ違った兵士の何人かの顔色がおかしかったがスルーすることにした。

街の中は、クピディタス領など比にならないほどに整備が進んでいて、下手をすれば木造の多いマクロファー領よりも進んでいるのではないかと思うほどであった。

家屋は綺麗にカットされた石で作られ、石畳がまっすぐ領主邸まで続いていた。


「さて、じゃあ行こうか」


「通してくれたってことは、話する気はあるってことなのかな?」


「どうだろうか、全員一応警戒しとくように。あと、隠密行動できる者は街に散ってくれ」


「「「了解です」」」


三人ほど後ろを離れ、街の中へと消えていく。


「さて、すぐに終わればいいけど……」


領主邸に真っ直ぐ通され、門を潜り、執事に続いて応接間へと入る。


「君ら外で待機ね」


「了解です」


隊員たちはひとまず廊下に残し、ハルト以下4名で中へと入るとそこには椅子に腰掛けた気の弱そうな男と、やたらと露出の多い女魔人と甲冑の男が立っていた。


『魔王直属……読まれてたか!?』


『偶然でしょう。しかし、彼らを城に帰らせることはできませんね』


『機を見て討ちます』『二人はアルガンディに集中するといい』


ハルトとスズネは何の反応も見せずに、アルガンディの正面に座る。


「さて、と」


そういった瞬間にシズネとエンマがそれぞれ鎧と女に蹴りを入れ壁を吹き飛ばし屋外へと飛ばした。

2人はそれを追って壁の穴から外へと出ていく。


「先ずは、お二人からのお手紙を」


「う、受け取らせていただきます」


口の端を引き攣らせながら、アルガンディが手紙を受け取り内容を読む。


「えっと、それで私は何をすれば?」


「ええ、それではそのお話をさせてもらいます。ああ、さっきの二人の事は気にしないでください、直に帰って来るでしょう」


にやりと笑うハルトにアルガンディが嫌な汗を流し始める。



*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+



「うふ、お兄さん、私とイイコトしましょう?」


「シズネ、なんか気持ちの悪いのと当たったから変わってくれないか。大変やりづらい」


「今は無理!」


シズネは鎧男の剣戟を必死で躱しながら弱点を探っている。

対するエンマは女の方と対峙していたのだが、どうやら相手はサキュバスのようで、さっきから、魅了系の状態異常を振りまいているらしいという事がわかる。しかし、


「種族がシズネの影響でバグってからそういう状態異常は効かなくなったのだったな……いや、シズネからのみ効くのか」


「何を言っているのお兄さん」


「ええい、離れろ!」


纏わりついてくる女を引きはがし、剣で撃ちつける。


「!?――――魅了が効かない!?」


「お前は、鏡を見たことがないのか?」


エンマが背後へと移動する。


「!?」


大剣の刃が女の腹を捉え、両断する。


「―――エロいだけでシズネに勝てると思うな」


「う、そ?」


これでもまだ生きているらしく、HPは半分ほど残っているが、エンマはさっさと封印の符を押し付け、付箋に「20」と書いて張り付ける。


「さて、シズネは?」


振り向くと、ちょうど鎧の男が地面に倒れるところであった。

何故か体力は100%に近いのだが動く気配がない。


「何をしたんだ?」


「鎧硬くて刃が通らなかったから関節凍らせてみたの。アレだったらここに水を注ぎこんで溺死するまで見守ってみる?」


「いや、さっさと封印してしまおう」


「そうね、ハルトの方は……」



*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+



『こっちは終わったわ』


「こっちももう終わりそうだよ。それでは、後日ゼリさんかマクロファーさんが尋ねると思いますので。あとはここにサインと血判を」


「カナデさんですか、アルガンディ制圧完了しました……はい、わかりました。次の指示を待ってください。ハルトさん、イラム領制圧完了です。グリティアの方は今到着したようで」


「わかった。じゃあ、アルガンディさん。アカントス神殿の位置と現状を教えてくれるかな?」


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