女神の目覚め -25-06-
全員の合流を確認した後、邪魔な蔦を焼き払い、カナデ達は神殿へと突入した。
神殿内部は、大陸の東にあった物よりもかなり朽ちていて、かなり崩れそうで不安になる。
「龍を倒す時にもっと派手な魔法使ってたら崩れてたかもね」
「カナデさん、あまり怖いこと言わないでください」
「どこへ向かえばいいんですかね?」
「とりあえず、奥の部屋じゃないでしょうか」
神殿の構造をある程度分かっている4人が先行して奥へと進む。
途中、よくわからないアンデッドなどがたむろしている場所もあったが、女神が4人もいては威圧感もそれなりのようで、カナデ達の姿を見た途端どこかへ消えて行った。
「この奥ですね」
「でもなんか、開きませんよ?」
率先して扉を開けようとしたミサキがドアを押すのだが、一向に動く気配がない。
「無理やり破りますか?」
「そうしよっか、時間も惜しいし」
カナデが刀の柄に手を当て、魔力を込める。
「刀技・亜空斬」
カナデが抜刀すると同時に、ピシッ、とヒビが入るような音がしたと思うと、扉を封じていた結界が音を立てて砕ける。
そして、それに続いて石の扉に断裂が走り、崩壊した。
「よし」
「ダイナミックですね」
「というか、結界だけ壊せばよかったんじゃ……」
「タツヤ、それは言っちゃダメ」
扉の崩壊によって発生した埃が落ち着いてから、カナデ達は中へと進む。
「やっぱりここだったね」
「さて、さっさと起こしましょうか」
女神が神殿を操るための台座に魔法封印によって拘束された女神――樹女神シルバ。
「でもどうやって起こすんですか?」
「見た感じ近づけそうにないですけど……」
「もう一回亜空斬する?」
「カナデさん、それすると女神ごといきそうなんで……」
「とりあえず魔法陣を壊してみてはどうでしょう」
「あ」「なるほど」
「ツバサ、いいこと言うね!」
発案者のツバサが前に出て剣でその魔法陣へと攻撃を放つ。
「!?」
「弾かれた!?」
「いい方法だと思ったんだけど」
「シオン、手伝って」
「え、はい」
カナデの所へとシオンが向かうと、カナデが何やら耳打ちをする。
それに頷いたと思うと、シオンは台座の反対側に移動する。
「魔法は効かなそうだけど、こういうシンプルな術なら通ると思うな」
カナデが8枚の符を前に投げる。
その向かいではシオンも同じようなことをしている。
「行くよ、エナジーロスト!」
符は一瞬にして光の欠片へと変化し、その光を周囲にまき散らした。
「!?」
「これ、どういう効果なんですか!?」
「まあ、見てて」
光の塵は女神を縛る魔法陣の上にゆっくり降り注ぎ、その塵が当たったところから、その力が解けて、宙に散っていった。
「少し時間はかかるけど」
「これなら大丈夫でしょう」
いつの間にかカナデの隣に戻ってきたシオン。
そして、その光景を30秒ほど眺めてると、突如、魔法陣が音を立てて崩壊した。
「かなり消えましたから、働きを維持できなくなったのでしょう」
「とにかくこれで女神様を救えますね」
「イーリス、回復お願いできる?」
「お任せください!」
イーリスが駆け寄り、魔法を掛ける。
一方、封印から解放された女神はゆっくりと目を開く。
「案外早く目を醒ましたね」
「そうですね、一安心です」
「……ここは……たしか魔王がせめて来て、封印されて……!?貴女たちは!?」
「落ち着いて、私は無の女神アルモ」
「闇の女神プルーラです」
「え、えっと、母から女神の位を継ぎました、シルバと言います……まさか、助けに!?」
「はい、とりあえず、神殿の方を起動できますか?」
「は、はい!」
多少崩れてはいるが、その機能はちゃんと生きているらしく、シルバが力を込めると光の輪が広がった。
「これで、マンシー平原の辺りまではカバーできると思います」
「ありがとう。とりあえずここを出ましょうか。色々と話をしないとダメみたいだし」
「そうですね……そういえばうちの龍は」
「すいませんシルバさん、我々が来た時には完全に暴走状態でして、討伐しました」
「わ、わかりました。捕まった時から覚悟はしていましたが……」
「一旦、街に戻って……あ、神殿の守りどうしようか」
「それなら私が引き受けるわ」
「星影!?竜の谷へは!?」
前方から突然現れた見知った顔でに驚くカナデ。
「行ってきたわよ?神殿起動したことだし、すぐに次の樹龍が選ばれるでしょう。それまでなら」
「わかった、お願いね。あと、モエとカイト悪いけど先行して説明してくれない?カイトは姉さんとも連絡取っておいて。こっちはハルトさんに連絡しておくから」
「了解です」「任されました!」




