7の覇道 -25-05-
「カナデさん、あの森ですね?」
「うん、そうみたいだね。というか神殿どこにあるんだろう……」
眼下に広がる森にはかなり高い気が生い茂り、神殿の形は視えない。
「多分だけど、真ん中より少し街よりの所にあると思うわ。龍の気配がするから」
「ありがと、星影。じゃあそっちに向かってくれる?」
「構わないけど、気を付けてね。たぶん、もう正気じゃないと思うから」
星影とそれに続いた朔夜が森の中へと降下し始めると、森の中から凄まじい咆哮が響いた。
「っ!?」
「樹龍……のなれの果てね」
周囲の木々と一体となるように、全身に緑色の何かを纏った龍が吼える。
「シオン、どうする?」
「とりあえず、これを片付けておく方がいいかと……朔夜、あれの状態は?」
「樹龍は完全に瘴気にやられています。もはや意識など残っていないでしょう」
「あそこまで暴走してるともうどうしようもないわ、せめて龍の形を保っているうちに殺してあげるのが慈悲かもね」
樹龍――改め、腐龍の前身は既に腐敗が始まっており、所々崩れ始めている。
意識はないようだが、星影の気配には何か感じる物があるのか、いきなり襲いかかってくるようなことはせず、こちらをその濁った眼で睨みつけている。
「タツヤ、リゼット、イーリスは周囲の浄化と周りの木を可能な限り払って!残り全員で火の魔法――――――撃て!」
カナデの号令に合わせて、炎が一斉に腐龍の元へと向かう。
悲鳴を上げることもなく龍が炎に包まれ焼かれていく。
その間に、3人は周囲の木をできるだけ排除し、水魔法を併用しながら延焼を防ぐ。
「腐ってるけど、再生力は高いみたいね」
「その籠ごと焼ききるよ。次、合成魔法――断罪の火焔」
返事を返すまでもなく、すぐにグループを作り、合成魔法の魔法陣を展開していく。
「朔夜、ブレスを」
「星影、魔法フルバーストね!」
龍たちも溜めの動作に入る。一方の腐龍は、焔に身を焼かれつつも、じわじわと再生をしている。徐々に弱まる炎によって、だんだんとその行動を縛るものがなくなっていく。
「撃て!」
朔夜の放った黒い炎が、まさにこちらに突進しようとしていた腐龍の顔を吹き飛ばす。
そこへ星影の放った複数の魔法が足止めを行い、その体を切り崩していく。
最後にたどり着いたのは、白と黒の光を放つ炎。
「これで、さすがに……」
「そうですね。ですが、念のために追撃の準備を」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
灰と光の塵を散らして消えていく腐龍を眺める。
「この後の樹龍はどうするの?」
「龍の谷から啓示をうけた者が引き継ぐと思うわ」
「そういうシステムだったんだ……」
「カナデさん、神殿あの蔦に覆われてる奴ですかね?」
タツヤが燃える腐龍の奥を指さす。
「そうみたい、誰か偵察行ける?」
「それじゃあ、オレが!マナミ、行こう」
「わかった」
タツヤがマナミと共に先行する。
「それじゃあ、カイトとナナミで退路の確保をお願い」
「任されました!」「了解です!」
カイトとナナミは街の方へと道を拓くために逆方向へと向かう。
「私たちはもう必要ないかな?」
「そうね、星影は一応龍の谷にこのことを伝えてほしいけど」
「わかったわ」
「朔夜はもう神殿に戻って大丈夫です。ありがとうございます」
「わかりました」
飛び立つ2頭を見送る。
腐龍は跡形もなく消滅し、先を見通しやすくなった。
「タツヤ、どんな調子?」
『なんか暇そうに欠伸してる魔人が居たんで封印しました。そっちでの騒ぎに気付いてないというか無警戒だったようで』
「まあ、龍の方がやられるとは滅多な事では思わないだろうね」
「空飛んできたのに気付かないものでしょうか」
「実は結構強かったんじゃない?」
『マナミです。神殿らしき建物の前まで来ました……なんか見覚えのある像が』
「まさか」
闇と光の神殿の攻略を思い返す。
『ガーディアンのようですけど……5メートルぐらいあります』
『うわ!?動いた!?マナミ、下がるぞ!』
「アスカ、シオン。フォローお願い」
「「はい!」」
アスカとシオンが速度を上げ駆けて行く。
「神殿を護る巨大なガーディアンなんて雰囲気在りますね」
「敵サイドじゃなかったらもっとよかったんだけど……」
ミサキの言葉にそう返しながら、カナデ達も先を急ぐ。
『カナデさん、ガーディアンなんですけど』
「どうしたの?強い?」
『いえ、思ったより弱くてですね……』
『アスカが牽制のために打った矢で砕けました。ビビッて損しました』
「え、そうなの……?」
「とりあえず、敵はもういなさそうね……」
「神殿の中に中立マーカーが一つありますけど……」
「それが多分女神ね……シオン、神殿は入れそう?」
『はい、ドアに封印などはされていません』
「わかった、もう少しで追いつくから。カイト、ナナミそっちは?」
『すこしナナミが張り切りすぎたようでかなり余計に木を焼いてしまいましたが、問題ありません』
『ちょっと!なんで言うの!?』
「あはは、とりあず、2人も合流しようか」
『そうですね。もしもの時に備えて「全員で突入した方がいいでしょう』」
「そうね。じゃあ、ツバサ、ハルトさんに今までの事軽く伝えといて。あと、シオンとモエで神殿の周りをぐるっと見回ってきてほしいんだけど」
「わかりました」
「了解です」「了解!」




