龍ノ籠 -24-09-
「シオンさん、ミラーアーマー行きます」
「待ってました」
直撃の寸前にイーリスの魔法によってすべての魔法が弾き飛ばされる。
「なるほど、感覚共有とはそういうことですか」
「!?」
「イーリス、5メートル下がって」
「は、はい!」
アスカの声に従って、イーリスが大きく距離を取る。
それとほぼ同時に、魔法が発動し、巨大な石柱が降り注いだ。
「……どこが戦力にならないんですか。僕より全然強いじゃないですか」
「嵐、たとえ音速越えてたとしても、集中してないと撃ち落とされますよ。あら、」
「アイアンランス、50連行きます!」
「え?」
砂天の声とイーリスの放った魔法に気を取られていた嵐だったが、アスカの矢が嵐の翼の付け根を射抜いた。
コントロールを失い、風の龍が高速で遠くに落ちていくのを確認すると、アスカはすぐに次の矢を番える。
射線上にはカナデがいる。しかし、ためらうことなく放った。
矢がカナデの背に届く寸前、カナデがひらりと身をかわし、矢は星辰の額に突き刺さる。
カナデはというと星辰と星影を実質一人で相手しているためかなり切羽詰まっている。
ただし、いつもよりは楽だ。
理由としては攻撃が普通に通るから。
「剣舞・奇魂の舞!」
二刀で華麗に舞いながら、攻撃を躱す、そして
「こういう技もあるんだよ、使ったことなかったけどね」
「「!?」」
「鏡身」
カナデの姿が二つに分かれる。
「「どっちが本物かわかる?」」
「星辰、来るわよ!」
「わかっている!」
躱そうと、あるいは守ろうとしたが一足遅かった。
「「奥義」」
「「「「「「「「「「「「「「「「夢幻鏡」」」」」」」」」」」」」」」」
一気に増えたカナデが一斉に2頭の竜へと襲い掛かる。
一体どれが本物なのか、全く判別がつかなかった。
着実に体力を削られながらも、見極めようと目を凝らす。
「……ぐ、ダメだ。すべてのカナデの攻撃が命中している?」
「違うわ。まだまだね、星辰」
星影が星辰には全く見当違いの方向へと腕を振るう。
それをカナデが刀で受け止めた瞬間他の姿はすべて消えた。
「やっぱり、体力が多い龍には向かないか」
「そうね、ところで、その技。MPが回復しきったらダメなんじゃないの?」
「大丈夫、すぐ使い切るから」
カナデ達の使う《羅刹》は“MPを全て消費しSTRが最大2.5倍になる。ただし、MPは毎秒1回復し、それに伴って倍率も低下する。倍率が0になった時点でSTRも0になり、120分間その状態が持続される。”という非常に厄介な効果を持つが、MPが3000ポイントを越えているカナデ達はその効果を20分ほど使える。
さらにポーションで回復をしてはMPを一気に使い切るため、持続して効果を使うことができる。
「カナデさん」
「来たね、シオン」
朔夜を引きつけてきたシオンがカナデと背中合わせに立つ。
「アスカ、やっちゃって」
「任されました。イーリス、補助ヨロシク」
「イノセントゲイン発動します!」
こちら側に走りながら、イーリスが魔法を放つ。
イーリスの魔法で3人のステータスがさらに大幅に強化される。
「行きますよ――神弓・剣ノ雨改」
アスカの放った技によって、光の剣が空から降り注ぎ、龍たちが撃ち落とされ、体力が一気に削られる。
「続いてグランドクロス行きます!」
「シオン」
「はい!」
イーリスの魔法によって大地が砕ける。
アスカは、イーリスに抱き着き何とか崩壊から回避し、シオンは姿を隠すと、カナデを抱えて飛び上がった。
「ごめんね、重い?」
「いえ、全く問題ありません」
「そう?そんなことないと思うけど」
ある程度の場所まで行くとカナデがシオンの腕から離れ、飛び降りる。そして、
「先ず1つ」
「星辰!上よ!」
「何!?」
カナデの渾身の一撃が星辰の脳天を貫いた。
「朔夜、空を焼きなさい。貴方の主人は上にいます」
「は、はい!」
「遅いよ、朔夜」
星辰と共に落下してきたカナデが笑う。
「だって、もうそこにいるから」
朔夜が惑わされた隙に、シオンの一撃が朔夜を地に沈める。
「貴方はもう少し人を疑う事を覚えましょうね」
「……はい」
「そろそろ終わりかな?」
「そうですね。残りは砂天と星影ですか」
「うちの子どこ行ったんだろう……」
砂天が魔法陣を描き、4人が警戒する。
「これのことですか?」
その魔法陣からはぐったりした龍が吐き出される。
「……全然戦ってないじゃん」
「面目ないです……」
呆れた表情のアスカと同じく呆れた表情の砂天。
そして嵐はそのまま気を失う。
「じゃあ、終わらせようか」
カナデが攻撃に移る。




