剣の街/賢の街 -24-02-
「お帰り、カナデ」
「うん、姉さんもお疲れさま。こっちは問題ない?」
「責任者の我が妹が消えた以外はね」
「あはは、とりあえず星辰が探してくれてるけど……」
「こっちからもルイと火龍を送ったわ」
「そう。まあ、とりあえず私は仕事をしてくるよ……」
突然、相当数の人間が消滅したため、ギルドが大混乱している。
人手が不足で駆り出されたカメリアとアザレアが率先して事態の収集に勤めているが、手は足りてないようだ。
「とりあえず、私はギルドの方に今回の件を誤魔化しにいってくるけど、期待しないでね?」
「がんぱってね。シオン達が帰ってきたらギルドに向かわせるわ」
現在、シオンはアスカ、イーリス、シルヴィア、クロエを回収する為に各地に飛んでいる。
転移が使えることだし、まもなく帰りつくだろう。
カナデがギルドに入るとホールはいつもよりも人が少ないぐらいだったが、突然の人間の消滅に立ち会ってしまった人たちの問い合わせでてんやわんやしている。
「カミルさん、メリルさん、忙しいところ悪いけどすぐ来て。これに関して説明するから」
「は、はい」
「わかりました」
事情の説明というより、如何にしてごまかすかというのはハルトに考えてもらっている。
カナデの仕事はこれを伝達することだ。
そのハルトの考えた内容というのが、
「彼らは神の使いで、我々を助けてくれていただけで、仕事がすんだのでその存在ごと消失した」
というやや無理のありそうな内容だったが、全く納得していない二人になんとかそういうことにしておいてくれと頼み、ギリギリ納得してもらった。
因みに、最終手段としてすべて終わったあとにハルトが説明すると丸投げしたのは当然の事だ。
「すいません、私もまだ仕事が残ってまして」
「次は自警団の方ですか?」
「いえ、少しお使いをしに外に出ないといけないので」
「カナデさんも大変ですね……」
メリルに労われ、礼を返し、ギルドの扉を開くと、シオン達が外で待機していた。
「お疲れさま」
「カナデさんの方も、お疲れさまです」
「うん、じゃあ、もう一仕事だね。イーリスとアスカは同行してね」
「了解ですけど、何をしにいくんですか?」
「残りの神殿について、情報がないかしらべてこいって、ハルトさんが」
「カナデさん、行きましょう。ここにいても邪魔になるでしょうし」
「そうだね。飛ぶよ、ヤマトへ」
カナデが魔方陣を開き、すぐに転移が開始される。
そして、目の前の風景はがらりと変わり、
「ここがヤマトですか……」
物珍しそうにあたりを見渡すイーリス。
「そういえば、イーリスははじめてだっけ?」
カナデは食材を集めるのにちょこちょこ訪れていたりするので、あまり新鮮な風景ではない。
それよりも、今はやるべき事がある。
「とりあえずお城にいけばいいのかな?」
「行って入れてくれるものなんでしょうか……」
「まあ、なんとかなるよ」
心配そうにするシオンに対して、カナデはどこか余裕ありげに、大通りを進んでいく。
物騒な武器が並ぶ鍛冶屋から乾物屋などの店までごちゃごちゃと存在するこの街の通りはスペーラと似た雰囲気を持つ。
大通りを進み、宮殿の巨大な門の前に立つ。
「ここから、どうするんですか?」
「アレでしたら、私が弓で扉を門兵諸共吹き飛ばしますけど」
「アスカさんの思考がだいぶ、カナデさんに毒されてきているのはわかりましたが、どうするんですか?」
「んーと、実はここに来る前に一人助っ人を雇っててね」
その時、重い扉がゆっくりと開き始めた。
その奥には、従者が一人立っていた。
「カナデ様ですか?」
「はい」
「どうぞ、中へ」
それだけを告げられ、一同はその従者について宮殿の中へと入った。




