終わりへの扉 -24-01-
「こちらハルト。みんな、準備はいいかな?」
ハルトの声が念話で届く。
冒険者たちは今、街を護るための何人かと職人たちを残して、ほぼ全員王都の西のはずれにある巨大な扉の前で待機していた。
『カナデです。こちらは大丈夫です』
カナデは神殿の台座の上に立ち、魔力を注ぐ準備をしている。
「少し待ってね。オトハがまだだから」
しばらくして、オトハの声で準備ができたと念話が入る。
「それじゃあ、頼んだよ」
『わかりました』
『早く終わらせましょう』
『了解です』
『はーい』
『さて、』
『魔力を込めるんでしたよね?』
『行きます』
『は、はい!』
『えっと、これであってる?』
一部、不安な声も聞こえたが、どうやら上手くいきそうだ。
そしてハルト達は門に向かう。
「一斉に魔物が溢れだしてくるかもしれないけど、その時は撃ち漏らししないようにね」
「「「「「「「「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」」」」」」」」
その声と共に、封印され、固く閉ざされていた扉に魔力が流れ込んでいく。
扉に嵌った9つの宝玉が光り輝き、内部の鍵に作用し、音を立てて解除されていくような音が響く。
そして、
「開くぞ!」
重い音を立てながら、大きな扉がゆっくりと開き始める。
それと同時に、
「やはりか……」
これを待ち望んでいたかのように扉の向こうから魔物たちが溢れ出て来る。
「いいか、お前ら落ち着けよ。結界班は作戦通り結界の保持を!」
「1~3番隊はオレに続け!魔物を殲滅する!」
エイダイ、エンマの声に続いて一騎当千の戦士たちが魔物の群れと衝突する。
「こちら、ハルト。扉が開くのを確認。これより、魔物の排除を行い順次突入する」
「作戦通り30分以内にここを制圧、この先にあるピジェット山の山頂付近にキャンプを張ります。4番隊は先行して山頂での掃討をお願いします!」
スズネの指示で戦士たちは沸き立ち、一気に進んでいく。
その時、全員の脳内にどこかで聞いたことのある声が響く。
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ワールドクエストⅠ
力の証明 がクリアされました
これにより、以下の事象が追加されます
・【全プレイヤー対象】スキルポイントの取得量半減の解除
・【全プレイヤー対象】経験値入手量10%増加
・【全プレイヤー対象】スキルスロットの解放(3枠)
・【女神プレイヤー対象】ステータスの強化(All +10%)
・NPC冒険者の消滅
・ギルドランクF+以下の冒険者のログアウト
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「な!?」
「F+以下なんていないだろ……こっちきてさすがにみんなレベル上がってるだろうし」
「NPCの消滅はヤバいかもね……。F+は一人もいなかったと思うけど」
文句を言うエイダイと少し困った表情のハルト。
実際、プレイヤーのいない冒険者が相当な数居るわけで、冒険者はこれを機に激減してしまうだろう。
「しかし、この期に及んで女神の強化か……」
「スキルスロットはありがたいけどな」
「ハルトさん、エイダイさん。いいから戦ってください」
スズネが銃口をこちらに向ける。
「はいよ」
「久々だね、体動かすの」
『カナデです。ハルトさん聞こえます?』
「どうかしたの?何か問題が?」
『えっと、オトハが失踪しました』
「………ええ?!また!?」
何をしに、どこへ行ったのかはある程度予測がついているが、このどう転ぶかわからない事態に大戦力の1人である彼女の所在が分からないのはまずい。
『一応、今星辰に上を調べに行ってもらってます』
「とりあえず、詳細判ったら連絡してね」
『はい、それでは私たちは、スペーラに戻ります』
「お疲れ様。しばらく防衛は任せたよ」
念話を終える。
とりあえず、今は目の前の敵を消すことをから始める。
「エンマ、調子は?」
「上々だ。残り3000ほどだな」
「そうか、じゃあ、一分ぐらいで終わるね。エイダイ、2番連れて突っ込む準備。ヨウ、そっちはどんな感じ?」
『道を拓きつつ、頂上付近まで走り抜けたところだ。距離はそんなに長くないが傾斜がきつい。山頂付近で87、90、98の三人の魔人を倒した。なんかコイツらが指揮とってたっぽい』
「了解、もうすぐエイダイがそっちに突っ込む」
『あいよ』
「よし、開いた。エイダイ、行け」
「おうよ。2番隊はオレに続け!」
エイダイがエンマたちが開いた道を駆け抜けていく。
「とりあえず、今日中に拠点は得られそうだね」
「安全に転移できる場所があれば攻略も楽ですしね。明後日には旧王都デヴァ―スの攻略に入れそうです」
「はやめに斥候を送って調べてしまわないと……ん?」
『エイダイだ。ヨウたちともうすぐ合流できると思う』
『こちら、タロー、エイダイちょっと止まれ。うちの馬鹿が50位と交戦中。なんかデヴァ―スにいる仲間と通信してるっぽいからできるだけ戦力は見せたくない。幸い向こうはオレたちだけだと思ってるし』
『りょーかい、じゃあ一時停止するわ』
「何とかなりそうかな……」
「ゼリさんの情報によると、デヴァ―スの指揮を取っているのはクピディタス配下の魔人だそうです。今のでずいぶんクピディタス配下の魔人が減ったので、デヴァ―スではマクロファー配下の魔将と戦うことになりそうですね」
「マクロファー配下の人は結構話し合えるから、なるべく穏便に行こうか」
ゼリから預かっている、将のリストをみながらハルトが計画を立てていく。
『こちらヨウ。50位討伐。あと、エイダイ合流完了。ある程度ここまでの道のりの掃討は終わってるみたいだけど気を付けてきてくれ』
「了解。さて、僕たちも動くよ。女神たちをステージに引き上げるためにも」




