女神の教え子たち –Hidden Story-21- After:-23-11-
ハルトとシズネは今後の話をするために各国の代表の所へせわしなく動いているが、カナデ達はというと、壁の花を続けていた。
先ほどまでステラがこちらの様子を見に来ていたのだが、その他には特に交流のある人間がいないためか、それとも両脇に控える女神たちが近づき難いオーラを放っているかなのか、こちらに人――特に男性陣は――寄ってこない。
そんな状態がしばらく続くことしばらくして、近づいてきたのは4人の背の低い影。
ルイザ・ルイズ、マツリ、オリーヴ、アナの姿が。
「あれ、マツリはさっきいなかったみたいだけど……」
「私はあまり人前には出られないので……ヤマトは積極的に交流していくタイプの国ではないので、今回は別室で待機していました」
「なるほどね。みんな、それぞれ頑張ってる?」
「は、はい……」
「まさか、カナデさんが女神だったなんて……」
「まあ、私はオトハ様の事もありますし、薄々感がづいてはいたんですけど……まさか、アスカ先生までとは……」
「あはは、でも私は最近選ばれたからね……」
アスカが照れつつも、なんと返していいかわからず、視線を逸らす。
「私は以前から知ってましたけど」
「ボクも、故郷の事でお世話になったから……」
「じゃあ、ほんとに知らなかったのは私とルイズだけ?」
「そうなるね」
何故かアナが自慢げに言うとルイザが悔しそうにする。
「そういえばシルヴィア先生もそうなの?」
「シルヴィアは女神見習いみたいな感じだっけ?」
「はい、一応神格は得ていますけど、私たちほど強くはないようです」
「なるほどね。まあ、女神って言ってもそんな大したものじゃないからそんなに緊張しなくてもいいよ……」
そう言ってほほ笑みながらルイザとルイズの頭を撫でる。
「そういえば、授業とかどんな感じ?困ってることとかない?」
「私たちは」「特に、困ったことはないですね」
「ボクは座学が辛いかなー……お父さんに言われて帝王学とか法学の講義取ったけどさっぱりだね……」
「ああ、スズネさんの……」
「とりあえず、私もサポートしますし頑張りましょう、アナさん」
マツリが落ち込むアナを励ます。
「そういうマツリはなんかすごい数の授業取ってるよね。毎日遅くまで」
「はい。こういうのもなんですけど、金銭には余裕があるのですが時間に余裕がないもので……」
この学園のカリキュラムでは、週6日・一日6コマの授業をある程度自由に選択できる。
ただし、学生の中には自力で生活費を稼ぎながら講義を受けている者も少なくないので、半期で15単位ほど取れれば16歳までには卒業できる計算になっている。
しかし、金銭面に余裕のある貴族の子女となると、ある程度状況が変わってくる。
例えばルイザの場合は36コマのうち授業は24取っているし、ルイズは26、マツリは30とほとんど毎日講義を受けていることになる。
「熱心だねー……」
「誰かに師事して“学ぶ”という事自体が難しい世界ですからね」
「ルイズったら、カナデさんに憧れて“現代魔法学”とか“錬金術基礎”とか小難しいの受けてるんですよ」
「べ、別にいいじゃない!」
「あはは、錬金術に関しては理論ぐらいしか教えられないけどね……」
カナデも少し困りながらこの教え子たちの様子を見守る。
「アスカ先生の弓の授業も好きですけど、やっぱり最近は調理学が楽しいですね」
「あ、調理学なら私も一緒に受けてます」
オリーヴの発言にルイザと口論していたルイズが応じる声を上げる。
「みんな、問題なく日々を送れているようでよかったですね」
「はい、あとはどう引き継ぐかですけど……」
アスカとシオンが5人を見つめながら呟く。
「カナデさん、シオンさんとアスカも食事持って来たんでどうぞ食べてください」
いくつか皿を給仕用のカートに乗せて運んできたのはイーリス。
もちろんこの場で女神にそんなことをさせるわけにはいかないので、カートを押しているのは一番隊の隊員だが。
「ありがと、イーリス」
「イーリス先生」
「お久しぶりです、オリーヴさん。しばらく樹魔法の授業に出れなくてすみません」
「いえ、作戦に参加されてると聞いていたので、仕方ないことですよね。気にしないでください」
「樹魔法ってオリーヴ以外に受けてる人いるの?」
アナが疑問をつぶやく。
「いえ、私一人ですけど……」
「まあ、そもそも使える人が少ないですし」
即答するオリーヴと苦笑いのイーリス。
「地魔法の方も人少ないんだっけ?」
「はい。来ているのは本当に適性がある子だけですね」
「リゼットの光魔法の演習は人多すぎて困ってるって言ってたけど」
「でもほとんど適性がないような人たちばっかりですから、基礎の単位も上げられないってって言ってましたよ」
「やっぱりみんな派手なのが好きなんですね……」
「ああ、落ちこまないでイーリス。私は地魔法すごいと思うよ、うん」
「はい、地魔法は過剰に自然に干渉しないので森守りのエルフとしてはとても良いと思います!」
あわててフォローするアスカとオリーヴ。
その光景を温かい目で見守りつつ、また、学生たちの質問に答えながら、いい感じに酔ってきている代表陣が解散するまでの時間を潰したのだった。




