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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
休章 逸る心と嵐の前の平穏
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騒がしき街 –Hidden Story-19- After:-22-01-

食事会の後、カナデとシオンは娘三人を連れて街へと繰り出した。

アザレア・リオン・カメリアの三人は街へ出ること自体が初めてで色々と目を輝かせて眺めていた。

一般的な常識に関しては一応理解しているようで、これといった問題が起こることなく、露店を冷やかしながら街を軽く一周する。


「あれ?ギルドの前でなんかイベントやってるね」


「司会をシェリーさんがやってるところを見ると、碌な事ではない気がしますけど」


かなり多くの人が集まって何かを眺めている。

人混みは学生の方が多いように思えたが、冒険者たちも結構な数混じっている。


「何やってるのこれ?」


「カードゲームでしょうか?」


「うわ、嫌な予感してきた」


ステージの覗ける位置に立つと、ステージの上では女の子が見覚えのあるような気がするカードゲームで相対していた。


「ああー……もしかして、写真売なっていったらカードにしてぼろ儲けはじめた奴?」


「多分それですね」


「あ、カナデさん」


前に立っていた制服の少女――ルイザがこちらを向く。


「あ、ルイザだったのか。久しぶりだね」


「はい。そういえば、カナデさんも作戦に参加してたんですか?しばらく見かけませんでしたけど」


「うん、ちょっと南の方までね。それよりこれ何?」


「今流行ってる冒険者のブロマイドカードを使ったゲーム大会ですね。優勝者には特別な限定カードが7枚もらえるらしですよ」


「へぇー………」


「そういえば先日何か撮影されたような……」


「そんなことあったっけ?」


「レイさんの作った女神の衣装着せられて撮ったと思いますけど」


「……そんなこともあったね」


「今、ルイズがそこでゲームしてるんですよ。そろそろ勝つかな?」


「……ルイズ、何やってるの?」


その直後にルイズの名前が勝者としてコールされ、優勝賞品を受け取ったルイズが上機嫌でこちらに向かってくる。


「ルイズは運がすごくいいのでカナデさんとシオンさんのカードばっかり当ててましたよ」


「そうなんだ」


「私たちのカードの封入率は確率的に0.00001%とかだったと思うんですけど、どんな運してるんでしょう……」


「カナデさん!シオンさん!あとルイザも」


カナデとシオンの姿を確認したルイズがこちらに駆け寄ってくる。


「2人でお祭りを周ってるんですか?」


「いや、ちょっと街の案内もかねて……って、あれ?」


「3人なら飲み物を買いに行くと言って消えましたよ」


「それ大丈夫なの?」


「……急激に不安になってきました」


その時、カナデ宛てに念話が入る。


『おーい、お前のとこの娘3人迷ってたぞー』


「ごめん、迎えに行く。今どこ?」


『第三商業区画の北側の店だな。ニコルの露店が出てる』


「了解、すぐ行く」


「見つかりましたか?」


「うん、いこっか。ごめん、ルイザ、ルイズまたね」


2人に手を振りながらシオンと共に人混みをすり抜けていく。

ギルドは基本的にどこからでも見えるので迷ったというよりも人混みに流されて戻れなくなったのだろう。


「ニコルさん、うちの子たちは?」


すぐに見つかったひときわ大きなニコルの露店。


「さっきエイダイが喫茶店に連れて入ったけど、そこのロブさんの店」


「ロブさん手広くやってるなぁ……」


ニコルに礼を言い、喫茶店の中に入る。

すぐに奥の席に座るエイダイを見つけ、そちらに向かう。


「ごめんね3人とも」


「いえ、私たちが街を歩くのに慣れてなかったせいでもありますから」


カナデの謝罪にアザレアが代表して答え、他の2人はそれに続き頷いた。


「今日は案内するにはちょっと人が多すぎたな」


「そうね。それで、そっちの人は?」


「ああ、これはオレの跡継ぎのマヒロだ」


「よろしくお願いします」


17歳ほどの年に見える成年の肩に手を置きながらエイダイがそういうと、青年がこちらに会釈をする。


「うん。よろしく。たぶん、うちはカメリアが7番隊を継ぐことになるかな」


「ギルドの方はカミルとメリルに任せても大丈夫そうだもんな」


エイダイがコーヒーを持ち上げながら言う。


「じゃあ、私たちはこれで」


「なんだよ、お茶していけよ。奢るから好きなものたのんでいいぞ」


「いや、3人の分だけで十分。それにこれから姉さんの所行かないといけないし」


「そうか、そりゃ仕方ないな」


「「「ごちそうさまでした」」」


「あ、うん。気にすんな。しかし、配色違うけど3つ子にしか見えんな」


笑うエイダイを置いて、喫茶店を出る。

日は傾き始めているが、賑いは冷めず、むしろ熱を帯びているように感じる。


「姉さんの部屋はアーシア寮だから表に出ずに済みそうだね」


「そうですね」


「お母様方のお姉様となると、私たちの伯母にあたるのでしょうか?」


一瞬、カナデとシオンがフリーズする。

そして、何とか持ち直したカナデが言葉を発する。


「………そうなるのかもしれないけど、それは姉さんの前では言わない方がいいよ、アザレア」


「?……わかりました」


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