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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
休章 逸る心と嵐の前の平穏
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彼女たちの療養 –Hidden Story-18- After:-19-13-

色々とダメージが蓄積していた身体(というよりもメンタル面の問題なのかもしれないが)も一日休めば随分とよくなっていた。

相変わらず、シオンはカナデを心配して泊まり込みで世話を焼いているが、カナデとしてはシオンの方が心配でならなかった。


「……ぅゆ、おはようございます」


「おはよ、シオン」


眼をこすりながらゆっくりと起き上がる彼女の右の瞳を見つめる。


自分と同じ赤い瞳。


左の色は依然と同じ少し緑色の入ったブルー。

そして自然と左手をシオンの右頬に添える。


「ごめんね」


「カナデさん、もう謝らないでください。私は別に嫌じゃないですよ」


「でも、この色が残る限りシオンはあの記憶を思い出してしまいそうで」


「大丈夫です。誰かさんが私の代わりに本気で怒ってくれましたし、復讐もしてくれました」


シオンが自分の右頬にあるカナデの手に自分の手を重ねる。


「大丈夫です。最近忘れてしまうことがあるんですけど、この体はニセモノですから」


「それでも、ね」


「大体、それを言うならカナデさんだってお腹裂かれて血だくだく出てましたけど、大丈夫なんですか?」


「私は大丈夫」


「じゃあ私だって大丈夫です」


シオンが微笑むとカナデの手を引いてベッドを下りる。


「貴女が隣にいてくれるなら、私はこの世界を救う事も滅ぼすこともできます」


「大げさだよ」


シオンの台詞に微笑み返しながらカナデもベッドを下りる。


「それに、ね」


カナデがシオンを抱きすくめる。


「貴女が隣にいることが、この世界での(カナデ)の支えになってるんだよ」


「あ……、えっと………」


カナデの肩に顔をうずめながら顔を赤く染めるシオン。


「ありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそ」


2人で抱き合ったまま無言の時間が流れる。

お互い、この状況下から次にどのような行動に移るべきか模索してたところ、呼び鈴が鳴った。


「え!?」


「お客さんですね。カナデさんちょっとまって、」


カナデがシオンを抱いていたう腕をゆっくり解くと玄関へと向かう。


「カナデさん!」


シオンもカナデを追って玄関へと向かう。


「ごめん、今開けるね」


カナデが玄関を開けると、アスカ達7番隊女子メンバーと姉と妹、ゼオンとクロエの姿があった。


「カナデさん、その格好は……」

「うわ、クロエさんとリゼットが幸せそうな顔で卒倒した!?」

「あなたね、男が訪ねてきたらどうしてたのよ……」


シズネがやれやれ、といった顔で額に手を置く。


「カナデさん、せめてシャツのボタンちゃんと閉めてください……」


後ろからのシオンの声を聴いて、改めて自分の格好を見る。


上は白のワイシャツ一枚。

下は下着のみ。


「ああー……でも、シオンも同じような格好じゃない?」


「え?………ッ!?」


ばっ、とシャツの裾を抑える。

対するカナデは特に気にした様子もなくボタンを留める。


「ナナ、私連絡しても繋がらなかったけどシオンさんがこの部屋にいるってことは薄々感づいてたよ?」


「奇遇ねマナ、私もよ」


「というか、なんでカナデさんもシオンさんもちょっと顔赤いの?」


「何かしてたのかな……」


ナナミとマナミが何やら頷いているが、気にせずにシズネに用件を聞く。


「どうしたの?みんな揃って」


「どうしたの?、じゃないでしょ……体は大丈夫なの?シオンも」


「うん、まだ完全とは言えないけど」


「そっか、じゃあ無理しないで休んでなさい。朝ごはんまだでしょ?用意するわね。オトハ、手伝って」


「はーい」


わたしたちも手伝います、とアスカとモエも続いて台所の方へ向かっていく。


「私とイーリスでとりあえずこの二人部屋においてくるわ」


ミサキがクロエを抱えながら言う。


「ナナ、どうしよっか?」


「そうね、掃除でもする?」


「え?いいよ、そんなことしなくても」


「そうです。カナデさんのお世話なら私が……」


「シオンも怪我人だろうに……ごめん、お邪魔するね」


ゼオンがシオンを奥へと連れて行く。


「さ、カナデさんも」


「え、ちょ、そこまで大事を取らなくてもいいのに!?」


「ダメです。マナ、お願い」


「りょーかい」


「え、ちょっと!?」


マナミ背を押されながらリビングの方へと連れて行かれる。

キッチンではシズネたちが料理を開始している。

久々の姉の手料理を嬉しく感じながらも、この強硬姿勢に戸惑う。

マナミによってシオンの隣に座らされたあとは、2人で呆然と動き回る彼女たちを眺めるだけだった。


「よーし、完成。まあもう昼前だし、いいよね」


「そだね。なんか張り切ってたらすごいボリュームになっちゃった」


シズネとオトハが誇らしげな顔をしているその横でアスカ達が配膳をしていく。


「というか、ボリュームとかじゃなくて既にテーブルの真ん中にコンロと土鍋が置かれてるしね」


「カニと牡蠣のお鍋ね。もちろん他のお魚もお肉もお野菜もたくさん入ってるけど」


「あとはほうれん草のお浸しと鶏レバーと生姜を似た奴と……」


「すいません、買ってきましたー」


ミサキとイーリスがかなり大きな箱を抱えて部屋に入ってくる。


「柑橘系とキウイ、苺を中心のデザートを」


「あとゼリーとかチョコレート系もですね」


「……見事に怪我の治癒に効きそうなものをそろえましたね」


「この体ってそういうの効果あるのかな?」


「いいから食べなさい」


シズネがカナデの器にたっぷり配膳する。


「……これ全部はシオンと二人でも厳しいような。というかまた私の部屋にキクロさんの試作品持ち込んでるし」


「大丈夫。わたひたちもたべるから」


オトハが咀嚼しながら答える。

他のみんなも箸を持ち料理に手を付けている。


「まあ、いいか」


「そうですね。私達も食べましょうか」


その後、日が暮れはじめるまでゆっくりと時間を過ごし、カナデとシオンを残して各々自分の仕事へと向かって行った。

カナデとシオンが療養中、男子メンバーが何故か失踪しているらしく、7番隊は一時的に休暇状態だが、オトハとシズネ、それとゼオンは確実に仕事を放棄してここに来ていた。

彼女たちの気持ちに感謝を覚えながら、心も体も随分癒されたように感じた。


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