女神の祝宴 -23-11-
「そこでお願いしたいのですが、魔王を討つ前に神殿を起動していただきたいのです」
「神殿?」
ハルトが問いかける。
アスカとイーリスが何かに気付いた顔をしたのち、地龍の顔を見る。
「爆神殿と樹神殿が西大陸にはありますね」
「はい、今はどちらも機能していませんが、一応は起動できるようです。これを見てください」
そういうと部下の1人が立ちあがり大きめの地図を広げる。
「これが西大陸の地図……」
「はい、そうです。そして、魔都ニジェルの北部とマクロファー領の南部に神殿はあります」
「ここまで来てまた神殿かー……」
オトハが文句を言う。
「とりあえず、手前の神殿を目指す感じになるかな。まあ、全員で突貫すれば何とかなるでしょう」
「それが、一つ問題がありまして……」
「なんですか?」
困った顔のゼリにスズネが鋭い視線を向ける。
「女神が入れないようにこちらから結界を張っています」
「は……?っていうことは、女神不在で魔王討伐をしろと?というか魔王側にもそんな技術があったのか……」
「技術自体は天上神からもぎ取ったみたいですね。アレは存在しているだけで何の役にも立ってませんから」
「マジですか」
「そして、その結界は旧フロール王都・デヴァ―スの街で制御されています」
「つまりそこを潰せば、入れるようになるんだね?」
「そうですね」
「じゃあ、そこの攻略が終わるまで暇だね」
「天上神でも討ちに行きましょうか」
「そこの姉妹は恐ろしい企みをこんなところでしないように」
オトハとシズネの呟きにハルトが釘を刺す。
「じゃあ、作戦自体はこっちで何とかするとして……実行は1週間後かな」
「了解しました」
「支援等はいらないか?」
「今のところは。ですが、戦況によってはお願いするかもしれません」
「わかった。我が国は貴国に大恩がある。もしもの時は遠慮なく頼ってくれ」
「それはうちも同じですが、内乱で国政が安定していないので難しいかもしれません。ですが、可能な限りサポートはさせてもらいます」
自信を持って宣言するステラ。それに続くライマー王太子とライマーに頷くアマート首相。
「まあ、堅苦しい話はここまでにしましょうか。ロブ、食事の準備はどうだい?」
ハルトが虚空に話しかける。
恐らく念話をしているのだろうがかなり不審だ。
「じゃあ、下に行こうか。準備が整ったみたいだし。ゼリ将軍も食事をどうぞ。帰る際にはいくらか食料を持って行ってください。用意してますので」
「すまない。臣下達も一緒にいいだろうか」
「ええ、どうぞ」
ホールにはいくつものテーブルとそれぞれに大量の料理が盛られている。
見覚えのある数人が給仕としてグラスを渡している。
カナデもスパークリングワインの入ったグラスを受け取るとまっすぐ壁際に向かった。
「うわ、ゼメーラじゃねーか!?なんでお前こんなところで給仕してんだよ!?」
「あはは、負けたから投降した。それより23位ゼロア、22位レヴァインなんでこんなとこにいんの?」
「コイツ、自分が21位だからって……」
「ゼロア、構ってたらキリがないぞ。オレたちはゼリ様の護衛とこの街に住む準備だな」
「ほえー……マクロファー様に伝えたらびっくりするんだろうなぁ。しないけど。じゃあ私仕事あるからー」
どうやら捕まっている魔人たちも何人か給仕をしているらしく、ゼリ臣下たちと邂逅を果たしていた。
「アスカ、大丈夫?疲れてるでしょ?」
「体力的には問題はないんですけど……」
「空気が重いですね。緊張感という奴ですね」
シオンとアスカは視線を避けるためにカナデの影に隠れる。
「そんなことすると私が目立つでしょうに」
「カナデさんは地上最強ですから目立っても仕方ないですよ」
「嬉しくないし、たぶんオトハの方が強いよ」
「そうなんですか?カナデさんなら既に種族の横の星3個ともついてると思ってましてけど」
「星?」
自分のステータスを眺める。
種族は 無神***
「あれ?いつの間にか増えてる?」
「元は種族クエストクリアの証だったと思うんですけど……私も3つですね」
「私は2つですね」
「というかまた称号が変わってるし……増えてるし」
「カナデさん、なんかレベル上がってません?」
「シオンに追いつきたかったのもあるけど、星影かまってたら自然にね」
「龍と戯れるって……」
「耐久力以外すべて測定不能ですか。さすがですね」
「カナデさん、」
ハルトがこちらに声をかける。
「そんな隅っこで物騒な話してないで前に出てきてくれる?」
「仕方ないですね……」
渋々カナデが前に出るのに従ってシオンとアスカも続く。
「前に出て何するんですか?」
「挨拶とか」
「この催しの存在自体つい一時間ほど前に聞いて、内容が明かされてなかったのに挨拶とか考えてると思ってるんですか?」
「……ごめんなさい」
「とりあえず、皆さんはゆっくり楽しんでくださいね」
ハルトを睨みながらも、ホールにいるその他大勢には対外ようの笑顔を向ける。
そして、また元の壁際に戻るカナデだった。




