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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第23章 氷の意志と砂の覚醒め
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時ノ砂 -23-08-

神殿の内部は薄暗く、ひんやりとした空気が漂う。

砂粒の落ちていない白い石の廊下は真っ直ぐ奥まで続いている。


「さあ、どうぞ奥へ」


「うわ……すごい」


「神殿の中ってこんなふうになってるんですね……」


「いや、うちはこんなにきれいじゃなかったけど」


奥の部屋への扉を潜る。

柔らかい光に包まれた空間。

通路のわきには花壇が設置され、色とりどりの花が咲き乱れている。


「お二人ともどうぞ、お座りください」


「僕は?」


「床にでもどうぞ」


「ひどくないっ!?」


どこからともなく取り出したティーポットとカップが3つ。どうやら嵐の事は無視していく方針らしい。過去に何かあったのだろうか。


「改めまして、私が地竜です」


「アスカです。風の女神です。それで、こっちが」


「イーリスです。一応、候補に選ばれたんですけど、私なんかが御眼鏡にかなうかどうか」


「いえ、別に女神として武勇に優れなければならないなどという理由はないのですよ。まあ、基本的に気に入った相手に勝負挑んで勝てればよしみたいな風潮になってますけど、はっきり言って龍に圧勝できるような人間なんてそうそういませんしね」


「ははは……そうですね」


「まあ、今代の皆さんは基本的にボロボロになるまで痛めつけてるみたいですけどね」


「そうですか。でも貴方は速攻で降参したのでしょう」


「ぐ、何故それを」


「まあ、風龍の話などどうでもいいのです」


地龍がティーカップに口をつける。


「私は特に試練めいたことをする気はありません。そもそも、私はそこにいる駄龍を除いたら戦闘能力が一番低いので、あまり戦いを好みません」


「そうですか……」


「しかし、簡単に選んでしまっては他の皆に申し訳が立たないのも事実」


地龍がテーブルの上に取り出したのは手のひらほどの大きさの砂時計。

凝った装飾がされ、中には金の砂が入っている。


「この砂時計は30秒を測ります。ひっくり返して砂が完全に落ちきるまで耐えることができたら貴方の勝ちとしましょう」


「わかりました……それで何からですか?」


「これです」


地龍が砂時計をひっくり返す。

その瞬間、アスカを除く2人(正しくは1人と1匹)の身体に凄まじい荷重がかかった。


「これ、は……」


「アスカ様は大丈夫そうですね」


「はい、そのようですね。でもこれならイーリスは余裕だと思いますよ?」


「何故でしょう?」


アスカに質問をしつつも、地龍はイーリスの方へ視線を向ける。

イーリスは多少つらそうな顔をしているが、嵐ほど必死の形相ではない。


「神格による加重訓練は何度かしてますから。私にも効くようなクラスの物を最高時で3倍の濃度で」


「なるほど……」


「……というか、それ、ほんとに訓練なんです、か!?」


息も絶え絶えで嵐が問いかける。


「実際は、その中で戦闘もこなさいといけないからね。あまり気を抜きすぎると神格に押しつぶされて昏倒するし、リゼットなんかは神格の影響を受けやすいみたいですぐ傀儡になるし」


「大変っすね……」


「まあね。あ、もうすぐ終わりだね」


「そうですね。ここまで余裕で終わられるとは想定外です」


「だろうね」


砂が堕ちきったと同時にイーリスが息を吐き出す。


「はあ……危なかった」


「まあ、座ってるだけだったから大丈夫だったでしょ?」


「はい。これで戦闘は厳しかったです」


「とりあえず、試練はクリアされてしまいましたね……まあ、万が一気絶しても選ぶ気ではありましたが」


「合格、なんでしょうか……なんだかあまりにあっけなくて、他の方に申し訳ないです」


「まあ、いいんじゃない?私はすぐ土下座だったし、カナデさんは無龍も覇龍も圧勝でシオンさんも龍虐待してたし……」


「……あの、それ人間の所業ですか?」


嵐が引き気味に問いかける。


「あら、覇龍が戻っているのですか?」


「うん。カナデさん……無の女神が冥界から呼び戻した」


「そうですか、久しぶりに会いに行ってみましょうかね……」


「お知り合いなんですか?」


「はい。私と無・覇・雷は同時期の古株ですから。ちなみにその後は水・闇・樹・光・氷・火・爆・風の順です」


「へぇー……ん?」


アスカが固まる。


「どうかしました?」


「樹と爆って、いるの?」


「はい。居ますよ。あと、天上に全天龍フィロソフがいます」


「うわー……上に報告しないといけないことが増えた」


「とりあえず、地上に出ますか?」


「地龍が転移使ってくれるの?」


「いえ、」


地龍は立ち上がると、テーブルから数歩離れる。

そして天井を仰ぎながら、柏手を3つ打つ。


「何やってんの?」


「少し待ってなさい」


ずずずずずず……と低い音と共に細かな振動が響き始める。


「地震!?」


「これは、水神殿と同じパターンじゃないでしょうか」


「浮上、かぁ……」


震動と共にゆっくりと上へと上がっていく微妙な浮遊感を感じながら上へ。

神殿自体は結界に覆われているのだろうが、岩盤を砕く音や、巨石が落下していく音などかなり不安になるサウンドが響いてくる。

嵐はその度にビクっと体を震わせている。


そんな振動が3分ほど続き、神殿は停止した。


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