砂の社 -23-07-
「まさかエイダイがやられるとはなぁ」
「ですね」
全て狩り終り、蠍の死骸の中に立つ三人が呆然とする。
「とりあえず、素材の回収だけしますね」
イーリスがやたらと硬い蠍の鎧を回収していく。
「こんなに暗いところでこの数はないよね」
「というかなんでまともに灯り出せる人いないんですか……」
「というか、アスカさんは視えてたの?バシバシ当ててたけど」
「はい、暗視とかは持ってますけど」
「というか最後に使った矢の雨降らすやつもっと早く使えばよかったんじゃ?」
「まあ、一緒に来てるのがカナデさんやシオンさん、7番隊のみんなならそれも考えましたけど、たぶんそれやってたら全員矢に当たって死んでますよ?」
「あー……、見方を巻き込まないとか補正ないんだった」
「アスカさん!カケルさん!向こうに何かありますよ?暗くてよくは見えないんですけど」
素材を回収していたイーリスが奥の闇を指して言う。
「確かに、向こうは開けてるし何かありそうではあるね」
「少し見てきますね」
アスカがそちらの方へと駆けだす。
「えっと、イーリスさん。僕らも行こうか」
「はい。アスカさーん、何かわかりましたかー?」
闇の方へと呼びかけるイーリス。
しばらくして、アスカの声が帰ってくる。
「イーリス!早く!早く来て!」
「?……何でしょう」
「行ってみようか」
奥へと進むと原理のわからない光に包まれた。
「うわ!?」
「明るい?」
「見て!あそこ!」
巨大な溝を挟んだ向こう側に見覚えのある形の建造物が建っている。
「あれは」
「神殿、ですね」
「問題はどうやってこの崖を越えるかなんだけど」
「それなら私が橋を架けます」
「そう?じゃあ、よろしく。カケルさんは私と一緒に蛇退治ね」
「蛇?…………って、うわ!?」
壁が光っていると思っていたが、それは全て黄金の光を放つ蛇であった。
「気持ち悪い」
「さすがに一匹ずつ倒すのは時間かかりますね……」
「なんとかならない?」
「一人で一分耐えられますか?」
アスカがカナデ特製のMPポーションを飲みながらカケルに尋ねる。
「え?うん。それぐらいなら」
「じゃあ、イーリスも攻撃にまわって」
「え?はい。それでどうやってこれを渡るんでしょうか?」
「まあ、これぐらい広かったら大丈夫かな」
アスカが地面に手をつく。
それを中心に巨大な風の魔法陣が開かれる。
「なんか見たことあるかも」
「カケルさん、前!」
「おっと」
一斉に襲い掛かる黄金の蛇を剣で薙ぎながら、アスカの集中を途切れさせないようにする。
「行きます、アースウォール!」
「ナイス、イーリス!カケルさん、もう終るんで壁の中に!」
「わかった!」
カケルが壁の中に入ると同時にアスカを中心に暴風が吹き荒れ、イーリスが創った壁ごと蛇共を吹き飛ばす。
「嵐、刻んで」
魔法陣の直上へと出現した風の龍が勇ましく咆える。
「はい、ご主人」
もう一度極大の暴風が吹くと、無数の鎌鼬が壁に打ち付けられている蛇へと当たり、斬り刻む。
「あと向こう岸まで運んでくれる?」
「お安いご用です……ってここ地神殿じゃないですか」
「やっぱりね。ここの龍と知り合い?」
「あんまり会ったことないんですよね。僕以上の引きこもりですから」
嵐の背へと乗った3人は地神殿の入り口へと辿りつく。
「じゃあ、僕はここで待機で」
「だったら先に戻って報告をお願いしたいです」
「あー、じゃあそうする」
カケルは転移の魔法珠を起動させる。
「じゃあ、ご武運を」
消えるカケルに手を振ると神殿の扉を押す。
「ようこそアプリコム神殿へ」
そこにいたのは褐色の肌を持つ女性の姿をした龍。
「お久しぶりです、地龍ソルム」
「ゲイルですか。先代の風の女神が死んで泣きついてきた以来ですね」
「そういう話バラすのはやめてくれないかな!?」
「それでは、風の女神様、そして私のパートナー候補様奥へどうぞ」
ソルムの後に従って神殿の奥へと入る。




