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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第23章 氷の意志と砂の覚醒め
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夜明けの氷城 -23-05-

カナデが全員を飛ばしたのは城の正門前。

街の様子は以前までとは打って変わって騒がしく、落ち着きがない様子である。


門に兵士の姿はなく、城に灯はともっているが、騒いでいる様子はない。

どうやらひと段落ついたようだ。


「なんか収まってるみたいだけど、一応見に行く?」


「そうですね」


「えっと、オレまで飛ばされるとは思ってなかったんですけど。ここどこですかね」


シルヴィアを抱えるタロウが動揺しながらカナデに尋ねる。


「帝国のお城の前かな。それよりシルヴィア起きそう?」


「いえ、今のところは反応無いですが」


「とりあえず、どっちが勝ったのかだけ見に行こうか」


「もし宰相側が再起してたらどうするんですか?」


「さあ?氷龍に相談して、場合によっては滅ぼすんじゃない?」


「そこまで干渉していいのでしょうか……」


カナデが門扉を押し開け中へと入る。それに続く一同。


「そういえば、星影。着いてくるの?」


「ええ。帰っても退屈だもの」


「まあ、いいけど」


城内部まで警備が行き届いていないのか、そもそも指揮系統がそこまで回復していないのか、もしくは、反逆罪で兵士を全員牢に入れたか。

つまるところ、城に堂々と侵入しても誰も止める者がいなかった。


そのまま大階段を上がり、謁見の間へと進む。

どこの国も城は同じような構造なので特に問題なくたどり着けた。

さすがに、謁見の間の前には兵が立っていたが、シオンが取り出した『お静かに』と書かれた符によって黙らされた。


扉を開く。


中に集っていたのは、宰相の下に入らず息を潜めていた貴族たち。

玉座に座るのはアドリアナ。


「上手く行ったみたいだね」


「そうですね。じゃあ帰りましょうか」


「頑張ってねー」


くるりと踵を返し、立ち去ろうとする3人と呆然とするタロウを止める声が響く。

アドリアナのすぐ隣に控えていた騎士が駆けより制止する。


「待て待て!とりあえず、説明しろ!」


「ヴァージムさんでしたっけ。ああ、気にしないでください。私たちは神殿の再起動と魔人たちを処分しに来ただけなので」


「それも全部済みましたので帰りますね」


「お前ら、何者だ?」


「え、答えると思ってるの?」


カナデが逃げるために転移魔法を発動させようとするが、魔法陣は展開しきる前にはじけて消えた。


「なにこれ」


「カナデさん、魔法妨害働いてるみたいです」


「小癪な……星影」


「いいわよ」


星影を中心に転移魔法陣が展開される。

その瞬間、部屋の四隅にあった魔法珠が砕け散ったが気にしない。


「それじゃあ、女神のご加護を」


「じゃあねー」


6人の姿が消えるのを呆然として眺めていた一同だったが、ほぼ同時に正気を取り戻す。


「いったい何者だ……?」


「調べておきます。ですが、今は国を」


「わかっている。恨みを持つ者も多いかもしれないが、奴らの処刑よりも国を建てなおすのが先決だ。とりあえず、国境の封鎖を解け。抵抗するなら斬っても構わない」


「了解です!」


「それから、宰相が通した法案はすべて棄却。ヴィタリーは幽閉だ。傀儡だったとはいえ国に不利益を与えた事実は消えない」


「わかりました。手配いたします!」


堂々たるアドリアナの指示に応え、臣下の者たちが走る。


「――ヴァージム。彼らについて神国に一応問い合わせるんだ。おそらく濁されると思うが」


「了解です。プラト、あとは任せた」


相方に自らの王を任せ、ヴァージムも声に応えるべく走る。



*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+



「こっち帰ってくると若干暑い」


防寒具をはぎ取りながらカナデがそういうと、周りの皆もうなずく。


「とりあえず、解散。でいいよね」


「ハルトさんのところには明日行きましょう。あとでスズネさんに言っておきます」


「あ、シルヴィアどうするの?」


カナデがタロウに問いかける。


「どうしましょうか……オレの部屋に連れて行くのはまずいですよね。でも、シルヴィアが起きてないとコイツの部屋には入れないし……」


「んー……じゃあ、私のところで一先ず預かるよ」


「それがいいですね。お願いします」


「うん。タローも一緒に泊まる?」


「えええ!?いや、それはやめときます。オトハに後で殺されそうなんで」


「賢明な判断です」


シオンが頷く。


「ねえ、私も行っていい?」


「別に、いいですけど……」


「やった」


シルヴィアをタロウから受け取ったアンリは先行するカナデとシオンについて消えていく。

1人残されたタロウも、自分の部屋へと戻ろうと、歩き出した瞬間背中を何者かにおもいっきり蹴られた。


「どわ!?」


「てめぇ、何断ってんだよ勿体無い!」


振り返るとバカがいた。


「なんだ、お前か……」


「隊長様に向かってお前っていうのはどうよ?」


「どうよと言われてもな、何とも思わんけど」


「敬意が足りねぇ……」


「実際無いもんが足りないと言われてもなぁ」


「……お前、それ以上言ったら泣くぞ」


「心弱えぇ……」


「わかった。カメラ渡すから今から追いかけて来い」


「……何がわかったんだよ、突然。お前、もう完全にアウトだからな、それ」


「ええ!?セーフだろ、これ」


「発想が痴漢と同レベルだぞ」


「マジか」



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