砂の海へと -22-06-
エイダイ率いる二番隊が猛暑の砂漠の街・アリオへと入る。
先の戦いで大部分が壊れた街だが、かなりのスピードで持ち直してきている。
「あっついな、しかし」
「そうですねぇ……」
「カケル、あそこでナツメヤシみたいなの売ってるぞ」
「アレ、甘いんですよねぇ。口の中の水分全部奪われるというか」
「食ったことあるのか」
「一度だけですけど」
転移門から真っ直ぐに城へと向かう
「それよりも城、すごいですねこれ」
「カナデが建てたんだろ?アイツはホントに無茶するな」
城門を潜り、謁見の間へと案内されながらエイダイが呟く。
「場内の装飾はタクミさんたちがやったそうですけど」
「ああ、カナデはこういう飾り好きじゃなさそうだもんな」
「あの、なんで私たち連れてこられたんでしょうか?」
エイダイの後ろを歩くアスカが会話の切れ目を狙ってエイダイに尋ねる。
「そりゃ、女神がいないと神殿についても試練が受けられないだろ」
「じゃあ、何故イーリスも?」
「仕方ないだろ、地魔法まともにあげてたのがイーリスだけだったんだから」
「300人もいる癖してみんな火だとか光だとか闇だとか派手なのばっかり使ってますから」
「まあ、カナデとシオンはそれなりに使えるんだけどアイツらは無理だし、そうなってくるとイーリスしか該当者がいなかった。種族がノームってのも大きいけど」
「はあ……」
「まあ、気にするな。それだけ7番隊が優秀ってことだ、おっとここが謁見の間?」
荘厳なドアがゆっくりと開き、王座に座る獣人たちの王。
「初めまして、アルター王。早速だけど、いいか?」
「わかっている。ここから西にあると言われている神殿の事だな?」
「ああ、うんそれ。魔王をなんとかするには後2柱目覚めさせないといけないんだわ。それで地の神殿が具体的にどこにあるか聞きたくて」
王の指示で宰相らしき男から地図を渡される。
「かなり古い地図だが、ここから西にある。アリオ砂漠の果てに岩場のようなものがあるからおそらくそこではないか」
「なるほど……結局行かないと分かんないわけか。すまない、忙しいのに邪魔したな」
「こちらこそ、女神様にはかなり助けていただいた。この城も与えられてたわけだ。これぐらいの協力はさせてもらわねば」
「そうか。ああ、そう。その女神、というかカナデから伝言を」
「なんだ?」
エイダイがミスリルでできた札を王に向かって投げる。
「この街から北に少し行ったところで魔人と遣り合ってな?その時に血を流し過ぎてそのあたり一帯がオアシスになってるみたいで、その札を持ってれば結界を越えてそのオアシスにたどり着ける。王家の保養地にでもするといい」
じゃあ、邪魔したな。というと謁見の間を後にするエイダイ。
それに続いて部屋を出るアスカとイーリス。
「よし、外で待ってる隊員と合流して神殿に行くか」
「結局手がかりは掴めませんでしたけどね」
「とにかく西だ」
「風化しすぎて崩壊してないことを祈るばかりです」
「おいおい、嫌なこと言うなよ」
街の西門はあまり使われている様子はない。
ここから先には砂漠しかないからでモンスターも強い。
「ハルトの話では、封印解いたら大陸西側と繋がるみたいだけど」
「そうなんですか?」
革製の靴で柔らかい砂を踏みしめる。
たまに出るモンスターも彼らにかかれば大したこともなく、順調に進む。
「いや、進むのはいいけどここまで景色変わらないと嫌になって来るな」
「そうですね、さっきもあの枯れ木見ませんでした?」
「気のせいだろ、まっすぐにしか進んでないのに迷うわけないし……」
その直後、後ろの方からうわ、と声がした。
「おい、砂に足取られてこけたか?」
「エイダイ隊長、えっと、なんて言っていいのか……ええ、一人消えました」
「はぁ!?」
「多分あそこかな?」
カケルが指差した場所では砂が下へと流れている。
蟻地獄のような感じだ。
「下にアリジゴク的なモンスターがいて食われるとか無いよな?」
「やめてくださいよ……」
「一応全員に魔法珠配ってますからいざとなったらそれで脱出するでしょう」
「これら先気を付けないとな……」
「まあ、前方に見えるだけでも3つありますからね……」
気をつけて進めよー、というエイダイの声にはーいと長い返事をしてさらに前へと進む。
以前として砂が見える以外は変わらず、精神的に辛い。
そして何よりも暑い。
時より吹き付ける風は砂を含み、そもそも涼しくないので最悪だ。
そして、
「エイダイ隊長、カケルさん。前!」
「なんだアレ!?」
「砂嵐ですよ!」
「逃げますか?」
「そうだな、ここに目印打ち込んで撤退するぞ!」
了解の声と同時に、下の方で地響きのようなものが聞こえた気がした。
耳のいい獣人がいればその場所を特定できたのだろうが生憎居らず、躱すことができなかった。
明日香とイーリスの立っていた場所が瞬間的に流れる砂に変わる。
「わ」
「ひゃっ!?」
「おい!大丈夫、じゃねぇな!」
「アスカさん!イーリスさん!」
沈んでいく2人の手をカケルが掴む。
「よし、カケル今、引き上げる!」
「は、やく、してくだ、さいっ」
ずるずると引き込まれていくカケルの身体。
既にアスカの手しか見えず、イーリスの手を取った右手は肩まで砂に埋もれている。
「どうすればいい!?」
カケルの両手が砂に埋まる。
「もう、一回落ちます!このままだと二人とも息できないでしょうから」
「悪い、2人を頼んだ!」
エイダイの声に頷くとともにカケルは砂の中に飛び込んだ。




