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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第22章 砂漠の城と氷の帝国
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夕暮の出港 -22-05-

ハルトの指示でメンシスへとやってきたカナデとシオン。

2人が中に忍び込んだ後、外ルートでやってくるアンリたちと合流する予定だ。

メンシスの街は以前から割と賑わっている街であったが、さらに盛り上がりを見せている。

やはりこの空が原因だろうかとカナデは白い雲の浮かぶ青空を見上げる。


「なんかこの街が明るいのって不思議」


「カナデさん、夜が解けてから来てませんでしたっけ?」


「うん。いやー、久しぶりねー」


ステラと面会するため街の中心へと歩く。

途中、騎士二人組とすれ違いぎょっとされる。


「か、カナデ様!?シオン様も!?」


「あ、えーっと……シミオンさんとタルコットさんだったっけ?」


「は、はい!……ええとどうしてそのような格好を?」


カナデとシオンの現在の格好は騎士風というよりも軍服寄りのかっちりした男性服で、カナデは髪をくくっている。

見た目は好青年に見えなくもない。かなり中性的だが。


「これから仕事なんだけど、女っていう認識もたれるとめんどくさそうだから」


「パンツルックの方が楽っていうのもありますけど。これから北に行くのにスカートはちょっと……」


「はぁ……なるほど?」


「そうなんですか。とにかく、教皇様の所までお送りします、いくぞシミオン!」


「あ、ああ」


2人に先導され、いつも止められる門番も二人が適当に追い払ったのでスムーズに進みあっという間にステラの部屋の前まで来た。


「ありがとね」


礼をして下がる2人にそういうと、カナデは戸を叩く。


「誰だ?」


「私」


「お?おお!入るといい。ヘルガ、お茶を用意してくれ」


「え!?いいんですか!?」


「いいから」


とりあえず入れと言われたので中に入る。


「?……どうして男装などしているんだ?」


「まあ、いろいろ考えた結果、これからの仕事これが楽かなって」


「スズネから話は聞いている。私が手引きできるのは貨物船に乗せてニックスの港に入るところまで。そこからはなかなか難しいだろうが……」


「まあ、いざとなったら強引にでも入るし、あ、ありがとうございます」


ヘルガからお茶を受け取る。

ステラはお茶をすすりながら、あらかじめ用意していたか書類をカナデに手渡した。


「それが乗船許可書になる。あとは仮の身分証明書だ」


「ありがと。……というか仕事中だったんじゃないの?」


「机に山のように書類が詰んであるような気がしますけど……」


シオンが苦笑いで告げる。


「大丈夫だ。それにたまには休憩しないと死んでしまう。せめてヴェラが来るまでは」


「あ、ステラ。もうダメっぽい」


「さすがカナデ様。お気づきになるのが早いですね」


扉が開いてヴェラが入ってくる。


「くっ、また私に仕事を追加する気か」


「仕方ないじゃありませんか。というか私もエルバートもこんな手伝いしている暇はないんですから」


「いろいろ一気に変わったせいで処理が大変なようです」


「あー、がんばってステラ。今度差し入れに何か甘いもの持って来るから」


「お邪魔しました」


シオンと共に部屋を出る。


「どこの国も王様は大変だね」


「完全に他人事ですね」


神殿の外へ向かう。


「何時出港ですか?」


「夕方の5時かな。新型輸送船で4日って書いてある」


「遠いですねぇ……」


二度目となる船旅。それも今回は二人だけ。

シオンはひそかにテンションが上がっていた。


港に停泊しているのはヤマト方面から帰ってきたらしい船と目的の輸送船。


「客室みたいなのなさそうだよね」


「いざとなったら本気の結界を張るので大丈夫です」


「その状態はあんまり大丈夫じゃないような……」


午後3時。港では積み荷の積み込みも終盤に差し掛かっている。


「おーい、そこの2人」


後ろから声がかかり振り向く。

ガタイのいい眼帯を付けた男性がこちらに向かってくる。


「……海賊?」


「ちがうわ!人を見かけで判断するな!」


「何か御用ですか?」


「あんたらが教皇様の言ってたお客さんってやつか?」


「ああ、うん。たぶん」


「……おかしいな。女って聞いてたんだけど、いや、女か」


「ええ、はい。念のため男装しているだけというか、寒さ対策というか」


「なるほどなぁ。俺は一回スペーラの港に入ったことがあるが、女はみんなひらひらした服着てたもんな。あれじゃ、寒いか」


「まあ、そうですね。それで……」


「ああ、まだ名乗ってなかったな。船長のギースだ。もう少し待ってれ。野郎どもが美人が2人乗るって聞いて急いで掃除してるから」


「いつもは男ばっかりで?」


「いや、何人か女もいるぞ。男ばっかりじゃ何ともならねえこともあるからな」


ギースがパイプに火を入れ、煙を吸い込んだ。


「がっかりさせないように男装解いていく?どうせ向こうはいるまではどうでもいいし」


「そういうサービスは不要かと思いますが」


カナデがメニューを操作し、スーツ姿に着替えると、驚いたギースが噎せ始めた。


「印象代わるなぁ……これは」


「まったく、カナデさんはもう少し男性からの視線を気にしてください」


「そう言われてもねー……シオンの方が可愛いよ?」


「そ、そういうお世辞はいいですから!」


カナデに合わせて着替えたシオンが顔を赤くして俯く。


「……なんか、うちの野郎共が割りこめる隙がないってのはわかった。おい!そろそろ出るぞ!」


「は、はい!」


「よっし、セントクティ号船長ギースだ。改めてよろしく」


「スペーラ自警団7番隊隊長カナデ・H・レゾナンスです」


「同じく副隊長のシオン・I・レゾナンスです。今回はメンシス側からの護衛依頼という体で乗船させていただきます。よろしくお願いします」


「有事の際は頼ってもいいのか?」


「はい。海竜ぐらいなら3分もかからずに撃退できるかと」


「……そりゃ、こえぇや。よし、乗ってくれ」


桟橋を渡り、まだできて間もない新しい木の匂いのする船へ乗り込む。


「アニッタ、ニックスまでこの二人を頼む」


「はい。それではこちらへ」


船に乗ってすぐのところで待ち構えていた女性の船員に案内されてカナデとシオンは船内へと入っていった。


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