代表会議VIII -22-04-
ハルトがいつものように前に出て話し始める。
「とりあえず、2番隊を中心にアリオから西の砂漠への遠征、あとは帝国への潜入方法だけど。スズネ」
「はい、とりあえずメンシス経由で船で潜入するのがいいかと。貿易はまだ行われているみたいなので」
「まあ、入国はできるかわからないけど、やってみる価値はあるよね。という事でカナデさんとシオンさんで行ってきてね。ステラ教皇のとこに」
「ちょちょ、ちょっと待ってくださいよ!なんですかその意見を全く言わせない強硬姿勢」
カナデが抗議の声を上げる。
「だって、僕たち抜きで水遊びとか行くし……」
「いや、オレたちが参加できなかったのお前のせいだから」
エイダイがため息をつきながらハルトを見る。
「すぐ帰るって言った割にしっかり夜にバーベキューまでして帰って来るし。どこからコンロ出したんだよ!」
「そこ!?」
オトハがツッコむ。それに対してカナデは平然と「創りましたけど」といい放った。
「あー、僕も水辺でゆったりしたいなぁ」
「諦めてください。自分で撒いた種です」
スズネに一蹴される。
「まあ、スズネさんに場所は教えてあるので余裕で来た時に二人で行ってきてください」
「その余裕はいつできることやら……」
ハルトが後ろを見ながらつぶやく。
「王国、そして仮称・獣国は特に問題なく復興を進めているようです」
「というか龍国から問い合わせが来たんだけど、何やったの?」
「え?走り抜けただけですよね?」
「ええ」
短く切り上げるカナデとスズネに対して不満げな表情をしつつも、勝てないのはわかっているのでそれ以上は追及しないハルト。
「というか、今回は傍聴人がいるんだから真面目にやりなさいよ……」
それぞれの後ろに座る人物を見ながらシズネが告げる。
「カミルさんもメリルさんも、こんな会議参考にしなくていいからね?」
「はあ……」
カナデの声にエイダイの補佐のカミルは何と答えればいいか、という表情で頷く。
一方メリルははい、と言い切る。
「エイダイも寝ないで」
「いや、ねてねーよ?」
「というかさ、レイさんの複製体が副頭取なのはわかるけど、なんで頭取はロランドの複製体なの?」
ヨウジが不満げな声を上げる。
「いや、人選を見直したと言いますか」
「妥当な判断だと思いますが」
「今からでもロランドと代わればいいんじゃねーか?」
「お前ら武器の整備してやんないからな!」
青筋を浮かべてキレるヨウジを全く無視して、咳払いを1つしエンマが話しを始める。
「王国の貴族は残党だが大体は狩り終ったらしい」
「ラルフ王子のおかげで向こうの騎士団と連携が取れるようになったから情報は得やすくなったわ。カナデのおかげね」
「えっと、それは手放しで喜べないんだけど……」
カナデが目を逸らしながら頬をかく。
「そういえばカメリアが求婚されてたけど」
「断ったの?」
後ろに座るカメリアに尋ねる。
「はい」
「しつこかったら斬っていいからね」
「はい、わかりました」
「いや、駄目だから」
ハルトに制止される。
「次、いいですか?」
キクロの声に一斉にキクロの席へと視線が集まるが、座っているのはいつものぬいぐるみを抱いたフィーネ。
「……いいけど、なんでまだその状態?」
「父は理事長室を爆破しかけたので今母に折檻をうけてまして」
「何やってんだか……」
「まさかフィーネに見捨てられるとは思ってもみませんでした」
「娘さん、母親に似てよかったな……」
エイダイが呟く。
「まあ、それはおいておいて。生徒を増やすという予定でしたが、どうしますか?」
「今は半端な時期だからね……学期を半年にして回転を上げるか……」
「それまでに帝国との問題を片付けないといけませんね。龍国は閉鎖的な国の様ですけど何とか引きずり出せれば……」
スズネが何やら画策を始める。
「あ、そうだキクロ。ルイさんと、7番隊のアスカさんのアレも作っておいてね」
「了解しました」
「なぜアスカも?」
「一応、女神だしね。それに、カメリアさんのステータス見たから知ってるだろうけど亜神とか半神とか微妙な種族になってるし、女神にも代理がいた方がいいかもだし……」
「あー……なるほど」
「そういうのはアザレアの方が向いてる気もしますが……」
「まあ、まだ引き継ぎ?まで時間あるし、相談しておいて」
カメリアがめんどくさいなぁ、という表情を浮かべる。その顔がカナデそっくりだったのでシズネとオトハが噴き出す。
「え!?何々?」
「いや、ほんとに血繋がってるのね」
「私こんな顔する?」
「うん。まあ身内にしかわからない差だろうけど」
「……え?」
「ああ、ごめんカメリア。気にしないで」
「???」
首をかしげる動作もカナデに似て再び吹き出すシズネとオトハ。
「えっと……和んでるところ悪いけど話進めるね?」
ハルトの声で再び会議は再開される。
「とりあえず、今の調子で行けばあとひと月ほどで大陸の西側へ乗り込めるかな。そこからは本気出したら一週間で終わると思うけど」
「どういう計算だよ」
エイダイがツッコむ。
「女神全員で極大魔法を魔王の城に向かって放てば死ぬでしょ?一応、強いけど魔人らしいし」
「それ主人公サイドのすることじゃないと思うが……」
「あ、あとゼリ領の魔将さんたちが全員こちらに寝返ったから。もうすぐ引っ越してくると思うけど……」
「何その急展開」
「こっちで潰したリストと捕縛したリストをゼロア君に持って行ってもらったら円滑に交渉が進んでね?」
「それ脅迫だろ」
エイダイの声にははは、と笑って返すハルト。
「22位レヴァイン、37位チャロック、56位レイナード、68位ラップ、71位ツァディー、95位バジルの6人ですね」
「思ったより多いね……」
「まあ、戦う相手が減るなら良いんじゃね?というかこっちの街に来て貰ってどうするんだよ。領地空にしたらゼリ?さんも疑われるんじゃねーの?」
「まあそれは密偵に出してるとかそんな感じにしてごまかすってさ。あと、働かざるもの食うべからずという事で、学園で講師でもしてもらおうかと思ってる。向こうは魔法のプロだし」
「ほう、名案だな」
「でしょ?ほんとに思いつきで提案したら通ったからびっくりした」
「考えて喋れ!」
エイダイが怒鳴る。
「位階を持つ魔人は残り77人ですね。こちらに寝返ったのが12人。交渉失敗というかつい遣ってしまったのが10人」
「スズネ命乞いしてた人消し飛ばしたもんね……」
「余計なことは言わなくていいのです。大体あれは止めを刺さずともやけどで20秒後に息絶えたじゃないですか。まったく、言いがかりはやめてください」
ハルトの耳を引っ張る。
「いたたたたた」
スズネがハルトへの御仕置を開始したのでこれ以上進展はないと判断し会議は終了となった。




