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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第22章 砂漠の城と氷の帝国
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力を継ぐ者 -22-01-


神殿を複数解放したお祝いにとハルトの発案で祭りがおこなわれることになった。

表向きは大規模な遠征の成功となっているため、こちらの住民には女神云々は伝わっていない。


「しかし、人が増えたねー……」


行きかう人を眺めながらカナデが呟く。


「今日は学園の講義もお休みですから学生たちも街に出てますね」


隣を歩くシオンがカナデにそう答える。

何時もより多い屋台が中央通を埋め、かなり多くの人でにぎわっている。


「王国とアリオは復興で忙しいらしいけど、マーレやメンシスなんかからはたくさんお客さんが来てるね」


「メンシスとマーレを結ぶ街道も整備されましたし……。あ、その件でかなり協力をしたとかでカード伯爵家はめでたく侯爵位を賜ったそうです」


「ちょうど交通の要所になるし、これから栄えるでしょうね」


「そうですね。帰るまでに一度お邪魔してみましょうか」


「それいいかも」


こんな日でも冒険者たちがその日の糧を得るためやってくるのでギルドは大賑わい。

最近はこちらを拠点として転移門で旅に出る冒険者たちも増えてきたようだ。


「ギルドは問題なさそうだし、私たちもどこかでお昼にしようか」


「あ、お弁当作ってきました。サンドウィッチですけど」


「そうなの?ありがと」


さすがにベンチはどこも埋まっていてお弁当を広げられる場所はない。


「あー……せっかくだから外で食べたいよね、日差しがいい気持ちだし」


「そうですねぇ……学園の方へ行ってみましょうか」


「あ、それいいかも」


2人で北へと歩きはじめる。


「昼から何かイベントやるんだっけ?」


闘技場の方へ走っていく組合員を見てカナデが尋ねる。


「飛び入り有の乱戦とかで、商品は組合共通の割引券です」


「なるほどね……」


学園の敷地に入ったところで誰かに呼び止められた。


「カナデさん」


「フィーネ?どうしたの?」


「ちょうどよかったです。シオンさんも」


「私もですか?」


フィーネに連れられて2人はキクロの研究室へ。

いつ来ても警戒してしまうこの部屋。何を触っても爆発しそうで怖い。


「すみません、わざわざ来ていただいて」


「何か御用ですか?」


「いえ、お二人のお子さんが出来上がったので」


「………ああ、あの子たちですか」


「フィリーネ」


「はいはい」


奥から3人の女子を連れてこちら来る。


1人は黒髪を肩までに短く切った少し勝気な感じのする女の子。

1人は長い銀の髪を揺らすクールな女の子。

1人は銀の髪と赤い瞳を持った女の子。


「……なんで三人いるの?」


「男と女じゃなくてもできるのか試したくて……」


「つまり私とカナデさんの子ですね」


「まあ、一人はそうだね」


「……勝手に何やってるんですか、まったく」


溜息をつくカナデと目を輝かせるシオン。


「一番最後になってしまったけど、たぶん能力は一番高いよ?」


「そういうのは別に……」


シオンが解析を使って3人を見る。


「あれ……ホントに最近の物の気がしますけど。髪の毛と魔法珠提供した時は少なくともこのスキルはまだ持ってませんでしたし……」


「ああ、それはいろいろ手をまわして再回収を」


「何やってるんですか!」


フィリーネに頬をつねられるキクロ。


「いたいいたい、わかった、あやまるから!」


「とりあえず……この街を護ってもらうことになるから、よろしくね?」


「はい、母様」「わかりました」「よろしくお願いしますね、お母様たち」


「なんだろうこのムズムズする感じ……」


「……わかります」


「とりあえず3人をギルドに登録してもらっていい?」


「あ、はい………名前どうしよ」


「つけてあげてね」


笑顔でキクロこちらに言うが、何も用意がない状況でのこれはキツイ。

ちょっと待って、といってシオンと二人で必死に考える。

一応人の名前なので下手を打つことはできない。


そして10分後、シルバーのギルドカードを手渡す。


「うん、良い名前だと思うよ。日本の事はよくわからないけど」


「全然安心できません」


「姓が知らないうちにできてるんだけど……」


「それはシズネとエンマが決めた奴だね。ややこしくなるから身内は統一するんだってさ」


「いつの間に……」


「えっと、私と姉さんも含まれてるんですか……?いや、嬉しくはありますが……」


(レゾナンス)って、完全に音だけで決めましたよね、これ」


(エコー)とかは安っぽい感じがして嫌なんだってさ」


「まあいいや……で、この子達はどこに住むの?」


「今のところは開いてる部屋に住んでもらう予定だけど」


「そう、じゃあ心配いらないね」


「まあ一緒に住んでもいいんですけどね」


それじゃあ、といって3人の手を取る。


「お昼にしよっか」


「そうですね。20人ぐらいまでなら増える予想してますし」


「僕も一緒していい?あとフィリーネとフィーネも」


「構いませんけど……研究室のメンバーにも声かけようと思ってたのですが」


「それじゃ、私が声かけて来るついでに何品か作ってくるね。アザレアは私と一緒に来て」


「え?はい、わかりました」


「私は自分の研究室だけ行って屋上で準備しておきます」


「うん、よろしく」


キクロによるとアザレアには研究室を任せることになりそうなので、設備等を確認してもらうのがいいだろう。


階段を1回分下りる。

第4研究室のドアをノックする。


「クロエ、お昼一緒にどうかな?みんなで」


「行きます!」


すぐにドアが開いてクロエが顔を出す。


「ゼオンさんとヴィクターさんにも声掛けて来て貰える?屋上にシオンたちがいるから」


「わかりました!」


クロエが研究室を飛び出していく。

それを見送った後カナデは反対側の扉を開く。


「ミホシ、アルマ、イザベル。いる?」


「あ、カナデさん。どうしました?」


「お昼のお誘いに、それとこっちが本題なんだけど、彼女は私の娘?でここを継いでもらうことになるからいろいろ教えてあげてね?」


「アザレア・H・レゾナンスです。よろしくお願いします」


「……なんて美人」


「というかシオンさんの面影も感じるんですけど……」


「うん、実はそうなんだよね……私は少し料理を作っていくからその間にこの部屋の事簡単に教えてあげてくれる?」


「あ、はい。まずここからですね」


アルマが先導して棚にある資料などの解説をしていく。

その間にカナデが勝手に増設したキッチンでスキルをフル活用して手早く、大量の料理を作っていく。

魔導オーブンでピザを量産し、簡単につまめるようなものを中心に作っていく。

シオンの物だけでは足りないかもしれないのでサンドウィッチも作る。

10分ほどで40人前ほどの料理を作ったカナデをイザベルが呆然と見ている。


「さて、いこっか」


「はい、お母様」


「ホントに親子なんだね……」


「カナデさん17歳で見た目20近い娘がいるって……」


「それは言わないで」


アルマの言葉にため息をつきながら屋上へと向かう。

既に宴会ムードで、おそらくシオンが作ったと思われるシンプルな作りのテーブルに全員ついている。


「ごめん、遅くなった。でもまだ12時半だしいい時間だよね?」


「全然待ってませんから気にしないでください」


「じゃあ始めよっか」


カナデとシオンがテーブルに料理を並べ始める。


「カナデさん、この量短時間で作ったんですか……?」


「シオンも聞いてたのよりなんか増えてない?」


「今そこで作りました」


新たに増設されているシンクを指して言う。


「あんなのあったっけ……」


席について食事を始める。

向かいに座るアザレアはアルマ達にかまわれているの大丈夫だろう。


「カメリア?」


隣に座る自分と同じ黒髪と赤い瞳を持つ子。

本当にそっくりで、髪が短いこと以外はほぼ違いはない。


「はい、母様」


「えっと、緊張しなくていいから」


「そうですか……?」


「うん、さ、食べて食べて。ほら、あーん」


フォークに刺した果物を口元に持っていく。


「え、ありがとうございます?」


果物を口にし、ふわっとした笑みを浮かべる彼女の姿に和みながらカナデも食事を続けた。


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