抗う勇士たち -21-07-
魔物が押し寄せるプリマの街へと向かったのはカケルとゼオンの2人。
「すいません、広域魔法はあまり得意でないのでお任せします」
「任された」
ゼオンが魔法陣を描く。
「さて、隊長。こっちは軽めですね。すぐに助けに行けそうです」
『そうか。でも、こっちもそんなに大した量じゃないぞ?』
「星辰はいないんですか?」
『ああ、なんか呼ばれたから行ってくるって、出て行った』
「自由ですねぇ」
剣で魔物を断ち切りながら、カケルは会話を続ける。
「虫系は死滅したんでしょうか、獣がメインな気がするんですが」
『その分一体一体が重くないか?』
「そうですねー……クマとか、マジヤバいっすね」
『だろうな……おっとお客さん来たわ』
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『魔人ですか』
「そー、そー。来なくていいのに」
『でも、倒したらレベル超上がるらしいですよ』
「そりゃ、相手が強い場合だろ。しかも倒さねーと対した経験値にならんだろう」
『え?寝返る可能性とかあるんですか?』
「だって所属:ゼリ領だってよ」
「何故それを!?」
エイダイの正面に立つ魔人が驚く。
『解析の魔法珠使ったんですか』
「ああ、一応。慢心はいけない。しかし、HP多いな……」
『あ、こっちも来たんですけど』
「そっか、がんばれ」
剣を向ける。
「さて、ペペさんとやら、降伏するときは早めにいってくれよ?」
「生意気な!」
魔人ペペは両手の爪を構える。
「爪かよ、まあシルヴィアより強いか見てやるよ」
エイダイが魔法陣を展開する。
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「さて、ゼオンさん。とりあえずアレはこっちで何とかするんでよろしくお願いします」
「なんとか耐えて見せよう」
「さてさて、あなたのお名前は?」
「41位、ゲイズ デス ヨロシク」
「たいちょー、こっち41だって言ってますけど」
『はあ?そっちの方が強いのかよ。こっちは45……おわ、あぶねぇ!今喋ってるだろうが!』
「2番隊副隊長カケルです。お手柔らかに」
「ソレデワ マイリマス」
ゲイズが腕を広げ、マントが持ち上がる。
そのマントの中からじゃらじゃらと音を立てて大量の鎖の付いた武器が滑り落ちた。
「うわー、面倒そうな相手」
ゲイズが腕をこちらに突き出すと同時に、刃や鈍器の付いた鎖がこちらに飛翔する。
「どういう原理で飛んでるんすかそ、れっ」
次々にこちらに打ち込まれる凶器を躱しながら相手を目指して走る。
剣を打ちこむもひらひらと躱される。
「隊長!相性悪いです」
『知るか!』
「ソコダ」
「うわっ!?ミスった!?」
右腕に鈍器がぶつかり鈍い音がする。
「腕やられた……」
「ツギダ」
「後ろから!?そうか最初に打ち込んだ奴が……」
カケルの背後から攻撃が襲う。
瞬間的に加速を繰り返し攻撃を避けるが、どうしても避けきれないものもあり、体力が削られる。
「トラエタ」
「鎖が……」
気が付いた時には身動きが取れず、さらにHPバーは紫に染まり毒を表している。
「ヤバい……」
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「その程度か!」
「まだ本気出してねーんだよ!」
大鉈で爪を弾きながらエイダイが叫ぶ。
「しかし、カケルからの応答がなくなったが生きてんのかな……」
「よそ見するとは余裕だな!」
「あー、うるせーよ!もう本気出すわ」
押し返し、無理やり距離を取る。
「久しぶりだな、使うの」
鉈を地面に刺す。
「龍化」
体表に鱗が浮き上がり、背中からは翼が生える。
「龍……」
「さて、カケルも心配だしさっさと行くぞ」
鉈を引き抜くと、構え一瞬で加速。
超低空飛行で懐へと飛び込み腹を薙ぐ。
「ぐぇふ」
「これから何度か攻撃入れるけど、降参するなら早めに右手を上げろよ」
吹き飛ばされ、岩壁にめり込んだペペに声をかける。
衝撃で洞窟が少し崩落したが見なかったことにする。
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「何をやってるんだまったく」
「あ、ゼオンさん。ありがとうございます」
「ほら毒消し」
ギリギリで助け出したカケルに小瓶を投げつけるゼオン。
「それじゃあ戻るから」
そして、その場を去る。
カケルは立ち上がると剣を構える。
『おーい、こっち終りそうだけど』
「大丈夫です。ちょっと死にかけましたけど、もう片付けます」
風の魔法陣を展開する。
自分の速度を上げる物だ。
今までよりも速く。
そして、自らの身を隠す。
こちらの位置を視覚できなくなった途端無差別に攻撃を始めたゲイズの鎖に捕まらないように走る。
「断ちます」
背後から姿を現したカケルがゲイズの両腕を叩き斬る。
「まずは腕の分御返し」
「ムム……」
再び姿を消し、一度距離を取る。
右に躱し、左に躱し、鎖を潜り、跳び、懐へと潜り込むと、咽喉を狙って斬り上げる。
「ゥェギ」
謎の怪音を発して仰け反るゲイルに追撃を3発叩き込む。
HPはまだ50%ほど残っているが体が身体として機能している部分はもうほとんど残っていない。
「首をとせばさすがに即死ですかね?」
『いや、オトハのとこ首落としても生きてたらしいぞ』
「マジっすか……でもこれが一番手っ取り早いですよね」
カケルは刃を首にかけると目を瞑った。




