水炎の宴 -21-05-
「はーい、こちらシズネ。こっちは3000ぐらいだったからもうそろそろ決着つきそう」
『こちらも似たようなものだ』
念話の相手であるエンマが返答する。
『しかし、どうしてここが襲われているのか』
「アリオには神殿とかなかったわよね?」
『もしかしたらあるのかもしれないが……』
「まあ、また調査団を出してみるとか……あれ?どうしたの?」
隊員の一人に声をかける。
「ヤバいです。アレが魔人って奴ですかね?」
「あー、エンマ?こっちアタリだった」
『そうなのか?こっちもお客さんがいるようだが』
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重い大剣の剣先を向ける。
「お前が大将か?」
「グリティア配下リリアンヌと申しますわ。どうぞよろしく」
「よろしくつもりはないのだが……」
やたらとフリルの付いた服を着た女がエンマの前に立つ。
「なんかキャラ濃いのが出てきた」
『へぇー。こっちはエンガスとかいう厳ついオジサンだけど』
「ゴスロリが出てきた。これは斬りにくい」
『そっちの趣味あるの?』
「いや、女が出て来ると思ってなかったのでな」
「女だからって舐めないでくださる?」
差していた日傘をたたみ、その先端をエンマへと向ける。
「仕方ない。早めに終わらそう」
「はやい方は嫌われますわよ?」
「……コレの相手するの面倒になってきた」
剣をおろしエンマがそういうと、シズネからの返答も同じようなものだった。
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「わたしもコレの相手するの面倒かも」
「おいおい、嬢ちゃん。オジサンを放っておいて彼氏とお話とは冷たいねぇ」
「うるさいわよ!速攻で終わらせるんだから!」
「オジサンのパワーに耐えられるかね?」
壮年の魔人は大剣をシズネ目掛けて振り下ろす。
シズネは躱したが、地面には小規模のクレーターができている。
「なんてパワー……」
「お嬢ちゃんすばしっこいねぇ」
「あなたの攻撃なんて絶対当たらないから」
短剣を抜き、構える。
「そんな薄い刃でオジサンを倒せるかな?」
大剣を剣を振るう。
その重い刃をうまく躱し、魔人の肩へと立つ。
「そんなとこにいたらスカートの中視えちゃうぜ?」
「そう、じゃあ記憶ごと消すわ」
魔人の首を使って踏み切り、一回転する。
首からベキ、だとかそんな音がし、相手は泡を吹いている。
「アクアスラッシュ」
首筋を狙っての一撃をお見舞いする。
「さて、こっちは終わったのかな?62位……全然たいしたことなかったわね」
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『魔人エンガス、打ち倒したわ』
「そうか、ならばこちらもそろそろ倒しに行こうか」
『なにやってたの?』
「投降するように説得してみたんだが」
『そういえばハルトがそんなこと言ってたわね』
「正直会話するのが面倒だ」
「あらあら、私を無視して他の女と喋るなんて」
「気にするな。お前には特に興味がない」
「あんなに説得してきたのに?」
「はぁ、」
大剣を構える。
「行くぞ」
「来なさい。私の僕が相手になりますわ」
そういうとリリアンヌが傘を己の影へと突き刺す。
リリアンヌの影が黒い巨大な牙獣へと変化する。
「なるほど、そういうスキルもあるのか」
「ええ、驚きましたか?」
「驚いた。が、」
牙獣へと歩み寄り、一瞬加速し、その巨体を通過する。
「こいつ弱くないか?」
両断された獣は影へと戻っていく。
「ひっ……」
首筋へ刃を当てる。
「降参か?」
「嘘でしょう……こんな簡単にやられるなんて……」
「70位、思ったより弱かったな……さて、どうする?降参してくれるなら首を飛ばさずに済むんだが」
刃を押し当てられてるリリアンヌは小さく顎を動かし頷いた。
「こちら、エンマ。捕虜一名確保」
『お疲れ様』
「思っていたよりたいしたことないな」
『そうね……ん?』
「どうした?」
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「いや、なんか生命力強くてさ……首飛ばしたのに立ち上がったちゃった」
『……すごいな』
首なしの戦士はこちらに大剣を振り下ろす。
「ちっ」
躱し、手首と足首の腱を断つ。
崩れ落ちる体。しかし、立ち上がろうと必死にもがいている。
「うわ、これ夢に出るわ……」
雷の魔法で体を焼き、体力を削りきる。
「ふぅ……こちらも終了」
『了解。こちらは捕虜を連れて帰投する』
「了解。みんな撤収―」




