炎ヲ刃ニ -21-02-
「さて、火龍とやらにはあったの?」
「一応。立会人を連れて来いって言われたけど」
「私が立会人すれば解決でしょ?」
「そうだな」
「ん?」
神殿の奥から現れた赤髪の背の高い男。
「あなたが火龍かー」
「そうだ。今代とは初めて会うな、光の女神」
「よろしくね。とりあえず、お姉ちゃんから鍵は預かってるから」
金の鍵で空を切る。
「満足するまでやり合えばいいよ」
視界が変わる。
「ここが龍の峰」
「久しぶりだな……何百年ぶりだろうか」
「火龍でしたか」
「ああ、光耀よばれるんだねー……」
「まあ、そうなってますね」
「行くぞ小娘!」
火龍が元の姿へと戻る。
「あっつ!?」
「こら!私の主が火傷したらどうするんですか!」
「はぁ?……というかなんでお前毎回毎回そんなに過保護なの?」
「……何か言いましたか?」
「……いえ、気を付けます」
「私も行きます」
ルイが剣を抜く。
「魔法剣III mode: Aqua。まずはこれで小手調べですね」
青い魔力を纏った剣を振る。
「おい、水使えるとかありか!?」
「ありです」
「ダメなの?」
「だからアリですって」
火龍はその巨大な爪に炎を纏わせ、構える。
「行くぞ!」
超低空飛行での突進。
自分に向かって真っすぐやってくるそれを、ルイは難なく躱すと隙だらけの体に一太刀浴びせる。
「!?」
「硬いか?」
高い音が響き剣が弾かれる。
「……硬いです」
「光耀には普通に刃通ったけど?」
「アレは主が特別なだけです」
「フレアブレス!」
火龍がルイに向かって巨大な火球を吹き付け、ルイが必死で躱す。
火が弱まったところで真っ直ぐに火龍へと駆ける。
「はぁっ!」
下からの斬り上げ、咽喉を狙った一撃はしっかりとヒットし、その鱗を砕いた。
「うお!?」
「やった……!?」
それと同時にキンッ、という音を立てて剣が折れる。
「うわ。やっぱあの龍硬くない?」
「どうなのでしょうか」
『オトハ!』
「何?今立会いに忙しいんだけど?」
『ポロスが襲撃されてるみたいだ、結界もギリギリだ。向かえるならすぐに行ってくれ』
「え?!光耀、神殿を守りに行ってくるからここ任せて良い?」
「構いませんが……私が戻りましょうか?」
「あなたが戦ったら村ごと吹き飛ばすきがする」
「そんなに信用無いですか」
「とりあえず終わったらルイに渡しておいて」
「まだルイさんが勝つと決まったわけではないですけど……」
「勝つよ、絶対」
光耀に鍵と魔法珠を手渡し、もう一つ取り出した鍵で龍の峰から出ていくオトハ。
「いったい幾つ複製されているのでしょうか……」
光耀が鍵を見ながらつぶやく。
「おい、剣砕けちまったけど、どうするんだ?」
「気にしないで。あの剣はもともと近いうちに処分する予定だったから」
新たな剣を取り出し装備する。
「魔力との親和性を極限まで高めた『魔剣』、試し切りにちょうどいいかな」
「おいおい……」
「幻紋が一つ『太歳』。私にはすぎた剣だけど……使える物は使わないと」
薄く光を纏う剣に魔法陣を潜らせる。
「魔法剣VI mode: Siren」
水の魔力が吹き上がる。
「おやおや、アレはまずいんじゃないですか?」
「……ああ、まずい。というかあの剣、覇龍の気配がするんだが」
「まああの方も戻ってますからね」
「マジかよ」
「行くよ」
ルイが走り出すが、その動きは先ほどまでと比べ物にならないぐらい速く、鋭い。
「ちっ、オラッ!」
爪を打ち下ろすが受け止められる。
剣は砕けず、ルイも特に問題はないといった表情で龍を押し返す。
そしてそのまま腹の下に潜り込むと一閃を放った。
「ぐぁ……お前、手抜いてたな!?」
「ええ。次行きますよ、兜割り」
トン、トンと火龍の体を足場に使い、頭に一撃を叩き込む。
ふらつく火龍の体に降りる。
「これが終わった後まだ仕事が残ってるので、ここら辺で終わらせましょう」
「おい、オレの背の鱗は龍の中でも1,2を争う硬さだぞ」
しかし、ルイは剣を振り下ろした。
「鎧貫き」
火龍が背から血を流しながら地に伏せる。
「やはり水が効きますね」
「……今代の女神は強いですねぇ」
光耀の呟きが龍の峰に響く。




