火の都 -21-01-
「さて、来たは良いけど、なにするんだっけ?」
珍しく街の外に出てきた代表(一応)のハルト。
「なんか王宮に殴り込みとか言ってなかった?」
「言ってないよ……」
隣を歩くオトハと一応護衛という名目でついてきたキクロを連れてフランマの街を歩く。
「あ、ルイだ」
「オトハ、早かったね」
「じゃあ君たちは神殿の方よろしくね。カナデさんから鍵預かってるんだよね?」
「うん」
オトハが右手に金の鍵を出現させてみせる。
「じゃあルイ、転移よろしく。3番隊のみんなはコレの護衛よろしく」
「了解です」
「これって……」
オトハとルイが転移で消えていく。
「とりあえず、王宮かな?キクロ、急に消えないで」
「すみません。気になるものがいくつか」
手にはガラクタ?が大量に積まれている。
「しかし、一応書は出してるけどこんな護衛で徒歩で来る王様とかいるのかな……」
「ここにいるじゃないですか……」
思わず突っ込んだのは3番隊所属のトモハル。
ハルトから視線を受けて目を逸らす。
「とりあえず、王宮はあっちか……ん?」
街道の方が騒がしく感じる。
「なにかな?」
「待ってください……これは……ものすごい数のモンスターが」
「ホントに勘弁してほしいよ……僕が動くとすぐこれだ」
「ハルトのせいだったのですか」
「違うよ。君たちは加勢してあげなよ。あ、でも一人残ってね。神殿の方が心配だ」
「「「「「「「「「「了解です」」」」」」」」」」
「それじゃあオレが神殿に」
トモハル以外が街道の方へと駆けていく。
「ごめん、待って」
『ハルトさん、緊急です』
「えっと、ミラベルさんだっけ?スズネの影の」
『報告が、詳しくはメールしますが各地でモンスターの大発生が起きている模様です』
「わかった。こっちから人員を送るよ。ごめん、とりあえず神殿まで飛ばしてくれる?」
「はい!」
ハルトから受け取った転移珠を使い火の神殿に。
「うわ、こっちもすごいことに……」
神殿へと迫りくる魔物の大群。
「トモハル、キクロ先に牽制を」
「了解しました」「わかりました!」
2人が駆けだす。
「オトハ!」
『何?今立会いに忙しいんだけど?』
「ポロスが襲撃されてるみたいだ、結界もギリギリだ。向かえるならすぐに行ってくれ」
『え?!光耀、神殿を守りに行ってくるからここ任せて良い?』
「さて、次は全員に呼びかけを……うまく動いてくれるかな……」
代表権限ですべての冒険者へと呼びかけを行い終えた頃には、前線はかなり押されていた。
「まあ、2人じゃ無理だよね」
「そういうのいいんで早く手伝ってください!」
トモハルの声が聞こえる。
「キクロ!遊んでないで本気でやって」
「……仕方ないですね」
そういうと余裕ありげにメニューを操作し、外套を装備した。
「なんで!?」
必死で魔物を押さえるトモハルが叫ぶ。
「カナデさんにつくってもらったこの外套『蝙蝠』。やっとお披露目ですね」
「良いから早くいきなよ」
「そういうハルトさんも早く戦ってください」
「仕方ないな……本当はもう少し駒が欲しいんだけど。《戦略》発動、《動須相応》」
《戦略》スキルはパーティーを指揮し、群れとしての戦力を高めるもの。
最低人数は3人。
そしてハルトも駒の一つとして魔物の群れへと飛び込む。
「ギリギリだね……。行くよ、鉄鎖旋風」
魔物の群れの中央に飛び込んだハルトが大きく敵を薙ぐ。
かなりの数を一度に削がれた敵は一瞬ひるむが、何かに突き動かされるように前進を続ける。
「行きますよ。超々々々広域スピアレイン!」
火山帯であるせいか敵の属性は火に偏っている。
つまり弱点は水。
「魔法剣Ⅱmode: Aqua」
トモハルも必死で魔法剣で応戦している。
「これは厳しいなぁ……ルイさん早くもどらないかな」
「ハルトさん、アレ!」
トモハルが軍勢の中心を指さす。
「あれは……」
1人だけ段違いの迫力を放つ……言うまでもなく魔人であるが。
「ん?気づかれたか……まあ、たった三人でここまでやったのは褒めてやろう」
「今ここでお願いしたら帰ってくれる?」
「それは無理だな。わが名はアルトリウス。名高き北将軍アルガンディ様の配下!」
「……全然聞き覚えのない名前だから帰ってくれる?」
「ふざけるな!行け!お前ら神殿を破壊するのだ!」
「うわ、血気盛んだね……」




