雷ヲ砕ケ -20-09-
箱庭 Valentine's Day
ラヴ・チョコレート –Hidden Story-14- After:-15-01-
を短編として投稿していますのでよろしければ
「ここがリミティ島ですか」
星辰の転移によって雷神殿の前に降り立つ。
始めてきたクロエは辺りを見回している。
「では、クロエさん頑張ってください」
「え!?スズネさんは!?」
「私は雷系統使えないので」
「えええ……」
「アスカ、悪いけどあとはお願いね」
鍵をアスカに押し付けるように渡す。
「え?ええ!?」
「星辰、あとは任せるけど「了解した」……星影、フランマに飛んで!」
「任せなさい」
「私もお願いします!」
既に星影に乗り、飛び立とうとしていたカナデが手を伸ばし、スズネを引き上げる。
「頑張って!」
と言われた瞬間には黒い影は彼方空を飛んでいた。
「えっと……」
神殿の周囲には割と大勢の参拝客がいたがそんなものを全く気にせずカナデは普通に龍に乗って去っていった。
「出てこいニクトス」
「言われなくても出てきている」
唐突に現れる金髪の美女。
お久しぶりです、と頭を下げるアスカ。
「さて、アルモ様もなかなかいい人材を選ぶのが上手いようだが」
「当たり前だ。我の主人だからな」
「で、ゲイル。この状況の説教は後でするからな」
押し寄せる参拝客(龍人7割、人3割程度)を指しながらニクトスが風龍を睨む。
「……今はもうゲイルじゃないので許してください」
「お前まだ新しい名貰ってないだろう」
「!?……名前をください」
「え!?なんでいちいち土下座するの!?……………………嵐とか?」
「いいですね!」
笑顔で答えるが、本心なのだろうか?
「いいから、早く峰を開け。これ以上こんなに鬱陶しいところにいたくない」
「え!?は、はい。クロエさん行きますよ」
「ぅえ!?そうか、私か!」
蚊帳の外で呆然としていたクロエがアスカに手を引かれる。
「行きます」
アスカの鍵が空を切る。
「えと、えーっと。私接近戦からっきしなんですけど……」
「……私もそうですが。クロエさんは魔法一筋ですもんね……どうしましょう」
「でも、まあ対策はありますけどね」
アイテムボックスから二つの指輪を取り出し両手の中指にはめる。
「本気でやりますんで、引かないでくださいね?」
長い髪を1つに結ぶと、クロエを纏う空気が変わった。
「行くぞ」
雷を纏う金の龍が吼える。
「行きましょう」
雷龍の周りに複数の魔法陣が展開される。
雷系統の魔法陣。
「行け!」
一斉に放たれ、クロエへと走る。
「タイムウェイト省略!《アクセルバースト》ッ」
指輪を媒介とすることによって魔法陣展開の時間を省略する。
言うまでもなくカナデの作によるものである。
急激な加速で雷にとらわれることなく前へと駆ける。
「なかなかできるな。ならばこれでどうだ!」
極大の光線を真っ直ぐこちらへ走るクロエへと放つ。
「《マジックリバース……はむりそうだから十連!」
目の前に岩石の壁を生み出していくが次々に貫通されていく。
しかし、器用に崩れていく壁の上を渡り回避する。
「《アイアンレイン》」
空に展開する鈍色の魔法陣。
そこから降り注ぐは、鉄の杭。
「これは少々辛いな」
杭は龍の鱗に浅く刺さっていく。
「でも、それで終わりじゃないですよ?」
ギリギリまで近づいたクロエが次の攻撃を放つ。
「《雷神の槌!」
「なんな此れしき!同系統の技が効くとでも!」
「これもただの目晦ましっ!」
龍の背に降り立ったクロエがまた別の武器を取り出す。
「なんですかその禍々しいロッド……」
先端がとがり、反対側にはよくわからない機構がついている。
「まだ実験段階の試作品ですが、こうやって使います」
機構の一部をオープンし、小瓶のようなものを入れる。
「カートリッジ装填、行きます」
龍の背に突き立てる。
「うぐっ!?」
「即効性の麻痺毒です。さて、投薬を続けますよ」
「……そういえば本職そっちでしたね」
「龍にでも効くように調合したんですけど、試す機会がなかったんですよね」
がしゃんと音を立てて、空き瓶を排出し、次の小瓶を入れる。
「結構使えますね、カナデさんに調整してもらいましょう」
麻痺し続けている雷龍の背に針を突き刺す。
「っ!?」
「猛毒です。どうやら効いてるみたいですね。ちなみにエイダイさんは20秒で死にましたけど」
「人体実験してた……」
「龍殺しの味はどうですか?」
喋ることすらできない雷龍の体力は順調に減少していく。
「思ったより効いてないですね……もう少し強い奴を試しましょうか」
「――――ッ!?」
次のカートリッジを装填する。
「お次は毒薬+lv2龍殺しです」
針が突き刺さり数秒後、体力の減りが目に見えてよくなった。
「さて、それでは……」
「……それはなんですか?」
「これは、爆薬ですよ?注入した患部が爆発します」
その光景を一瞬想像したアスカは顔を顰める。
「えっと、もうやめてあげてください……」
雷龍もうなずいている(様に見える)。
「キクロのギルドにいただけありますね……」
「何か?」
「いえ、なんでもないです。それより早く解毒してあげてください」
「はいはい、えーっと、血清lv5でよかったかな?これ以上上の毒はまだ血清ができて無いんですよね……」
「恐ろしいこと言ってないで早くしてあげてください」
毒状態が解除された雷龍は安堵のため息をつき、風龍・嵐はアスカの陰で怯えていた。




