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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第20章 神殿探しと龍の国
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龍の舞う空 -20-07-

「……私が出るまでもなかったですね」


「そうだね……」


涼しい顔で谷を抜けてきたカナデと普通にその隣を歩く星影を見てスズネが呟いた。


「結局どうするつもりだったんですか?」


クロエが尋ねる。


「私が転移珠で飛び込んで、カナデさんを回収して逃げるというのが一応のプランでしたが」


「全く苦戦した様子じゃないですね」


「そんなことないよ?」


アスカの言葉に一応反駁を試みるカナデ。

しかし意味を成してはいない。


「そんなことより、目的地すぐそこよ?」


「そうなの?」


「ええ、あそこに門が見えるでしょ?」


10メートルほど先の門を指さす星影。

岩壁に挟まれあそこ以外から入ることは難しそうである。


「思ったよりもすぐそこだった……」


門には門番などはいないようだが、しっかりと閉じられ開く気配はない。

所々苔が生え、最近開いた形跡もない。



「どうやって入るの?」


「こう?」


カナデの問いに星影が刀で斬る真似をしながら答える。


「カナデさん、どうぞ」


「頑張ってください」


「えええ……斬れるかな……」


アスカとナナミにそそのかされてカナデが前に出る。

刀を抜き、3度刃を走らせる。


右上から左下へ。


左中央から真横に。


持ち方を変えて右下から左上へ。


鞘に刃を収めると、門から距離を取る。


「で、どうなったんですか?」


「……アスカ」


「任せてください」


アスカが8つの留め金を正確に打ち抜く。

3メートル以上の巨大な鋼鉄の門扉が轟音を響かせながら6つの鉄塊へと姿を変える。


「おー……」


「すごいですね」


クロエが呆然とし、スズネが拍手する。

一方門の向こうでは、何事かと集まった市民や兵士たちが集まってきている。


「……大事になっちゃった」


「ある程度読めていた展開ですね」


「これテロリスト扱いされません?」


冷静にうなずくスズネと少し焦るクロエ。


「……星影」


「何がしたいかは分かったけど、こういうの普通最終手段じゃないの?」


「もめんどくさいからいいかなって」


カナデがそういうと星影はやれやれと言った表情をした後、


「全員手しっかりを繋いで」


「え?」「へ?」「はい?」

「えっと……」「どういうこと?」


それぞれ疑問符を浮かべながらも横一列に手をつなぐ。

そして、カナデの空いた手を握った星影が人型のまま跳躍する。


「えええ―!?」

「「わああああああああ」」

「「きゃぁああああああ」」


釣り上げられるかのように上に跳ね上げられる一同。

10秒ほど上昇したのち、固い鱗の上に落ちる。


「ちょとこれは予想できないわ……」


「このまま神殿に突っ込めばいいのね?」


「うん、それでいいけど……スピードは、抑、えて、ね!」


割とギリギリでしがみつく後ろのメンバーを見ながらカナデが叫ぶ。


眼下に広がる街を通り抜けて、城の屋根のすれすれを掠める星影を叱りながら、あっという間に景色は平原に。


「あ、あそこになにかありますよ……」


「アスカ、辛いなら無理しなくていいから……」


アスカの指し示す方向には古代遺跡のような建造物とその真上に浮かぶ神殿の姿。


「あれがテンペスタ浮遊神殿よ。本当は遺跡の中にある転移装置からしか行けないんだけど、今回は面倒くさいから無視するわ」


そういうと星影が神殿の方へとまっすぐ向かう。

途中何度か何かないぶつかったような衝撃に見舞われたが、ぶつかっている本人が涼し顔をしているので問題ないだろう。


柱を何本か薙ぎ倒しながら星影が着地する。


「さて、風龍さんはどこかな?」


「あの子、人見知りだからね……」


神殿の門扉は開く気配がない。


「どうやって開けるの?」


「とりあえず、押してみたら開きそうですけど……」


クロエが力を込めて扉を押すが、少しも動く気配がない。


「私がやってみます」


スズネが押し、ナナミも挑戦するが微動だにしない。


「これって私がやったらすっと開くパターンかな?」


「まあ一応女神のトップだからね、カナデ」


最後に挑戦したアスカが扉に力を込める。

そして勢いよく開いた扉の向こうにアスカが消える。


「ええええ……」


「どうやらあの子を気に入ったみたいね」


「そういうチェックだったんだ……そしてクロエもスズネさんもそんなに悔しい!?」


冷静な彼女だがとても悔しそうな雰囲気が漂っている。


「とにかく、私は立ち合いに行ってきますんで……」


カナデがそう言って神殿へと入ろうとした瞬間。


『全員聞こえる!?緊急だから許してね?』


ハルトの声が。


『魔物の大量発生が起きた!場所を言うから近くにいる者は急いで向かってくれ』


いつになく焦った声で。


『メンシス北部』

『ポロス西部』

『王都グロリア』

『フロス神殿』

『プリマ東部』

『マーレ南部』

『アリオ北部に』

『スペーラ』

『そして僕のいるフランマ』


『どうやら魔人もいるみたいだけど、風・雷神殿攻略組はそっちを優先にしてくれ』


『動ける者はできるだけ急い―――』


念話が途切れる。


「……アスカ、急ぐよ」


「はい!」


風龍の元へと走る。


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