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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第20章 神殿探しと龍の国
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風へ向かう -20-04-

大規模な武器改修から2日後。

前々から予定されていた風の神殿への出発が決まった。

メンバーはカナデと星影。

7番隊から付添いとしてアスカと今回は見事抽選で勝ち取ったリゼット。

シルフのスズネと本人からの強い要望で同行することとなったクロエ。

シオンは魔人襲来の事も考えて錬金や神殿へ警戒しなければならないため泣く泣く留守番となった。

本気で泣いていたせいで慰めるのに手間取ったが。

そこまで依存されてしまうとは思わなかった……。


「すみません。私が最後でしたか」


アスカが集合場所である転移門の前へとやってくる。

ここから一度アリオまで飛び、その後大陸を南下していく予定だ。


「アリオから人通りの少ないところまで行ったら星影が乗せてくれるらしいから」


「飛龍にのるのはさすがに初めてですね」


「私もです!父はCGの龍によく乗ってますけど」


シオンの見送りを受けながら転移門を潜っていく一同。

アリオはまだ復興の真っただ中で街中がせわしなく動いている。


「終わった直後よりはいくらかマシになってますね」


「城を一部住居として開放してるみたいですし。といっても復興はこれからですね」


城壁の周りを歩きながら南へと向かう。


「でもみなさん気力はあるようでよかったです。もっと難民キャンプみたいになってるかと思いました」


「まあ自分たちで何とかしようと立ち上がった人たちだからね」


街の南側は砂漠と言っても毛色が違うらしく、乾燥した荒野という表現が似合うと場所だった。


「あついね……」

「暑いですね」

「いやむしろ熱いです」


日本語の微妙な違いにリゼットとクロエは首をかしげる。


「暑いから降りてくれない?」


カナデが腕の中にいる黒猫にいう。


「肉球でこの地面踏んだら火傷しちゃうでしょうが」


「人型になるとかさ……」


「もうすぐ龍になるんだから余計な体力使いたくないの」


「じゃあいっそ凍らせてみようかな……」


「「「「え?」」」」


カナデが猫を抱えていない方の手を前に突きだすと、前方に水色の魔法陣が次々に現れた行った。


「凍れ」


この水のない大地のどこから水を持って来たのかは一切不明だが街道は一瞬で白く凍りついた。


「これで気持ち涼しいかな?」


「むしろ寒いです……」


周囲との温度差で妙な湯気を上げながら、凍っている部分とそうでない部分の境目が空中にもできている。


アスカには寒かったらしいので懐炉代わりに猫を渡す。


「龍の谷とかいう厄介な場所はどこにあるんでしたっけ?」


「たしかこのままこの平原を真っ直ぐ南に行くと……ええあの山の辺りですね」


「思ったより遠いですね……おっとなんか出た」


黄色い毛をもつ狼のようなモンスター。

それが8体ほど。小規模な群れだろうか。


「これが雷獣ってやつですか」


「そうですね」


「ここは私が」


リゼットが真っ先に駆けだして、群れの真ん中にいる大きめの個体の脳天に剣を打ちこむ。

一撃で倒す……ということはなかったが気絶したようで取り巻きは警戒し低く唸っている。

そこへアスカの弓が降り注ぐ。

クロエの魔法が降り注ぐ。

スズネが鉛玉を打ち込んで次々にトドメを指していく。


「うわ……」


「あなたたちにかかれば雷獣といえども瞬殺ね……」


そこからも特に問題はなく、徘徊していたゴーレムをカナデが一瞬で斬り捨てたり、体が砂でできている謎の生物を対策とか考えるまでもなくクロエが爆散させたりして順調に進んでいった。


「さて、そろそろお願い」


「はいはい」


黒猫はアスカの腕の中から飛び降りると光に包まれながら巨大化し、龍の姿になった。

色は黒だが星辰と同じく、東洋龍の姿だ。


「……これってどこに乗るのが正解なんですか?」


「さあ?」


「できるだけ頭の方に固まってくれないかしら?その方が安定するし」


「そういうもの?」


星影の指示取りに乗り込むと原理は不明だが一気に空へと登り、一気に加速した。


「速っ!?」

「きゃあああああ」

「このスピードは少々予想外ですね」

「落ちないよね!?コレ」


カナデ以外が悲鳴を上げる中、星影は一切気にせず空を走る。

さっきまで遠くに見えていた谷がガンガン近づいていく。


「もう着くわよー」


「あの、星影?もうちょっと加減しないと……」


「う……」


「ああ?!アスカ吐きそう!?もう少し耐えて!」


背中でうずくまるアスカを励ますこと数分。

地面に降り立ち、青い顔のアスカにポーションを与えながら一息つく。

クロエとリゼットはお互いもたれかかってぐったりしている。

普段落ち着いているスズネもあまり余裕がありそうな感じではない。


「ごめんなさいね。普段人なんて載せないから……」


「次はもう少しゆっくりね……」


「気を付けるわ」


さて、と腰かけていた岩から立ち上がるとスカートをはらう。


「まあ、いかにもな感じがするところだけど行きましょうか」


「……カナデさん元気ですね」


「リゼットさんとアスカさんもいつの間にか復帰してるところを見ると7番隊の厳しさがうかがえますね」


「まあカナデさんもシオンさんも異常なハイスペックですからね……それについていけるってことは」


「お二人とも行きますよー」


「はい」

「了解です」


「……私たち死にませんよね?」


クロエのスズネへの問い掛けが岩壁に反響する。


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