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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第20章 神殿探しと龍の国
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術師の部屋 -20-03-

謎の魔族の来訪から2晩。

本当に丸一日で刀を3振り仕上げてきたヨウジが加わったことで対魔族対策の武器製作にも熱が入り、一日かけて預かった武器全てを仕上げた。

そしてお披露目という事で全員をこの錬金術部の本部(全く利用されていなかったが一応あった)へと集めた。


「なんか最近は剣背負ってなかったせいで落ち着かなくて気持ち悪かった」


「あんな重い物ずっと持ち歩いてたの!?」


落ち着かないらしいエイダイから引き渡しを始める。


「えっと、大剣だけど形は鉈……というか大鉈みたいな感じ?注文通り片刃に仕上げたけど」


「おう」


「光属性が付加されているはずなのになんか邪悪だね……」


はしゃぎながら素振りをする危険人物を見ながらハルトがつぶやく。


「銘は大鉈・城皇(ジョウコウ)ね。ちなみに形状は僕が手伝った」


ヨウジが自慢げに胸を張る。


「銘とかいらなかったなぁ……」


エイダイが背中に大鉈を背負いながらつぶやく。


「姉さんはこの短剣・瑞星(ズイセイ)で、義兄さんは奇大剣・獅子。注文通りのギミック加えておいたから」


「すまない」


「わーい、やっと廃スペックの武器が手に入った」


透き通る青の刃をくるくる回しながらシズネが喜ぶ。

隣ではモエが歓声を上げている。

一方、エンマはヨウジとカナデから扱い方についての説明を受けている。


「モエさんとナナミさんは私が創らせてもらいました。匕首・奔猫(ハンミョウ)と扇・胡蝶です。出来はカナデさんお墨付きなので安心してください」


「急に強化するっていうからびっくりしましたよ」


「まあカナデさんの刀が砕けるなんてことがあればこれぐらいは強化しておいて損はないですよね」


説明をヨウジに丸投げしたカナデがハルトとスズネの方へやってくる。

2人でエイダイの武器を眺めているようだが。


「エイダイ、どんなかんじ?」


「完璧だ。STRの上昇値も申し分ない」


「そう、じゃあ次はハルトさんの鎖鎌・梔子(クチナシ)


「へぇ……見た目はあんまり変わってないね?飾り紐みたいなのがついてるけど……」


「ちなみに、梔子の花言葉は『私は幸せ者』」


「ほほう」


エイダイがハルトとスズネを交互に見る。


「……女の子って花言葉とか好きだよね。そういえば昔、スズネからカーネーションもらったことあったなぁ。ピンクと白の」


「『熱愛』と『私の愛は生きています』」


カナデの呟きにエイダイが軽く引く。

ハルトには聞こえていなかったようだが。


「……スズネさんには銃剣・飛鷲(ヒジュウ)角鷹(カクオウ)です。前回は2つで1つにしましたが、今回はそれぞれ属性を変えておきました」


「ありがとうございます。……ところで、次ハルトさんに贈るとすればどんな花がいいでしょうか?」


「……あえて私に聞いてきますか。向日葵とかいいんじゃないですか?」


「そうですね。夏になったら贈ろうかと」


スズネは満足気にハルトの元へと戻る。


「因みに花言葉は?」


「『私の眼は貴方だけを見つめる』」


「うわぁ……気を取り直して次行こうぜ」


エイダイが少しげんなりしながら次を勧める。

向こうではシオンがオトハに双戟・金翅(キンシ)を、タロウに細剣・羅刹を手渡している。

タロウは黒ベースに青のラインの入ったデザインが気に入ったのかかなりご機嫌だ。


「次は……ツバサ。後、カケルさん」


「まさかオレの剣も強化してくれるとは」


「はは、ツバサ。よかったじゃない」


「なんか砂漠から運んでくれたみたいだからお礼に」


「いや、そんなこと……」


ツバサが恐縮する。


「というかカナデを抱き上げて礼がもらえるなら毎日やってもいいぞ?10kmぐらいならはこんでやるが」


「そうですね。どっちかというと役得というか……」


エイダイとカケルがツバサを追い詰める。


「私なんか抱き上げてうれしいの?血塗れだったと思うけど」


「それは……」


ツバサが目を逸らす。

向こう側でつい昨日帰ってきたシルヴィアに爪・白麗を渡すシオンからこちらに殺意が飛んできている。


「まあいいや。ツバサは普通の剣ね。銘は夜叉。黒いけど爆系統になってるから扱いは若干気を付けて」


「了解しました」


カナデから恭しく剣を受け取るツバサ。


「そんな大げさな……。カケルさんは直剣というかなんというか……とにかく注文通りに作ったから。銘は金剛」


先端は尖らず、長方形の刃のついた剣を手渡す。


「また、趣味全開だな」


「突きとかあんまり使わないんでこれでいいんですよ」


「で、最後はアスカ」


「はい!」


部屋の端の方でモエとナナミの武器を眺めていたアスカがこちらに走り寄って来る。


「大弓・仙鶴(センカク)。少しやり過ぎた感があって、射出速度とかすごく上がってると思うから調整頑張ってね……」


「わかりました」


新しい弓の調子を笑顔で確かめるアスカ。


「で、カナデの新しい得物は?」


「私のはシオンが創ってると思うけど」


「はい、お任せください」


シオンがカナデの元へとやってくる。

全員の視線が集まる。


「まずは叢雲です。こちらはあまり変わってませんがシリーズは変更されてます」


「ちょっと待て、もしかしてコレもそのシリーズとやらに……」


「後でヨウジさんが説明します」


エイダイの発言はシオンによって切られる。


「そして、これが九天です」


朱い鞘に入った少し西洋剣に似た装飾の刀。

カナデが鞘から抜き放つと鈍色の輝きを放つ。


「うん。いい感じ。じゃあシオンには遊星と彗星の2つを。遊星の方は薙刀をつくりかえたというか、なんかそんな感じ」


黒と白にそれぞれ金の装飾を与えられた刀をシオンが受け取る。


「じゃあ、質問受け付けるけど?」


カナデがそれぞれの眼を見ながらそういうとハルトが口を開いた。


「なんでシオンさんが錬金術使えるようになってるの?あと何で刀?」


「私の眼シオンに移植したでしょ?」


「うん」


聴かされていなかったメンバーが少し青い顔をする。


「そしたらシステムがおかしくなったみたいで、シオンのスキルが私と共同になっちゃったみたいで」


「なにそれ、予想外」


「検証するために私たちもやってみますか?」


「いや、いい。そんながっかりした顔されても対処に困るからやめてね?」


スズネの申し出を断ってハルトが続ける。


「ということはカナデさんとまったく同じスキル構成でレベルも同じと」


「はい、ただこの構成で戦ったことないのでしばらくカナデさんと訓練です」


「なるほど……そうか、そんなバグが起こるのか」


ハルトは何やら考え込んでいる。


「じゃあ、そろそろコレについて教えてくれよ」


エイダイが手を上げてそう発言するとヨウジがテンション高く前に躍り出た。


「それでは説明しよう!カナデさんとシオンさん、そして僕とキクロの共同開発!」


キクロの名前が出た途端全員が顔を曇らせる。


「この”幻紋”シリーズはステータスを1.05^n倍する優れものだ!」


「前1.1^nじゃなかったっけ?」


オトハが質問する。


「前回はSTRのみ今回は全ステータスだ!」


「つまり、武器の効果で上がるAGIやらなんやらも影響を受けると」


「基本50もついてるからなこの武器。正直バグだろコレ……」


「1.05の18乗は2.4ってとこだな……」


エンマの呟きに周囲がざわつく。


「すごいなコレ……」


「ただ、群れてないとあまり効果を発揮しないがな」


タロウの発言を隣のオトハが批難する。


「そんな補助無くても以上に強いから大丈夫でしょ」


「とりあえず全員終わったかな。時間あれば他のみんなの物も強化していきたいけど」


「まあまだしてもらってない奴にはオレから声かけとくわ」


エイダイがそういうと順次解散という流れになる。


「カナデ、私にも眼頂戴」


「は!?姉さん正気!?」


「ははは、冗談よ」


「あんまり冗談に見えないんだけど……」


「まあいいわ。でもあんまり無理しないでね。気が気じゃなかったんだから」


「まったくだよ。お姉ちゃん泣いてたんだから」


「オトハ!」


暴露されたくなかったのかシズネがオトハを叱る。


「ごめん。気を付けるよ」


「次なんかあったら迷わず私を頼ってね。……待ちなさいオトハ!」


シズネが逃げるオトハを追いかけていく。

その後ろ姿を見て柔らかい笑みを浮かべるカナデだった。


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