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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第19章 揺らぐ王国と異族の誓い
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金と銀の嬉遊曲 -19-03-

「少々お話しよろしいですかな?」


そう言われても、こちらには話すことなどないし、さっきの王都の会話を聞いていたから先に釘を刺そうという魂胆は見え見えだ。


「ええ、お断りします」


スズネがそう言い放った。

それと同時に舞踏会の空気が凍る。


「ご婦人ですかな?私は今ご主人と話しているのです」


「あら、女だからって無視するおつもりですか?ずいぶんとカビの生えた古い差別思想をお持ちのようですけどそんな方が爵位を賜っているなど信じられませんわ」


「貴様っ!不敬だぞ!」


ドリス伯爵が前に出る。


「あなたの方が不敬でしょう?立場で言えば私は王妃ですよ?」


「くぅ……っ」


スズネが平然と言い返す。


「スズネ、落ち着きなよ。コリンズ公爵は何か大事なお話があるのかもしれません、もしかしたら我々の利益になる様な……」


そこで公爵に視線を送ると口角を釣り上げて笑う。


「ええ、きっと多大な利益を得られることでしょうね」


「それは富でしょうか栄誉でしょうか」


こんな話をしているというのに不審がられないのは既にここの貴族たちは堕ちているからか。


「ええ、両方かもしれません」


『王を討ち、その罪を我々に着せて潰す気らしいですよ』


『読心もできるのか君は……』


「そうですね……栄誉はいりませんね。ええ、興味もありません」


「ほう……」


「富にもまるで興味はありませんねぇ……そもそも公爵家如きの全財産を受け取っても私は満足しませんよ」


再び周囲の空気が凍る。

凍るってことは聞こえてるってことだ。こいつらはたぶん堕ちているのだと断定する。


「何をふざけたことを……」


するとハルトはジャケットのポケットから30枚ほど水晶貨を取り出すと床に撒いた。


『わぁハルトさん成金趣味があるんですか』


『棒読みで言わないでくれる?そんな趣味ないしね』


「拾いますか?」


「「「………………」」」


睨みながら動けずにいる3人を余所目に配膳をしていたメイドに拾わせる。


「ありがとう。処分しておいてくれていいよ。なんならチップ代わりに君にあげよう」


「ふぇええ!?そんな。受け取れませんよぉ……」


「そうだろうね。ごめん、少しからかった」


焦るメイドから水晶貨を受け取り、金貨を数枚握らせる。


「あまり現金を渡すと彼女が間者と疑われますよ」


「まあ、そうだろうけど。君が何とかしてくれるだろう?ライマー王太子」


正式に次期国王になることが決定した彼がそこに立っていた。


「……陛下がお待ちです」


「わかった。行こうかスズネ」


「はい」


王太子に続いて奥の部屋に入る。


「それで、コリンズ公爵はいつクーデターを起こすのでしょうかね」


「ぐ……そこまで知れていたか」


「まあ、気付いてないでしょうけど何人か影が入ってますからね」


「ええ!?」


「この国の貴族が送り込んでくるような雑魚とはクラスが違うのです」


そういうと30枚ほどの紙の束をライナルトに渡す。


「これは……?」


「ここ数日で入ってきた王国の(・・・)スパイのリストです。雇い主までしっかり吐かせてあるので活用してください」


暗に面倒だからそっちで処罰しろと言っているのだが。


「こんなに入り込んでおったのか……申し訳ない」


「いえ、これを捉えるのはそれほど手間ではないので。わかりやすい罠を張ったらホイホイかかるので害虫よりも駆除が簡単だと団長が話してました」


「……うむ、そうか」


頭痛がするようでライナルトはこめかみのあたりを押さえている。


「それで、貴族たちのクーデターの理由はウチでしょう?鎮圧には協力しますが、内部の掃除までは手伝いませんよ?」


「わかっている。あれらをのさばらせ過ぎた私にも責任はある。ライナーに継がせる前に決着はつけて見せよう」


「それと、ポロスとアリオ。わかっているでしょう?」


「ポロスはもともと支配できていたわけではないし仕方がないことだ。アリオに関してはあそこの領主が無能すぎた」


だから、というと一通の手紙をハルトに渡す。


「先々代が獲った国だが、私の代で彼らに返そう。彼らが立ち上がるならば、これを彼らに届けて彼らの味方になってやってくれ。領主であるリベレード侯爵の生死はとわない」


「わかりました。スズネ、帰ったらアリオに影を回してくれ。代表に案りそうな人物を探し出してくれ」


「わかりました。今から招集しておきます」


「……御嬢さんをも駒として使うのか?」


「女だからって守られるだけだと思ったら大間違いですよ。少なくとも、」


そういうと、スズネが視界から消える。


「貴方たちよりも強いですから甘く見ないでくださいね?女舐めたら怖いですよ?」


銃口をこめかみに突き付けられた王太子が冷や汗を流す。


「有用な人材は登用していかないとね」


「ハルト殿の護衛だったのか?」


「いえ、婚約者というのは本当ですよ?」


ライナルトの問いにすぐさまスズネが答える。


「………そうえいばカナデ殿の格好だが」


「ああ、王子も動揺してましたね。さて、どうなっているのかな」


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