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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第19章 揺らぐ王国と異族の誓い
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夜に舞え -19-02-

光の神殿を解放し、後の処理をオトハに丸投げした一同は短い休日を得られると思っていたが、現在は早朝からのハルトからの呼び出しに不機嫌さ全快である。


「というわけで、今日の舞踏会に行くメンバーを選考します」


「聞いてないんだけど……」


シズネがハルトを睨む。


「予定では僕とスズネ、エイダイとカナデさんで行く予定だったんだけどね」


「えっと、私も何も聞かされてないんですけど」


カナデがため息をつく。それと同時に空席の隣を見る。


「うん。そこに座ってるはずの奴が失踪してね。代理を立てないといけなくて。といっても踊れそうなのはキクロだけなんだよね……」


「確かにオレには無理だ」


ハルトの言葉にエンマが頷く。


「僕とカナデさんだけで行ってもいいんだけど、たぶんずっと側に入れないから。というか前科持ちのカナデさんは貴族たちに目をつけられてるというか」


そいうえばなんかやらかしたなぁといううぐらいの認識でカナデは虚空を眺め、少し後悔する。


「じゃあ、カナデを連れて行かなきゃいいんじゃ?」


「いやでも、牽制のために……というかカナデさんが出ないなら私は出ないと第二王子が言い張って、貴族の娘さんたちが嘆くからと王様に頼みこまれて……。という事でキクロ行ける?」


「カナデさんのお相手という事なら喜んで出たいのですが、今は少し研究室を離れるわけにはいかないので」


キクロの席に座る謎のぬいぐるみがキクロの声で応える。


「まあ、クロエさんがそれ持って来た時点でうすうす無理だろうなとは思ってたけど……さて、どうしよっか」


「ハルトさんの不在を狙って攻撃してくる可能性もゼロではないのでエンマさんとシズネさんはできるだけ動かしたくないですしね」


スズネの言葉にハルトが頷く。


「あ、シオンって踊れるのかな?」


レイがカナデに尋ねる。


「なんかお爺様がフランスかどこかの人でその手の事は一通り習わさせられたみたいなことを聞きましたが」


「それなら、私にいい案があるわ」


そう嬉しそうに言ったレイがカナデを攫って消える。

とりあえず詳細はわからないが、この際レイの意見に乗るしかないという事で会議は解散。


そして日は落ちはじめ出発する時間である。

3000円もする上に自分で歩くよりも遅いことでほとんど購入者がいなかった課金アイテム・竜車の前でカナデ+1名を待つハルトとスズネ。

その後ろでは地竜が退屈そうに空を見上げている。


「すみません、遅くなりました」


やってきたのは無駄な装飾は少なく、腰の細さを際立たせるシンプルなドレスに身を包んだシオン。


「え……カナデさんは?」


「ふふふ、もうすぐ来ますよ」


嬉しそうに笑うシオンの後ろに長い黒髪を後ろで結んだの男性?とレイが現れる。


「ごめんなさいね。カナデちゃん着やせするタイプなんだけど、それでも胸を隠すのがなかなか難しくって」


「予想外の形に落ち着きましたが、私としてはドレスよりこっちの方がいいですね」


男装の麗人・カナデがはにかみながら応える。


「なるほど、こういう方法もあったのか」


「なるほど、シオンさんが喜ぶわけです」


「はい、もう求婚してもいいぐらいです」


「シオン、さすがにそれは大げさ……」


「とりあえず、これでいいとして、急いだ方がいいんじゃないかしら?」


レイの声にハルト達はあわてて車に乗り込むと、転移門を潜る。

一応、招待されているので王城まではスムーズに通れたが、見慣れない“竜車”に街が騒然となった。


車から降りるハルトとその手を取って現れたスズネの姿に貴族たちの視線が集中する。

スペーラの街では1,2を争うほどの美形であるハルトが真紅のドレスと優雅な気品を纏ったスズネの手を取る絵になる光景。

そしてそれに続くのは黒髪の麗人とシンプルな黒のドレスに白い肌と銀の髪が映える少女。

夢見る貴族のご令嬢たちにはまさに「理想の」姿であった。


「あらあら、見られてますよ。ハルトさん」


ハルトと腕を組んだスズネが嬉しそうにハルトに笑いかける。

少し照れた表情をしたハルトは、


「たぶんカナデさんとシオンさん見てるんだよ。綺麗だからね」


とごまかす。

とりあえず、王への挨拶に向かうべく前へ進む。


「あら、それでは私は綺麗じゃないと?」


「うっ……いや、綺麗だよ。僕には勿体無いぐらいには」


「うふふ、珍しく素直ですねハルトさん。私はうれしいです」


めったに見せない笑顔を向けられて思わず目を逸らすハルト。

もうすぐライナルトの前へ着くので急いで顔を戻す。


「んんっ……お久しぶりですライナルト王。本日はご招待いただきありがとうございました」


「ああ、ハルト殿と……」


「婚約者のスズネと申します」


「なるほど、スペーラには美しい方が大勢いらっしゃる。そちらの御二方は……」


カナデが一歩前に出る。


「お久しぶりです。カナデ・ヒビキです」

婚約者の(・・・・)シオンと申します」


カナデが恭しく礼をすると、シオンもそれに続く。

ハルトとカナデが軽く動揺する発言の後、シオンは王の半歩後ろに立つラルフに牽制の視線を送る。


「え゛……あああ、すまないいつもと恰好が違うので、驚いてしまった。御二方も楽しんでください。ハルト殿、あとでお時間頂けるかな」


「ええ、それでは後で伺います」


カナデたちは第二王子と話している、というよりは崇められている気もするが、現状況では支障ないので無視する。


「一曲踊るかい?」


ホールの真ん中で婚活に勤しむ貴族の子女たちを見ながらハルトが言う。


「それもいいかもしれませんね。でもその前にあちらの方たちがお話ししたいようですけど」


スズネの視線の先にはこちらに向かってくる3人の男の姿が。


「お久しぶりです、コガネ殿下。私の事を覚えておいでですか?」


3人のうち無駄に金の装飾が着いた服を着た男がハルトに話しかける。

確か、コリンズ侯爵か公爵かそんな名前だったはずだ。


「もちろんです、コリンズ公爵。後ろの方々は?」


「ええ、私の友人のドリス伯爵とアジェール子爵です」


「初めましてお会いできて光栄です」


2人が礼をする。


『アジェールはサイフラ地方に領地を持つ家、ドリスはメンシス国境に領土を持つ貴族です』


スズネから念話で伝えられる。

一体どうやって仕入れた情報なのか。


「少々お話しよろしいですかな?」


笑顔を張り付けた顔で公爵が言う。


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