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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第18章 冒険者たちの練磨
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交差する刃 終 -18-07-


「まだエイダイたちは残ってるのね」


シズネはギブアップを宣言した隊員たちを数えながらつぶやいた。


「しかし、星影が本気出すとは思わなかった……」


空間が裂け、良くわからない闇が見える部分を見ながらカナデがため息をつく。

ちなみに今は命令で縛って半ば強引に落ち着かせている。


「龍使ってくるとか卑怯だぞ!」


「あら?半龍がなんか言ってる気がするけど……」


オトハがそちらに向かって斬撃を飛ばす。


「うおわぁっ!?」


「それじゃあ、さっさと終わらせますか」


「シオン!」


「はい!」


カナデとシオンが同時に駆けはじめる。

視覚できるが、だからと言って躱せるような速度でもなく、その蹴りをまともに喰らう。


「ちょっ、女の子なんだからもっと御淑やかにだな……ひっ!?」


シオンの薙刀がヨウの前髪を直線にそろえた。


「行きます!「させないよ」え!?きゃっ!?」


突然の暴風がシオンを吹き飛ばす。


「シオン!?」


急いでシオンを受け止めに走るカナデ。


「何!?新手?」


「おねーちゃん、ハルトだよ多分」


「加勢するよ」


「そうだね、じゃあ私たちも……っ!?」


オトハの足元から数センチ先の地面に弾痕ができる。


「私の相手もお願いします」


「スズネさん!?」


「せっかくもう終れると思ったのに……」


「おせーぞ、ハルト」


「ごめん仕事が片付かなくてねっ!?」


右側から突如出現した刃がハルトの鎖鎌を完全に破壊した。


そのまま、咽喉を裂こうとする刃をいつの間にか移動したスズネが受け止める。


「……お見事です」


「いえいえ、そちらこそ」


刀を引いて後ろへ下がるカナデ。謙遜するセリフを述べつつも目が笑っていないスズネ。


「大丈夫ですか?」


「まあ何とかね、武器は完全に逝ったけど」


「この二人の参戦はキツイなぁ」


オトハが楽しそうに言う。


「二人じゃないんだなそれが」


「……しまった!?」


シズネが苦い顔をすると同時に、足元に魔法陣が走る。


生命力操作バイタル・オペレーション!」


全快状態のカナデ達の体力が急激に減っていく。

それに対して、エイダイたちの体力が回復する。


「治癒魔法の上位だって、コレ。相手の体力を吸い取って仲間に還元するとか」


離れたところに立つリリが笑顔で手を振っている。


「んじゃ、これで形勢逆転だな」


エイダイたちが武器を構える。

何かを考えているカナデが巨大魔法陣を開く。


「姉さん、10秒でいいから私を護って。シオンはリリさんを抑えて。オトハは遊撃。MPはできるだけ使い切って」


「何をする気かわからないけど、わかったわ」「了解です」「おっけー」


ほとんど0の体力で彼女たちは行動を開始する。


水と氷の魔法を駆使して、徹底的に進攻を阻むシズネと相手の真ん中に飛び込んで掻き乱すオトハ。


偽りの聖剣シュード・ホーリー・ブレイド


シオンの生み出した剣がリリの体を貫く。


しかし、外傷はない。

HPもたり1たりとも減っていない


「この魔法の効果は、5分間全能力を失う事です。それでは」


シオンが去り、リリは立っていられなくなり膝をつく。


「服が、重い……、杖も……」


彼女の今の状態は全ステータス0。MPがいくらあってもINTがないため魔法は唱えられない。


傲慢なる均衡ハティ・プロポーション


カナデの魔法が発動した。


万全の状態まで回復したはずのエイダイたちのHP、MPが凄まじい勢いで0になり、その後回復していく。


しかし、半分に満たない量でそれは止まってしまう。


「全員のHP、MPを吸い上げて、平均して、再振り分けしたの。これで、完全に対等かな?」


「まあ、数で負けてるけどね」


「ためしに必殺技とかやっちゃう?」


「そんなのありましたっけ……?」


「今、武器の状態は?」


「私とカナデさん、オトハさんとスズネさんで四重奏状態です」


「そんな呼び方だったんだ……」


「なに?私だけ除け者?私もほしいな?」


「じゃあ姉さんにも創るね、今度」


「えっと、もういいかな?」


ハルトが魔法を起動しようとしながら声をかける。


「ああ、すいません。それじゃあ、私とシオンで片付けます」


「え、大丈夫なの?」


「たぶん」


「じゃあ、任せたわ」


「ずいぶんと舐められてるな……」


ヨウが文句ありげな顔でつぶやく。


「シオンと2人が一番息が合うので」


「それでは」「行こうか」


カナデとシオンが同時に走り出す。


呆然としているエイダイにカナデが横薙ぎの一閃をヒットさせる。


「うぐっ……」


その空かさず首に爪先をめり込ませ、後ろに回り込み、反対側のこめかみに膝を叩き込む。

その直後、シオンが全く同じポイントを全く同じ手順で攻撃する。


エイダイが地面に沈む。


「さて、次は誰にします?」


カナデが視線を向けるが全員目を逸らす。

魔法的なファンタジーな戦闘ではなく思いっきり物理的な攻撃に軽く青ざめている。


「……エイダイのHPまだ残ってるけど、なんで動かないの?」


「脳震盪じゃないですかね」


ハルトの質問にスズネが冷静に答える。


次なる被害者はヨウが選ばれたようでエイダイと同じようにシオンからの追撃も受ける。


「シオンさんの動きの意味は?」


「たぶん傷口を抉る的な効果があるものだと推測されますが」


カナデが刀を治める。

ヨウのHPは完全に削りきれている。


「この響啼っていうのはヨウジさんが悪ふざけで作った武器効果を全部詰め込んだので、私にもよくわかりません」


カナデが解説を始める。


「今のは、全く同じ手順で攻撃をすることによって後続の攻撃のクリティカル率を上げる効果があるそうです」


「なるほど、この件に関してはヨウジに説教しておくよ。じゃあ、解散だね」


ぐったりしているエイダイを引きずってハルトとスズネが去っていく。


「……え?おわりですか?」


「もう終わりでいいでしょ」


「おねーちゃん、私お腹すいた」


「……なんか、納得いかない」


とりあえず、終わったという事で草原の上で丸くなっていた黒猫を抱き上げて、いつもの街の戻った。


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