交差する刃 下 -18-06-
カナデとエンマの攻防は続く。
他の隊員たちは周りで積み重なって倒れている。まさに死屍累々。
すべて倒したかと思ったが、時折隙をついて剣閃が向かってくる。
エンマではない何者かがいるのか、
「右、襲・氷。左、襲・篠青」
それぞれ、水・氷、風・水の属性を持つ。
イフリートのエンマに攻撃を通すには水や氷が良い。
「くっ!?」
受け損なった刃がエンマの脇腹を掠る。
ただそれだけで2割近く持って行かれる体力。
しかし、負けじとエンマも攻める。
「ソードダンク!」
直上からの叩きつけ。
避けることは容易に思えたが、衝撃波でダメージを負う。
「これは、ちょっと予想外……」
そこへ襲い掛かる剣の一閃。
超感覚で寸前で躱し、
「見つけた……そこっ!」
左手の刀を真っ直ぐ投擲する。
「ぐはぁっ!?」
「カケル!!」
エンマが叫ぶ。
カケルに駆け寄り、容赦なく刀を回収。
「まさかバレるとは……」
「超感覚・神眼・解析を重ね掛けすれば不可視化ぐらいなら破れるみたいね」
カケルが臥せる。
「さて、そろそろね」
「シズネさん!オレが勝ったらデートとかどうですかね?」
「絶っっっ対っ嫌!!」
ヨウの連撃を躱しながらシズネが叫ぶ。
「さすが隊長、清々しいほど下衆だ」
「ああ、そうだな」
「というか、あの中にオレたち混じっても、最悪あのバカに斬られて死ぬ気がする」
「うわぁ同感」
ヨウの一撃がシズネに届く。
「ぅっあっ!?」
「この調子で攻めるぜ!」
ヨウが剣を引く、その瞬間。
硬い靴底がヨウのこめかみにめり込んだ。
「ぬぁぁっ!?」
「姉さん、チェンジ」
「もう少し早く来てほしかった」
「ごめんごめん、再生の領域」
2人のHPが一瞬で回復していく。
「範囲回復なんていつの間に……」
「じゃあ、交代ね」
「オッケー」
ハイタッチを交すと、先ほどと違った相手へと駆ける。
この後戦況は一転する。
「おい、ツバサ。まだ立てるか?」
「うるさい、前を向いてろ」
剣に体重をかけツバサが無理やり起き上がる。
「さすがカナデの配下。そこそこできるみたいね。でも、まだまだ私には勝てないわ」
星影が嗤う。
「あれ、絶対カナデさんより強いよな……」
「タツヤ、避けなさい!」
マナミの蹴りでタツヤがの位置が無理やりずらされる。
頭のあった場所を魔法弾が通過していく。
「うおっ、あぶねぇ。でも、せめてもう少し優しく蹴って!」
「え?ドMなの?」
「ちげーよ!というかお前も前見ろ!」
マナミが攻撃をなんとかかわす。
前方ではモエを中心に攻撃が続き、隙をついてアスカの放つ矢が星影に飛来する。
イーリスとナナミが一番後ろで必死で回復をしているが、そろそろMPに限界が来ている。
既にミサキ、カイト、リゼットの前衛3人が戦闘不能でかなり厳しい状態にある。
ツバサもタツヤも満身創痍だ。
実際問題、さっきから有効なダメージを与えているのはアスカだけだ。
ほとんど隙のない星影に攻撃を当てるのは至難の業だ。
星影と打ち合っていたモエが吹き飛ばされる。
それをツバサが受け止め、イーリスが回復に走る。
星影からイーリスを狙った魔法が打ち出されるが、タツヤが打ち落とし攻撃に出る。
「行くぞ!」
高速の突きを放つ、しかし掠りもしない。
「遅いぞ!」
タツヤのみぞおちに星影のつま先が刺さる。
胃液を吐き出しながら、タツヤは口元を釣り上げる。
「……残念、本命はオレじゃない」
「凍風」
高速の矢が周囲の空気を凍らせながら、一直線に星影の背に走る。
「何っ!?」
無理やり体をひねって、矢を躱そうとするが、かなわず、右肩を貫かれる。
「くっ……私としたことが」
傷口から凍てつき、右腕の感覚がなくなっていく。
数秒で剣を取り落した。
「さすがカナデが一番眼をかけていただけある」
「だが、」
「今の攻撃で場所はわかった」
タツヤの眼から見てアスカが潜んでいるが爆散した。
「さて、では本気で戦おうか」
「どーすっかなこれ……」
目の前に姿を現した紫黒の龍に引き攣った顔で剣を構える。




