新冥王VS元冥王 -17-09-
闘技場の中央、戦闘用の制服に着替えたカナデが立っている。
それに相対するのはバラス。
『それでは実況はワタクシ、スズネがお送りします』
『いやいや、ちょっとまった。急に呼び出されたけど何コレ!?』
『それでは試合開始!』
突然連れてこられ動揺するハルトをよそに試合が始まる。
「今度こそは!」
闇の魔法陣を無数に展開し、一斉に放つ。
『これは凄まじい攻撃ですね』
『大丈夫かなぁ……結界が』
構えていた右手の刀を鞘に収める。
そして、右手をつきだし、無属性の魔法陣を展開する。
「合成魔法・相剋+転移……反転」
カナデに着弾する寸前に白い防壁に飲まれた闇魔法は、その属性を光に変えバラスに降り注いだ。
「なんだそれは!卑怯だぞ!」
光の弾幕を必死で避けながらバラスが叫ぶ。
『元冥王さん小物臭がするんですが』
『それは言ってあげないでよ……』
「合成魔法・重力×100」
重力魔法の魔法陣が次々に重なっていき、カナデの前に黒い点が出来上がる。
そしてそれを打ち出すと……弾けた。
『これブラックホールじゃないですかね』
『え!?ここも危なくない?』
黒い空間が一瞬で周囲全てを抉り取った。
「ホントに殺す気だな!」
だがバラスは生きていた。
「魔法でやった方が罪悪感ないかな、と」
「くそっ……こうなったら」
カナデの足元に黒い魔法陣が開き、カナデを闇がつつんだ。
「盲目の戒めだ。これで見えないだろう」
そういうと、バラスは実体のある分身を数十体作り出した。
『なんですかあのチート魔法は』
『分裂魔法とかあったかなぁ……』
「「「「「「「「「「「「「「「行くぞ!」」」」」」」」」」」」」」」
カナデを取り囲んだバラスたちが一斉に攻撃を仕掛ける。
しかしその攻撃を、普通に躱し、分身を次々と消していくカナデ。
「何故だ!?」
「あ、私、状態異常とか効きにくいんだよね」
「どうやって勝てというんだ!」
『もうそろそろあきらめたらどうですかね』
『男には意地とかがあるんだよ』
「くそ、もう無理だっ」
『あるんですか?』
『あるのかなぁ……?』
さらに分身を量産していく。
もはや数で押す作戦だ。
「ちょうどいいから新技でも試そうかな……」
『おっと、スライムで試し切り感覚ですかね』
『だれかバラスさんに加勢してあげなよ、もう』
刀を抜く。
『あれは、響啼・叢雲ですね』
『叢雲……』
『天叢雲剣を錬金して作ったらしいです』
『なんて贅沢な使い方……って、神器でしょ!?それいいの!?』
『ハルトさん、今日もテンション高いですね。STRは私とシオンさんの分合わせて1.331倍ですね』
『半分でもオーバーキルだと思うよ?というか僕もう帰っていい?』
「刀スキル極めたら技も進化したみたいで、」
2つの魔法陣が刃を滑っていく。
「襲・桜」
刃は白い焔を纏う。
斬りかかってきた分身を剣ごと焼き斬り、背後からの飛来した魔法を斬る。
左右同時の攻撃を、しゃがんで躱し、ウィンドミルの要領で刃を蹴り飛ばし、そのまま足を断つ。
「襲・菊」
再び魔法陣が刃を滑り、薄紫の光を纏わせる。
バラスも必死で分身を増やすが、既にカナデが片付ける方が早い。
「襲・椿」
纏う光が真紅に変わる。
大量に居た分身もあと十数体というところだ。
「くっ……」
最後の分身が切り捨てられる。
「降参?」
「本体を避けて攻撃していっただろう」
「まあね。でどうする?」
バラスは無言で剣を抜く。
「魔法剣VII:HELL」
バラスの剣が真っ黒に燃え上がる。
「襲・尾花」
カナデの刃に魔法陣をが走り再び色を変える。
薄い青の光を纏う。
「うおおおおおおおお!」
斬りかかるバラスの剣へ向かって、刃を振り上げる。
キン、という高い音を立ててバラスの剣が砕け、魔力の爆圧が起きる。
『そこまで、勝者カナデ』
『誰が直すのこれ』
クレーターがいくつもできた闘技場を見下ろしながらハルトがため息をつく。
「お疲れ様でしたー」
カナデが普通に闘技場を去っていく。
地に伏せるバラスの元に観戦していたエイダイが歩み寄った。
「あれは、なぁ……」
「ううう……」
エイダイが何故かバラスと仲良くなったのはこれが切っ掛けらしい。




