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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第17章 冥府の王と光闇の女神
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王の帰還 -17-08-

カナデが自分のベッドで目を醒ましたとき、日は既に西に傾き始めていた。

睡眠時間は9時間というところか。思ったより熟睡したみたいだ。

よほど心配されていたのか、全く離れようとしないシオンは今もカナデにしっかりと抱きついている。

起きて隣にシオンがいるという光景に何故か慣れ始めているので驚くことはなかった。


枕元には丸まった黒猫が寝息を立てている。

あの後すぐに、どこかへ飛び去ってしまった星辰。それに対して行くところもないのでついてくるという星影を連れて部屋に戻ったのだが、ベッドを見つけるとすぐに猫化して丸くなった。彼女?曰く、小さい体の方がエネルギーを使わずに済むらしい。

冥界からの門をこじ開けたのはそれなりに負担だったらしい。ひと眠りすれば治るらしいが。


さて、珍しくシオンよりも先に起きたのはいいが、シオンにしっかりホールドされているため起き上がることができない。

少し悪い気もしたが、シオンを起こすことにした。


「……、あ、カナデさん……おはようございます」


「おはよ。といってももう15時前だけどね。そろそろ起きようか」


「あ、はい、大丈夫です。落ち着きました」


本当に大丈夫か怪しいところもあるが、とりあえず布団から出る。

特に予定もないのでラフな格好(レイさんプロデュースのやたらと肩を出したがるトップスにパンツを合わせただけ)に着替えたが、良く考えたらこの格好この世界でどう映るんだろう……。


シオンもいつの間にか着替えてリビングでお茶を入れていた。

とりあえず、ベッドの上で寝ぼけている黒猫を抱えてリビングへと向かう。


「その猫、冥龍ですよね?」


「え?ああ、コレね」


まだ眠そうに欠伸をする黒猫を見る。


「うちの朔夜も猫になれませんかね?」


「どうだろ?」


「できるんじゃない?」


何度目かのあくびをしながら星影が答える。


「今度やらせてみましょう」


「シオンは猫好きなの?」


「はい。犬派猫派で争うつもりはありませんが」


そういうと星影を抱き上げて膝に乗せる。

顔を少し綻ばせながら、黒猫を撫でる。それが気に入ったのか、星影もなどを鳴らしている。


「さて、食事……っていう時間でもないか、星影、街見て回る?」


「あ、久しぶりに地上見てみたい」


黒猫はシオンの膝からするっとおりて、黒髪の女性に変わる。

シオンが若干残念そうな顔をしている。


「そういえばなんで冥界(むこう)では人化しなかったの?」


「自慢するわけじゃないけど、バラス(あいつ)に言い寄られるのが嫌だったから。数千年間人にはなれないっていう設定で通した」


「……お疲れ様です」


活気あふれるスペーラの街を目をキラキラさせながら歩く冥龍。そして、ひとこと。


「これ、文明開化とか進歩とかそういうレベルじゃないと思うんだけど!?つい最近バラスの鏡を盗み見て見た街よりも文化のレベルが違う……」


「まあ、この街だけだから安心して」


「このレベル差は安心できない……さすが転移者の街」


「あれ?あなたその辺の事情知ってたの?」


「ええ、一応は」


職人区の方へと歩いていくと、何やら人だかりができていた。

自警団が出張っているようなので喧嘩でもあったのだろうか。


「……なんか人多いから、ここはまた今度にしよっか」


「そうですね」


「なんかいやな気配がするし、そうしよう」


3人が来た道を戻り始める。


「そういえば、急に飛び出しちゃったからあの子たちにも心配かけたよね?」


「そうですね」


「星影、学園の方行ってもいい?」


「私も興味あるから構わないけど」


「それじゃあ、違う通りから……「待て!アルモ!」!?」


つい最近聞いた声でこの場ではまずい方の名前で呼ばれた。

とりあえず無視して歩く。


「無視をするな!そこの黒髪の女!」


「人違いです」


つい最近殺したはずの声で呼ばれる。

実はトラウマとかになってしまっているんだろうか……?


隣で星影がやっぱり……とつぶやいている。


「人違いなものか!私の“眼”を欺けると思うなよ!めが……っ」


状況を察したエイダイに物理的に黙らされる。


「面倒くさい予定が入ったみたいね……」


「そうですね」


「はぁ……」


エイダイに短文でメッセージを送り、本部へと向かう。


魔法使用不可の取調室へと入ると、エイダイが男を連れて中へ入ってきた。

猫に戻った冥龍は不機嫌そうにしている。


「で、コイツ誰?」


「私は……「あ、良いからお前は黙ってろ」……むぐっ!?」


“発言禁止”と書かれたテープを口に張り付ける。これも一応魔法具なのでしっかりとした効力がある。


「というか、その襟巻みたいになってるネコ重くねーの?」


座ったカナデの肩の上で不機嫌そうにしている猫を指す。


「少し暑いけど、重さは特に……で、何の話だっけ?」


「ああ、コレ誰?」


「冥王のバラスさんです」


「んんんん、んんんん……!」


懸命に唸るバラス。


「なんでその冥王がここにいるんだ?」


「そうなんですよね。殺したはずなんですけど」


「は!?」


星影が欠伸をしてテーブルの上に降りる。


「こいつ戦神の加護使って死を免れたみたいだけど、その戦神からの攻撃で神格を全部そぎ落とされたみたい。今は一般人よりちょっと強い魔人」


「なるほど……で、お前はなんの用なんだ?」


乱暴にテープをはがす。


「いっつ!?……冥龍、私に力を返せ」


「嫌」


「お前の独断で冥王を変えて良いと思っているのか?」


「独断じゃないし、天龍がいいって言ったし」


「天龍?」


「うん、天界に世界神のじーさんと二人で住んでる老龍」


「で、コイツは女神誘拐の罪で投獄しとけばいいのか?」


「さあ……」


「どうしても冥王の座を返さないというなら、真剣勝負で……「負けたからこうなってるんでしょうが」っ……」


黙り込んだバラス。

椅子から立ち上がり、何をするのかと思うと、


「もう一度勝負をお願いします!」


まさかの土下座だった。


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