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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第16章 龍と女神と学びの園
172/307

研鑽の成果 -16-07-

校舎の廊下をショウゴの後に続いて歩く3人。


「どこへ向かっているのでしょう?」


「もうすぐ着くさ」


廊下の端の大きな扉の前に立つ。

そして、4度戸を叩き返事を待つ。


「どうぞ」


「失礼します。件の3人を連れてきました」


「ああ、待ってたよ。座って座って」


呼び出したのはどうやら学園長。式の時にも思ったことだが、予想よりも数段若い。

確かキクロとかいう名前だった気がする。

緊張を顔に出す2人と涼しい顔をしているマツリ。


「いや、そんなに緊張しなくても……とりあえず悪い話ではないから。フィリーネ、お茶入れてあげて」


「私は貴方の侍女でも妻でもないのだけど」


「助手でしょう?もしくは部下でしょう。とりあえずお願い」


「仕方ないわね」


ため息をつきながら白衣を着た女性が奥に消える。


「君たちを呼び出したのは、単位が既に一定数を超えたからなんだけど……ほんとは30人ぐらい呼び出す予定だったんだけど思ったより王国の貴族の子たちが雑魚で……おっと、話が逸れた。それで、君たちは今、クラスⅠに所属しているわけだけど、現状ですでに進級できる単位があると。まあ、用件だけ言うと、今すぐ進級できるけどする?って感じかな」


フィリーネの運んできた紅茶を受け取り、いったん落ち着くキクロ。


「試験等はなしで、ですか?」


「進級試験みたいなものはないけれど、一つだけ条件があってね。今日昼からの『魔法演習Ⅰ』の授業で単位認定をしてもらえればっていう条件」


「でも、一年授業を受けないと無理なんじゃ?」


「無駄な演習をさせるほど意味のないことはないから。それに、こちらとしても時間は限られてるしね。基礎の基礎ができているなら『魔法演習Ⅰ』なんて余裕だと思うし。まあ、がんばってみてよ。進級する特典としては今より多くの授業をとれるようになることかな。早く強くなりたら飛び級するのがお勧めだよ」


そのあと魔導工学理論について語り始めたので、ショウゴに連れられ外に出た。


「出てきてよかったんですか?」


「問題ない。3時間ほど縛られたいなら聞いてくるといいが。さて、もういいぞ、解散だ。オレも昼から授業があるんだよ……ああ、その前に団長に怒られに行かないと……」


そういうと、ショウゴはすぐにその場から立ち去った。


「えっと……どうしよっか」「うん……」


顔を見合わせる双子。


「ルイザ・カードさんとルイズ・カードさんですね?」


「え、はいそうですが」「なんで知ってるの?」


「ふふふ、天女様もといカナデ様の事を調べた時についでに。情報も力ですから」


「そうねんですか……」「えっと……プライバシーとか……」


「ああ、申し遅れました。私はマツリ・アシカビです。よければお友達になってください」


「アシカビって」「ヤマトの皇族の?」


たしか父がそんなことを言っていたような……。


「はい、そうです。まあ、この街ではみな平等ですから気にしないでください」


「マツリがいいというなら」


「でも、皇族と友達になれるとは思いませんでした」


ルイザとルイズが顔を見合わせてから微笑む。


「お二人の事は名前で呼んでもいいですか?」


「はい」「全然問題ないです」


「それではよろしくお願いします」


お互い何故か礼をしあった後に笑いあう。


「そういえばお昼……」

「マツリも一緒にどうですか?友達を紹介します」


「あ、よろしくお願いします。ルイズさんの刀術は葦牙流ではないようですがどこの流派ですか?」


「え?あの、カナデさんから教えてもらった、たしか九王流とか……」


「え!?そうなんですか!?」


少し物騒な話をしながらも、姦しく食堂へと向かう。

食堂の前ではアナとオリーヴが2人を待っていた。


アナが二人を見つけると笑顔で手を振る。ついでに尻尾も振る。


「用事終った?」


「そちらの方は?」


「マツリ・アシカビです。よろしくお願いします」


「よろしくね、マツリ!ボクはアナ」

「オリーヴ・ノーマンです。よろしくお願いします」


マツリも紹介できたので、5人で食堂へ入る。

昼時で、人も多いのだが、テンションは低い。


「何この空気……」


「世間舐めてる貴族育ちのお坊ちゃんたちには、いい薬だと思うがな」


前からやってきたロクグが笑う。


「なるほど……」


「半分は武術、半分は魔法だったみたいだけど、自信と実力が伴ってない奴らばかりだな。双子は合格か。さすがカナデ殿の弟子」


「私たちは田舎貴族ですからね」「少しぐらい戦闘ができないと危険でしたし」


「そうかそうか、ネム殿の娘も合格したようだな。あそこの皇族はどうして戦闘力高いんだろうな……」


「ロクグ教官はヤマトおう……じゃなくて、マツリのお母様と知り合いなんですか?」


「ネム殿というよりは、アイツの親父さんに剣を習ったからな」


マツリも知らなかったようでへーという顔をしている。


「そうだったんですか……それで「おいお前!」は?私ですか?」


「違う、いや違わないか、でも違う。その黒い奴だ」


先ほど剣を燃えないゴミに昇格させていた王国の一人が取り巻きを連れて立っていた。

ルイズの隣のマツリを指さす。


「ああ、私の事ですか。何か用ですか?」


「お前のその剣、買ってやろう。いくらだ?」


「はぁ……スペアはあるので構いませんが。高いですよ?それと、あなたのような素人が持っても使いこなせないかと」


「たかが剣だ。剣術基礎はすでに習得済みだぞ?僕は」


「ボクも基礎は取ってるよ?」


そんなにすごいことなのかと言う顔でこちらに視線を向けるアン。

ロクグは傍観しているが、いざとなったら助けてくれるだろう。マツリがこの程度の相手に後れを取るとも思えないが。


「私は剣術の課程修了してますが」

「私もです」


目の前のめんどくさそうな奴を刺激しないように小声で会話するルイズとマツリ。


「ええ、それでは、この剣の代金ですが即金で水晶貨300枚頂きます」


「は!?ふざけているのか!?」


「ふざけてません。神器のレプリカの上に鋼に緋々色金、妖鬼の角に、装飾は蟒蛇の革と金ですから」


「単位が大きすぎてわからないんだけど、どれぐらい?」


アナの質問にロクグが答える。


「3000万Gだから、王都に割と立派な屋敷が建つだろうな」


「なるほど、実家の屋敷を手放すか刀をあきらめるかという感じなのかな?」


「ならば隣の奴のものでいい!いくらだ!?」


「え!?売りませんよ?というかあなた如きでは持てませんよ?たぶん」


「というか、カナデ殿から詳細聞いたが、ミスリルと龍鱗、それに宝石を大量に使って相当の魔力練り込んでるらしいから、その刀一振りで王国程度なら買えるぞ」


「えええ、そんなすごいのこれ」


「知らないで提げてたんですか……」


マツリも少し呆れ顔だ。


「く、いいからよこせばいいのだ!」


無理やり悠遠の柄を掴み、鞘から抜き出すが、その重さに取り落とす。

真っ直ぐ落ちた悠遠だったが、何の抵抗もなく床に刃が入り、突き刺さる。


「だから言ったのに……」


「少し驚いただけだ!次こそは……ん?」


悠遠を握った右手に黒色の魔力がゆっくりと広がっていく。


「なななななななんだこれは!?」


「なにアレ?」

「さあ?とりあえず私じゃないけど……」


ルイズが悠遠を引き抜くが、特に何の問題もない。

対して男子生徒の方は既に肩辺りまで浸食されている。どうやら激痛を伴うらしく、大声でわめいている。


「魔力を練ってあるといっただろう、許可されたもの以外が触ればそうなる。今すぐ8番隊の医務室にいくか、その腕落とすか、そのまま死ぬか好きなのを選べ」


ロクグにそう言われ泣きながら走り去った。


「やはりカナデ殿の刀は凄まじいな」


「……私はちょっと怖いです」


腰に提がる刀を眺めながらルイズはつぶやいた。


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