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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第16章 龍と女神と学びの園
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優位の弁明 -16-05-

入学式の直後、来賓たちが集められた。

もちろん襲撃に関しての説明だ。


「それで、王国の貴族たちが何人か連れて行かれたってことは、そういうとなんだろう?」


ステラが気まずそうにしている第2王子に視線を送りながら言う。


「ええ、まあ。でも、今回のは王家とは関係ないようなのであんまり睨まないで上げてください」


ハルトが苦笑いでフォローする。


「すまなかった。我が国の貴族がここまで腐っているとは。奴らに関してはもちろん爵位を没収以上の事はさせてもらう……しかし、彼らの子女は学園に残していいのか?」


「ん?バカなのは親だけでしょう?まあ、子供の方もバカなら速やかに処分するまでですよ」


ハルトが明るく答える。


「それで、そこの怪しい4人はなんなのだ?」


何処かの国の貴族の一人が声を上げる。


「はぁ……これだから、信仰を失った愚か者は」


ステラがため息をつく。

直後、その男が水に包まれた。


「ごぼっ!?」


周囲から悲鳴が上がる。


「……時雨、やめてやれ。死ぬぞ」


「でもね、星辰。あの下等生物が私の主を貶したのよ?」


星辰に宥められて、渋々といった顔で指を鳴らすと、男を包んでいた水が弾ける。


「はぁ、これでいいかしら?」


「ごほっ、ごほっ……キサマ何をする!私は、侯爵家の人間だぞ!?」


「人間の話なんて知らないわ。私は龍よ?」


「はぁ……時雨、抑えて」


「申し訳ありません、クティ様」


時雨がシズネの後ろに下がる。


「ハルト、フロールには連絡行ってないのか?」


「いえ、王に一応報告はしましたが……侯爵家如きには関係のない話かもしれませんね」


「今回の事に関しては、テレジア侯爵家当主から正式に謝罪させます」


「これだから、フロール人は」


メンシスの貴族の一人がため息とともに小声で言葉を漏らす。

男がそれに食いつこうとするが、王子に睨まれて黙る。


「とりあえず、王族以外は出て行ってもらおうかな。正直邪魔だし」


「私は戻るわ」

「それでは私も」


水色の髪の女と顔を隠した女性1人がその場から消えた。


「私も一度着替えて来るね」

「我も仕事に戻ろう」


そういうと残った2人も別々に消えた。


そして、数秒後にカナデが現れる。


「はい、ただいま戻りました」


「お疲れ、カナデさん」


「お疲れ様です。ハルトさんがバカなこと言ってすみませんでした」


スズネが頭を下げる。


「いいよいいよ、これがカミサマの仕事かって言われると怪しいところだけど」


カナデの視線に目を逸らすハルト。


「カナデさん……いや、我が神アルモ様……!」


何故か涙を浮かべる王子。


「お久しぶりです王子。タツヤが会いたがってましたよ?」


「ああ、そうでした。あの男と決闘の約束を……」


そういうと、スケジュールを確認し始めた。


「水神クティと水龍、無神アルモと無龍。なかなかの迫力だった」


「そう?」


「私は神格が大きい相手がすぐわかる。能力(スキル)の関係上な」


なるほど、納得するカナデ。


「しかし、全国から集めたものだな……王国、神国、公国、エルフの里に帝国からも来ているのか……」


「トニトルやフランマからも学生は集めたんですが、距離があるのでしばらくかかりますね」


「ヤマト皇国からもか……手広くやっているな」


「誘った覚えはないんですが、来る者は拒まずと言った形ですね」


「え!?ヤマトからも来てるんですか!?……いやな予感してきた」


「?……そういえば皇室からの受勲蹴ったって言ってたね」


「何をやっているんだカナデは……」


ステラが呆れ顔をする。


ノックの音が響き、アスカが入ってくる。


「すいません、ヤマトからの学生に見破られました」


カナデは壁に手をついた。


「そんなに落ち込まなくても……」


「もう、王族とか皇族とかいいです……」


王子が少しさびしそうな顔をした。


「とりあえず、マツリさん入ってください」


「やっと見つけました、天女様」


「はぁ……一応言っておくけど、天女とかではないよ?」


「そうでしたね。カナデ・ヒビキ様ですね。我が国を御救い頂きありがとうございます」


「まあ、気にしないで。私を探すためにわざわざ学園に?」


「ええ、天女様の元で武芸に励めばきっと力を得られるはずだと、皇が」


「皇様と知り合いのなの?」


「ええ、母です」


「……アスカちょっと。後、ハルトさんも」


「はい」


アスカを呼び寄せ壁の方を向く。


「絶対お姫様だってわかって入れましたよね?」


「まあ、そうだね」


「私はさっき知りました」


「絶対厄介なことになりますよ?」


「……ドンマイ」


「スズネさん、ハルトさんが今すぐ挙式したいそうです」


「ちょっ……謝るからそれは勘弁して」


ハルトが全力で頭を下げる。

向こうではステラがマツリに話しかけている。


「さっきから言っている天女とは?」


「はい、教皇様。ヤマトの伝承では“11人の天女が地上の世界を治める”という話がありまして、母の神託にカナデ様の姿が映りまして」


「なるほど、天女と女神が全く同じ存在なら正しいだろうな。やはり、以前言っていた通り、女神は11柱か……」


「どうやら、ヤマトにもちゃんとした捜査を入れた方がいいかもしれないね」


「捜査って……」


「結局、カナデさんは天女ってことでいいんですか?」


「まあ、残念ながら」


「須佐の天女様と綿津見の天女様がいらっしゃるようですね。カナデ様は前者のようで」


「素戔嗚尊と綿津見神か……雷に建御雷神を当てるなら戦神という扱いでもいいのかな……」


それ以前にどっちも男神な気がするんだけど……。


「そんなの割とどうでもいいんですけど……とりあえず、私が天女もとい女神だってことは秘密だから」


「心得ています」


笑顔でそう告げられ、部屋を出るアスカとマツリを見送る。

その後に一つため息をつくカナデだった。


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