始まりの式典 -16-04-
初日は入学式とやらを執り行うそうで、すべての生徒が講堂に集められている。
来賓席にはどこかの国の貴族やカード伯爵や教皇様が座っている。
若い女性が壇上に上がり拡声魔法で告げた。
「これより、第1回入学式を行います。それでは、学園長お願いします」
すると、ステージの中央にローブを着た男が出現した。
「皆さん、ようこそ。これから君たちが得たい技術・力・魔法を好きなだけ学んでいってください。それでは「全員動くな!!!!」ん?誰かな私の高尚な話を邪魔する間抜けは」
講堂の入り口付近、怪しい男たちが10人ほど並んでいる。
「……こんなイベント用意したかな?」
「ハルトさん、ふざけてないで何とかしてください」
前の方では男女が言い争っている。片方は司会をしていた女性だ。
「え?これどういう事?」
「たぶん、ここにはかなり要人居るし、これが失敗に終わればこの街の名を貶めると思ったテロ?」
「わー!どうしよ」
学園長が全く気にせず話を再開する。
「先ほども言った通り、この学園では……」
「おら、悠長に喋ってんじゃねーよ!」
男たちの一番前に立っているリーダーらしき男が剣を構えながら吼える。
そのとき、彼らの後ろの扉から人が入ってくる。
「あら?何をしているの?」
「こんなイベントあったかな?」
「私はなかったと思うけど」
「ふむ、それならば、コイツらは賊だと判断していいのか?」
「いいんじゃない?」
ベールのようなものをつけているため顔はわからない女性が2人。それと水色の髪の美女と白髪竜眼長身の男。
「ならば、我がやろう。主の手を煩わせるほどでもない」
「建物は壊さないようにね」
「承知した」
男が前へ出る。
「何だ貴様ら!」
「頭が高いぞ、平伏せ」
男たちが床に叩きつけられた。
「星辰、もういいわ、あとはアレが片付けるから」
後ろにやってきた自警団の男たちを指す。
そのまま、彼女たちは来賓席とは反対側の席に着いた。
「……さて、気を取り直して、行こうか。フロール貴族の皆様方は後で拷問があるそうなので係りの者の誘導に従ってくださいね。それでは話す気も失せたので、私の話はこの辺で」
学園長?が壇上から消える。
一体どういう仕組みだろうか。そして、あの4人はいったい何者だろうか……というか一人見覚えがあるような気がするけど。
「えー、それではオリエンテーションを行いますが、その前に一つショーをお見せしましょう」
目の前が光に包まれる。
「何!?」
「え!?」
「何が!?」
悲鳴らしき声も聞こえる。
「え?何これ?というかなんで3人とも落ち着いてんの?」
「これは転移魔術です」
「害はないはず」
「なんで3人ともそんな魔法見たことあるの……」
目の前の景色が変わる。
「それでは、開始してください」
コロシアムの真ん中を2人の少女が駆ける。
「なんか始まったけど」
「「シオンさん?」」
「オトハ様!?」
コロシアムに注目する。
『今度は負けません!』
『今度も負けないよ!』
オトハが戟を構え、シオンに突っ込む。
それに向かって、シオンが大きく薙いだ。
オトハが衝撃に吹き飛ばされる。
その瞬間オリーヴが小さく悲鳴を上げた。
『え!?何今の!?』
『薙刀の特殊スキルでリーチを武器の終端より伸ばせるんです』
『そんな技聞いてないけど!?』
『それは、カナデさんに必死に口止めしましたから』
『でも、種明ししてくれたらこっちも対策できるよ?』
オトハが戟を振り上げ、
『光装・陽溢衝』
勢いよく振り下ろした。
斬撃が地を割り、光を吹き上げながらシオンに迫る。
しかし、シオンは焦る様子もなく、立っている。
多くの人の目には攻撃が直撃したように見えたが、
『外したかぁ……てことは』
オトハが上を見上げる。
オトハの視線を追って、何もない空を見上げる。
『弾幕張ってあぶり出しかな?』
オトハが右手を突き出し、虚空に魔法陣を描く。
その数、数百。
『ホーリーショット×300発射!』
空を覆うように光の弾が撃ちだされる。
『きゃっ……』
そのうちの一発が掠り、不可視化が解ける。
黒い翼を生やしたシオンさんはゆっくりと降下する。
『聞いてないですよ!いつの間に多重起動を!?』
『ちがうちがう、これは連続起動っていうスキル。同じ魔法しか使えないし消費大きいから使いにくいんだけど』
シオンが地面に降り立ち、翼をたたむ。
『あれ?もう飛ばないの?』
『飛行中はあまり細かい動きができないので』
『へー……じゃあ、そろそろ本気でいこっか』
『そうですね』
それを遮るように司会の声が響く。
『もう結構です。退場してください』
『えー!?まだ決着ついてないよ!?』
『オトハさんの陽溢衝で結界がイカレました』
『また!?ちゃんと補強する気あるの!?』
『……オトハさん、とりあえず下がりましょう』
シオンがオトハを引きずって退場する。
「一瞬だったけどすごかったね」
「シオンさんの攻撃が全く見れなかったけど……っていうか飛んでなかった?」
「翼生えてたね……」
「獣人的なものではないと思うけど……」
アナもわからないようで、考え込んでいる。
前方では学園長がため息をつきながら結界を修繕していた。




