先端の街 -16-03-
「おはようございます。ルイザさん、ルイズさん」
「おはようオリーヴ、と……アナは眠そうだね」
「うん……ねむい」
耳をたたんだまま目をこするアナ。
「まずは……武器の整備からだねあと装飾品とか普段着とか見ておきたいけど」
「えっと……一般武器はロレンソ武器店がいいって」
「行ってみようか」
ギルドの隣を抜け商業区を真っ直ぐ抜ける。
街は既に冒険者や観光客たちでにぎわっている。
商業区を抜け、職人区に入ると観光客の姿は減少し、冒険者がメインとなってくる。
「ロレンソ武器店……はあそこだね」
「……すごく、高そう」
「とりあえず見るだけ見てみる?」
「……ええ」
透き通ったガラス製の扉を開ける。
「いらっしゃい……っと学園生か。悪いがウチの武器は手が出せないかもしれんぞ」
奥のカウンターに座っていたまだ若い男がそう告げた。
「えっと、あなたが店主さんですか?」
「ああ、そうだ。ロランド・ロレンソだ。よろしくな」
弓のコーナーに駆け寄ったオリーヴは目を輝かせて商品を見た後、肩を落として戻ってきた。
「素晴らしい品なのですが……やはり高いです」
「そっか……」
「予算はどれぐらいだ?」
「えっと、一応、水晶貨を用意してますが……」
「100000か……あー、それぐらいならまけてやりたいのは山々なんだがなぁ。一人値下げすると全員しなくちゃいけなくなるし……」
「……ロランドさんでしたよね?」
「ん?ああ、そうだが?」
「何か理由があればまけてくれるんですか?」
「ああ、それなりのな。それにウチの名前が入った武器を学園で使ってくれればそれなりに宣伝にもなるし」
「じゃあ、これで……」
カナデからの紹介状を手渡す。
「!……そういえば、カナデ嬢がなんか言ってたな。まあ、素材の提供とかそれなりに恩もあるし、これなら便宜を図る理由としても十分だ」
「え?え?」
「お前らはいいのか?」
「えっと、私たちはコレなので」
腰に差した刀を見せる。
「なるほど、それはヨウジのとこに行ってくれ。で、とりあえずエルフの嬢ちゃんに合わせるとすると、世界樹と龍鱗、ミスリル糸あたりだな」
「そんな貴重素材を!?」
「まあ、あまり品質の高い物ではないし、これぐらいなら水晶貨一枚で売れるが?」
「じゃあそれを!」
交渉成立したようでカウンターに向かうオリーヴ。
「え?何出したの?」
「ん?紹介状です」「知り合いからの」
「はえー……すごいねそんな知り合いがいるなんて」
「まあ私たちがすごいわけじゃないんで気にしないでください」
「そうそう」
満足気な顔のオリーヴを引き連れ、次に店に。
目的地はすぐに見つかったが、かなり良い位置に店があるのに、全く客が入っている気配がない。
「えっと、アレですか?」
「ええ、カナデさんの地図通りなら」
「え?今にも潰れそうな位閑古鳥鳴いてるけど……」
「と、とりあえず行ってみよ?」
ルイズが扉を開ける。
「ん?お客さん?珍しい!」
「え?あの人自分で客が珍しいって言わなかった?」
「アナ、少し黙って」
「えっと、あなたがヨウジさんであってます?」
「うん、そうだよ。“悠遠”持ってるってことは、君たちがカナデさんの言ってた双子だね。しかし、それをあげちゃうとは……僕もロクグさんもほしいって言ったのにねぇ」
「……えっと、渡しませんよ?」
「大丈夫大丈夫とったりしないって」
明るく笑うとすっ、と真面目な顔になった。
「で、今日のご用件は?」
「えっと、一度メンテナンスしてもらえと、あ、これ紹介状です」
「りょーかい。料金は白銀貨1枚だけど、今日はいいや。刀・短刀……それとそこの犬耳の子が提げてる爪もうちでしか取り扱ってないから気を付けてね?」
「わかりました」
腰のに差していた刀をカウンターに置く。
「うん、いつみてもいい刀だ」
刃を抜き、じっくりと観察していく。
「大きな外傷はないけど、カナデさんこないだこれでゴーレム斬ったらしいから耐久値だけ戻しとくね」
一瞬、刀が青白い光に包まれる。
それを見て頷き、鞘に戻す。
「はい、じゃあ、次は短刀だけど……これ誰からもらったの?」
「モエさんです」
「はぁ……っていうことはカナデさんが改造したのか……またこんな規格外なものを……」
特に問題なくすぐにルイザの手に短剣を返す。
「そこの爪も見ようか?」
「お願いします」
「んー……手入れはされてるけど……相当古いねコレ。もうすぐ壊れるかもしれないから新しいの買うお金溜めてた方がいいね」
「やっぱりそうですか……」
「こんにちわー……って、ヨウジさんの店に客がいる!?」
扉を開けて入ってきたのはエルフ?の少女。
「失礼な!戟なら修理終ってるよ、まったく、龍斬ったあとに連戦とかするから欠けるんだよ……」
「そんなこと言われても、仕方ないじゃん……って、オリーヴ!なんでこんなところにいるの?」
「オトハ様!」
オリーヴが満面の笑みでオトハに寄っていく。
「……そういえば学園に招いたんだっけ、ゴメン、紹介状ぐらい書けばよかったね」
「いえ、それでしたらお二人のおかげで」
オリーヴが視線をルイザとルイズに移す。
「えっと、初めまして?」
「オトハ、この二人、例の双子」
「ああ、お姉ちゃんがなんか言ってたね。ルイザとルイズでしょ?私はオトハ。カナデお姉ちゃんの妹でこの街の副代表とかやってる。よろしくね」
「妹?」
「ん、ああ、種族は違うけど両親一緒だよ?いろいろあってね。それより、オリーヴはロランドのところで弓買ったの?」
「ええ、水晶貨1枚で」
「高いねー」
「相場からみたらその弓のスペックで水晶貨はかなり安いと思うけどね。それじゃあ、オトハ75000Gね」
「高いって!」
「補修用のミスリルが高くて、文句はシェリーに行ってほしいところだけど」
「いやいやそれでももう少し何とか……」
「いや、こっちも生活かかってるから」
「もっとまともな武器作れば……」
ヨウジとオトハの問答が終わりそうにないので、彼女たちはそっと店を抜けだした。




