新たな生活 -16-02-
ルイザとルイズは自分たちに割り当てられた部屋に入る。
相部屋らしいのだが、双子で一部屋という形になった。
「とりあえず、無事に合格できてよかった……ギルドランクもEとれたし」
「E取れたら王都の騎士ぐらいなら余裕で倒せるよ、ってカナデさん笑ってたね」
3部屋あり、リビング&ダイニング&キッチン+各寝室となっている。
カナデ曰く、学生寮の中でもかなり広い部屋らしい。
「この部屋も空間圧縮の魔法使ってるみたいだね」
「父さんたち入学式は見に来るんだっけ?」
「絶対来るらしいこと言ってたけど……」
「それより、夕食とかどうする?」
「寮の1階に食堂があるらしいよ。何か見たことないメニューがたくさんあってすごかった」
「いつの間に行ったの!?」
「ナナミさんが火魔法の試験のあと連れて行ってくれた」
「その時、氷魔法の試験受けてたから……ルイザだけずるい」
「そっちの教官はどんな人だったの?」
「ん?マナミさんって言って、良い人だったよ?」
「そうなんだ。まあ、カナデさんの部下なら悪い人でもないだろうし、弱いわけもないよね……」
「じゃあ、夕食に行こうか」
部屋を出る。母親によって半ば無理やり料理を覚えさせられたため、料理できないことはないのだが、材料もないので揃って食堂へ向かう。
「……結構人多いね」
「あ、ロクグ教官」
「なんだ、カナデ殿のお気に入りの双子か」
「剣聖がなんでこんなところに……」
「食事ですか?」
「ああ、今日は夜間警備もあるのでな」
「……そんなことまで」
「それに、ここの食事は安いが味はかなり良い」
「そんな気はしてました」
「そこのジドウハンバイキで食券を買ってカウンターに持っていくんだ」
「わかりました。ありがとうございます」
100近くあるメニューはどれも黒銀貨一枚程度の値段。
「確かに安い……でも料理名だけじゃわからない」
「うん、そうだね。とりあえず食べれないものは出てこないと思うし大丈夫じゃないかな?」
そう言うとルイザは“本日のオススメ”ボタンを押す。
「おすすめされてるし、変なものは出てこないでしょ」
「そうね」
ルイズもそれに続く。
受け取った食事はパンにスープ、サラダと丸い揚げ物の乗ったものだった。
「何のフライだろうか……」
「さあ?」
ためしにルイズがナイフでサクサクした衣を割る。
すると中からは肉汁がじわっと溢れ出し、皿の上に広がった。
「中、カナデさんが作ってくれた“ハンバーグ”みたいになってる」
「ほんと!?」
「うん。美味しい」
「はやいって!」
すぐに食べ始めたルイズを追うようにルイザも口に運ぶ。
「……とりあえず食べ物には不自由しなさそうね」
「あの……」
「「ん?」」
声の方へ、双子同時に振り返る。
「すいません。席が空いて無くて」「相席良い?」
「あ、どうぞ」「そういえば4人席だったね、ここ」
2人の少女が席に着く。
「えっと、202のオリーヴよ」
「同じく、202号室のアナ・チャイルズ。よろしくね?」
「私たちは双子で、私がルイザ」「私がルイズです」「501号室です」
オリーヴと名乗ったのはエルフの少女。
アナと名乗ったのはイヌ科の耳を生やした獣人の少女だった。
「といっても、ボクたちみたいなのはあんまり優遇されないのはわかってるんだけどね……」
アナが耳をへにょっとまげてため息をつく。
「オトハ様に誘われたので来ましたが、やはりエルフだと……」
「私たちはメンシスの人間なのであまりそういうのは気にしませんが」
「それにこの街にはエルフも獣人もたくさんいるし」
「そうですね。驚きました。こんなところに同族がたくさんいたなんて……」
「神国だと獣人は対等らしいね……ボクは王国出身だから」
「まあここではすべてが対等ですから」
「威張りたかったらギルドランク上げるしかないからね」
「……ところでお2人は何を食べているんですか?」
話ながらも食事を続ける2人にオリーヴが尋ねる。
「ん?本日のオススメ……“メンチカツ”だったかな?」
「ボクもそれにしたよ。美味しいの?」
「ええ、基本的にここの料理にハズレはないかと」
「私もそんな気がする」
ふーん、というと早速カツに取り掛かるアナ。
「エルフってやっぱりお肉ダメなの?」
「いえ、食べられないわけではないですけど、個人的にあまり得意ではないというか……」
シチューをスプーンですくいながら答えるオリーヴ。
「わわ、おいしいよコレ」
何故かアナが悶えているが、気にせず食事を続ける。
「ああ、双子。まだいたかよかった」
見知った声に振り向く。
「?……どうされました?ロクグ教官」
「ああ、カナデ殿から地図を渡すように頼まれていてな。すっかり忘れていた」
じゃあ、というとロクグは食堂から出て行った。
「地図?」
「この街の地図ですね……」
アナとオリーヴが覗き込む。
“武器のメンテナンスはこの店に行ってね”とカナデの字で書かれている。
他にもいくつか自分の行きつけの店が記入されている。
「さすがカナデさん……ありがとうございます」
いないカナデに礼を言うルイズ。
「明日行ってみようか。ギルドでクエストも受けてみたいし」
「そうね」
「二人は何使うの?女の子らしく短剣とか?」
「爪なんて使ってるあなたが女の子らしさを語りますか……」
「私はこれ」
腰に差していた、短刀をテーブルの上に置く。
「短剣?」
「いや、ちがうんだよ。短刀っていう武器」
ルイザが鞘を抜いて見せる。
薄い紅色をした刀身が、熱を帯びている。
「すごい綺麗……」
「ルイズさんは?」
「私のは大きいから部屋に置いてる」
「ああ、意外と大きいもんね。そういうオリーヴは?」
「私は弓です。そろそろ新調したいんですけどね……」
「じゃあ、明日見に行く?」
「あ、ボクも行く!」
「じゃあ、明日9時ごろに学園の門の前で」




