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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第15章 水の神殿と魔の兆候
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王の剣 -15-08-

「ガウェイン、やたら張切ってるじゃねーか」


同僚のアルバールの声に振り向く。


「当たり前だ、ラルフ様が修行?とやらに出たおかげで臨時とはいえ、今はオレが副団長。そりゃ、気合も入るさ」


「しかし、魔物の大量発生なんてなぁ……ビリードの方は全く抑えきれなかったみたいでにスペーラの連中が全部片づけたらしいぞ」


「ははは、そんなヘマはしないよ。大群って言っても数千単位だろ?オレたち騎士団の敵じゃないさ」


「報告です。ビリードの森より侵攻した魔物群の数は推定15万。アント系10万、スパイダー系2万、モス系2万、キャタピラー系1万です」


「じゅうご……!?1500の間違いではないのか!?」


「いえ、間違いなく15万です」


「それならば、プリマの方面の分の兵をこちらに……」


「プリマの方面にも10万の魔物群が確認され、すでに交戦中です」


「しかし、15万なんて……団長はなんと?」


「交戦せよ、と」


「くっ……しかし……この数では……」


「隊長!見えました!」


虫型モンスターの群れがうぞうぞとやってくる。

確実に今晩夢に出るだろう。


団員の中には嘔吐している者もいる。


「こちらの手勢は?」


「2隊で300ほどです……」


「おいおい、どうすんだよコレ」


「うるさい!アルバール!……」


「交戦を開始しました!」


ずらっと並んだ騎士たちの刃は、その硬い甲を通ることなく砕ける。巨大な魔物たちにその盾は意味をなさず、押し通られていく。


「おい!ガウェイン!」


「黙れ!今、考えている!」


あっという間に

前方の陣は切り崩され、集団は彼らに迫る。


「くそ、こうなったら撤退しか……」


「すまない、今戻った」


見知った声が、前に駆けていく。

間違いなく、修行の旅とやらに出ていた第二王子・ラルフ・フロールだ。


その手には、極東の片刃の剣を握り、魔物の群れに飛び込んだ。


「これぐらいの敵に屈していては、カナデさんはおろか、あの部下の男にも勝てないな!」


刀を握った手に魔法陣を描きだす。

刃が火を纏う。


「《重ね・火焔》。やっと自分の力を試せそうだ」


押し寄せる虫の波を次々に斬り伏せていく。


「凄まじい……」


「しかし、王子一人では……」


「あれ?あのストーカー王子頑張ってるじゃん」


ハイエルフの少女が楽しげに笑いながら言う。


「いつの間に刀など……」


槍の様な武器を背負った銀髪の女が恨みを込めた目で王子を見る。


「まあ、努力は認めますけど、まだまだですね」


エルフの男が頷きながら目の前の光景を見つめる。


「なんだ貴様ら!!?」


「あの王子以外戦力外だから下がらせなさい」


「貴様ら、急に何を……!?」


ハイエルフの少女の号令と同時に、一斉に異種族の混じり合った部隊が駆けだす。


個々が一撃で数百の虫の息の根を止める攻撃を次々と放つ。


「久しぶりっすね、第二王子」


「ああ、カナデさんの部下の……」


「そうそう、ちょっとはできるようになったみたいじゃん」


「それはどうも……」


「今度決闘しよう、まあ、カナデさんは渡さないけどな!」


高速で降下する、巨大蛾の頭を刺し貫く。


「とりあえず、一回休んだらどうだ?魔力も体力ももたいないだろ?」


「あ、ああ……」


戦場を見ると、両手に奇妙な武器を構えたハイエルフの少女が笑いながら周囲のモンスターを一掃していた。


「オトハさん!カナデさんすぐこっちに来るそうです!」


「はやっ、もう終わったの!?さすがお姉ちゃん!」


「よんだ?」


オトハのいる虫の群れのど真中にカナデは現れた。


「これは……姉さん大丈夫かな……」


「エンマもいるし大丈夫じゃないかな?お姉ちゃん後ろ任せたよ」


「はいはい」


突然現れたカナデの姿に少し感動しながら。ラルフは自分の陣営に戻る。


「ラルフ様!」


「早く城門まで騎士を下げろ!彼らの邪魔になる!」


「しかし……」


「現に、ここにいても役に立ってないだろう?」


「……はい」


渋々といった様子の騎士たちをさがらせ、戦場に向き直る。

既に8割の敵は駆逐されている。自分が倒すことができたのはほんの少しだという事を痛感し、拳を握る。


「さて、父上に褒賞の相談をしないと……」


そんなラルフをよそに、戦闘は続く。


「おねーちゃん!火魔法全員で、全力で」


文としては成立していないが、言いたいことはわかった。


「シオン!カイト!ナナミ!モエ!ツバサ!アスカ!ミサキ!焼き払うよ!」


「「「「「「「了解!」」」」」」」


自らも火の魔法陣を展開する。

オトハと3番隊の面々も準備はできたようだ。


一斉に街道は火炎に包まれる。

5分もの間勢いは衰えることなく燃え続けた火が、弱まるころには虫たちの姿はなかった。



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