争いの続き -15-07-
「おねーちゃん!」
「あ、ただいまオトハ」
「ただいまー」
「なんでそんな軽いの!?それで、シズネお姉ちゃんは勝ったの?」
「勝ったよ。ね、時雨」
「ええ、これからは貴方が水の女神……そうですね名前はクティ。銘は〈水鏡の女神〉〈浄罪の女神〉〈雨露の女神〉の3つです」
「ステータスとかは?」
「レベルアップもあるけど、称号効果で平均A-まで上がったかな」
「やっぱり女神に選ばれるのがお手軽なパワーアップ法?」
「とりあえず、ここでの用事は終了でいいかな?」
「はい」
「じゃあ、僕はアマート首相に神殿について説明を……」
「ああ、それなら少しお待ちを」
時雨がハルトを制止し、柏手を一つ打つ。
突然、足元から振動が伝わってくる。
「何!?」
「何したの?時雨」
「もう少しすればわかります」
「いったい何が……」
「……もしかして浮上してる?」
「そうです」
マーレの地にあるとされながら、その存在を確認されなかった水の神殿が、マーレから少し離れた海上に浮上した。
神殿を覆っていた、球状の水の膜のような結界が崩れていく。
「また、大胆な事を……とりあえず、オトハ達は海竜とかの素材剥いで持ち帰って。7番隊は悪いけどエイダイたちの様子見にビリードに」
「了解」「了解です」「私たちは?」
「一番隊は帰っていいよ。神殿は水龍・時雨に任せて……『ハルト!』……エイダイ?こっちは今終わったけど……」
『こっちも終わったつもりだったんだが……今度は神殿の方……フェレウス洞窟の方でゴーレムが暴れ出したらしい、それと、森から虫モンスター共が王都とプリマに向かって大行進してみたいで騎士団は大混乱だ』
「ゴーレムぐらい何とかできない?」
『ゴブリンとはいえ10万近い大群だったから正直無理だ。HPもMPもポーションも枯渇してる。それより、フロス神殿の方、星辰が出てこないのはなんでだ?』
「カナデさん、神殿がぶっちゃけヤバいんだけど、星辰は?」
「あー……今、他の龍の所在確認に走らせてて……自分の神殿ぐらい自分で守るので任せてください」
「オトハ!悪いけどすぐに一度戻って、王都に飛んでくれ。シズネさんは……「大丈夫」……じゃあ、エンマと合流してプリマ側に。さすがに、神殿浮上させておいて放置は無理だから僕は首相の所に行くけど、極力早く合流する。それまでは指揮権はオトハに」
「了解」
「時雨、とりあえずハルトとスズネ以外スペーラに飛ばせる?」
「任せなさい」
時雨を中心に瞬時に広がった魔法陣はあっという間にはじけて、彼女たちを街まで送り返す。
「イーリス、姉さんたちを回復させて「わかりました」シオンは残りメンバー集めて全員オトハの指揮下に入って「了解です」ツバサはエイダイに連絡取って、その後、ケントに限界までポーション卸してもらって「了解」じゃあ、私は神殿に」
「いいの?隊員借りて」
「ゴーレムぐらいなら一人で十分。後でそっちに合流するから」
そういうとカナデは転移門に駆け込んだ。
神殿前の転移門から出ると、そこは騒然としていた。
とりあえず、自警団の制服から適当な装備に代える。
騎士と冒険者がひしめき合っているその前線へと飛び込む。
「まったく、洞窟でおとなしくしてなさいよ……」
ゴーレムの巨体を蹴り飛ばす。
「向こうも忙しいみたいだから、3分で終わらせるわ」
両刀を構える。
氷の系統を付与されたその刃からは冷気が流れ出している。
事態を悟った冒険者たちと自警団員(おそらく4番隊)が騎士団を無理やり下がらせる。
もちろん彼らが巻き込まれないようにだ。
起き上がったゴーレムはカナデに向けて拳を落とす。
その拳を踊るように避ける。
そのままゴーレムの懐に潜り込み、刃を奔らせた。
「凍華狂奏」
カナデの姿が消えたと思うと、無数の斬撃を受けたように仰け反り続けるゴーレム。
あっという間にゴーレムは砕けた氷像へと姿を変えた。
刀を鞘に納め、神殿へと歩く。
騎士団の連中が、ひっ、っと声を上げて下がる。
「……なんで、騎士団がいるの?」
「わ、我が国の領土を守るのは……」
「ここは、私の神殿。勝手に領有しないでくれるかしら?って、この話は既にライナルト王にしてあるはずだけど。宣告通りあとで、龍に王都潰させるからそう伝えておいて」
信者たちの保護を行っていた司祭たちが神殿から様子を見に出て来、カナデを見つけるとすぐに平伏する。
騎士団員たちの顔色がどんどん悪くなっていく。
「アルモ様!ありがとうございます」
「別に礼を言われることでもないのだけど……とりあえず、一般市民の救護優先してね?騎士団の連中は放置でいいわ」
「ありがとうございます」
「さて、エイダイ。居るのはわかってるからでてきなさい」
「いつからわかってた……」
「私、神眼もってるんだよね」
「……はぁ、で、ゴーレム瞬殺した女神様はオレに何か用か?」
「とりあえず、ここの収集任せるわ」
「りょーかい。それぐらいならできる。お前はこれからどうするんだ?」
「オトハの手伝い」
「わかった。おい、ヨウ手伝え!騎士団の連中?知らん!適当に何とかしろ!」
「……じゃあ、任せた」
再び、転移門へと駆け込んだ。




