緑の防衛戦線 -15-04-
「エイダイ、ハルトはなんて?」
「ああ、今ちょうど神殿にたどり着いたとこだから無理だと」
「と、なると、オレたちで抑えるしかないよな」
いつになく真剣な顔でヨウがつぶやいた。
「……お前が真面目だと違和感半端ないな」
「いくらオレでもこんな時にふざけねーよ」
ため息をつきながらヨウが答える。
「それで、今動かせるのは?」
「お前のトコとウチぐらいかな。5番は残しとかないと、警備がいるし……クララに無理言って8から2人引っ張って、あとはギルドにクエスト出すしかないよな……」
「1、3、7の待機してる奴らを借りることは無理か?」
「できなくはないが、どの隊長とも連絡がつかないから勝手につれてはいけないか」
「じゃあ6は?」
「ハルトに応答ないし、貿易始まってるから港を開けられないだろう」
「じゃあ、フリーの奴らをかき集めるしかないか」
「そうだな……しかし、時間が足りない」
「それぐらいならオレに任せろ。2番の指揮権オレに預けてくれ。1時間ほどなら耐えてみせる」
「いけるか?ゴブリンと言えども数は万単位だぞ?」
「そろそろカッコイーとこみぜとかないとな、じゃあ先に行く。行くぞお前ら」
「しゃーねーな」
「まあ、珍しくまともなこと言ってるし」
「ずっとこの調子だったらモテるんじゃねーの?」
「無理だからこうなってんだろ」
「まったく……」
「途中から悪口だろ、聞こえてんぞ」
「タロー、気を付けて」
「わかった」
アンリと共に待機していたシルヴィアがタローに声をかける。
「……おい、アイツを間違えてやってもいいぞ」
「りょーかい」
「やっぱ、いつもの隊長だった」
「ただ気持ちはわかる」
「悲しいけどな」
「ああ、哀しいな」
「早く行けよ……」
ヨウが2番隊と4番隊を引き連れて転移門へと走る。
「さて、人集めましょうか」
「ん?お前も行けばよかったのに、カケル」
「一人じゃ厳しいでしょう」
「手伝ってくれんのはいいんだけど、アイツら大丈夫かなぁ」
ヨウたちがビリードに到着した時、ゴブリンの軍勢はすぐそこまで迫っていた。
騎士たちも出張っているようだが、限界が来ているようだ。
「スペーラ領自警団だ。加勢に来た、通せ」
「なんだ貴様らは」
「自分の街でも守っていろ、邪魔をするな!」
「いいから通せ!お前らの実力不足で国民を殺したいのか」
「な、実力不足だと」
「タロウ、構わなくていい、エイダイが来るまで時間かせがねーと」
「……ああ」
「行くぞ、魔法剣Ⅳ:Storm」
「とっておきだ、魔法剣Ⅳ:Fenrir」
「あれ?あのバカ2人普通に強くね?」
「き、きのせいじゃね?」
「いつの間に魔法剣Ⅳまで」
「というかタローのやつ、彼女意識してやがるな」
「なんかイラつくな」
「2番の奴らも順調に斬ってるし」
「俺らもやるか」
「下っ端には下っ端の仕事があるしな」
「時間稼ぎぐらいできないとモテないよな」
「魔法剣Ⅲ:Crater」
「抜け駆けかスンミン!」
「いいから戦えや!」
ヨウがゴブリンを薙ぎながら叫ぶ。
既に数千の子鬼を斬った気がするが、一向に減る気配がない。
「タロー!冥府の門だ!」
「だが、あれは時間かかるぞ!?」
「それぐらいオレ一人で何とかする!」
ヨウは剣を構えなおす。
「魔法剣V:Sylpheed」
「「「「「「「「「「「V!?」」」」」」」」」」」
剣を構えたまま、洞窟の中に飛び込む。
そして振り下ろす、烈風が吹き荒れ、巻き起こった風がコブリンたちを吹き飛ばす。
生み出された幾千もの風の刃が周囲のものすべてを光の塵になるまで斬り刻む。
「もう十分だ下がれ!」
「……MP使い切った、うごけねぇ」
「うわー!バカ!誰か拾って来い!」
「あー!しまらねーなぁぁ!」
一番AGIが高いシュンがヨウを抱えダッシュで離れる。
「冥府の門!!」
門が開く30秒間の間、ゴブリン達は減り続けた。
「これでも、やっと半分ってとこか?」
「半分!?」
「おい、持ちそうか!?2番隊!?」
「ヨウとタローのおかげでかなり減ったが、さすがにこの数は……」
「もう一回冥府の門を……」
「だが、時間かせぎ切れるか……」
「20人いるんだぞ?」
「20にいてもさっきの魔法剣Vぐらいの火力がないと撃ち漏らしが多すぎる!」
「隊長、もう一回行けるか?」
「MPポーションあるか?」
「いや、大技連発してたからもう底ついた」
「じゃあ、無理だ」
「おい、どうすんだよ!」
「魔法剣V:Gungnir」
光の一閃が地面ごとゴブリンを消し去った。
「早かったじゃん?」
「おう、ギリギリみたいだったからな。よし、行くぞお前ら」
『応!』
「……エイダイにいいとこ全部持ってかれたんだけど」
「……ドンマイ」




