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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第14章 既知の神と世界の真相
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自然の猛威 -14-07-

船はすでにトニトル海路に入り、明日か明後日の明け方ごろにはトニトルの王都へ入る。

カード伯爵に聞いた話によると、トニトルは魔法技術が非常に高い国らしい。竜人などの亜人が多く住んでいるらしい。竜人と亜人の違いは龍の血の濃度らしいが、そんなもの見てわかるものなのだろうか。うちの半龍(エイダイ)を見る限りはあまり人と変わらない気もするが。


すっかり懐いたルイザとルイズとお茶をしながら午後を過ごす。二人とも非常に勉強熱心だ。一瞬、小さいころのオトハと重なったが、あの子は姉さんと同じで何でもできるタイプの子なので教え甲斐のないことこの上なかった。シオンも妹ができたみたいだと喜んでいた。


軽く体を動かした(カナデ&シオンVS・1時間耐久)後という事もあって、それぞれくつろいでいるようだが、一人だけ様子がおかしかった。


「……アスカ?船酔い?」


「……すいません。なんかさっきから揺れ酷くなってません?」


そういわれればそんな気もしないことはない。ここまで大型の船だと揺れなんてあまりないと思ったが……。とりあえず青い顔のアスカに治癒魔法をかける。


「たしかに揺れてる気も……また海賊とかですかね?」


「ちょっと騎士さんに聞いてくる」


モエが扉を開けて、やはり外に控える騎士に話を伺う。


「……なんか嵐に直撃したって」


「マジですか……」


「え?沈むの?」


「カナデさん怖いこと言わないでください」


ノックが響く。返事を待たずに騎士が飛びこんできた。


「失礼します!100年に一度クラスの大嵐に直撃したらしく、船の一部が破損しました!」


「……え?」


「カナデさん時間回帰できます?」


「どこが壊れたの?直すから案内して!」


「え?あ、はい!」


こっちです、という騎士に連れられて船の底部へ降りる。


「どうやら、波に流されてかなり浅いところまで来てたようで……」


大きめの穴からは滾滾と海水が流入している。

すぐに時空魔法の魔法陣を展開し、修理を開始する。

カナデが魔法陣を展開している間の応急処置として、残りの4人が全力で凍結させている。そのせいか、周囲の気温は氷点下を切っている。


カナデの魔法陣が完成し、船は修復を始める。30秒ほどで修理は終わり、氷を処理する。

依然として船は激しく揺さぶられているが、とりあえず沈没の危機は免れた。


しきりに礼を言う船長?を適当にあしらって、部屋へ戻る。


「強化の魔法ぐらいかけてあると思ってましたが、案外脆いですね」


「魔法耐性とかは強いけど物理ダメージに対する衝撃はそこまで考慮されてなかったみたい」


そのとき船が大きく揺れ、隣を歩いていたモエがバランスを崩す。

思わず反射的に抱き留めるカナデ。間に合ったのは《超感覚》の効果だろうか。


「大丈夫?」


「大丈夫です……カナデさんだいぶ着やせするタイプですね……」


胸に顔をうずめたままそんなことを言い出すモエ。


「そんなことはないと思うけど……」


「そんなことありますよ?」


シオンも自分の胸をとカナデを見比べてため息をつく。

とりあえず、なぜか頑なに離れようとしないモエを引きはがして部屋に戻る。


海水で濡れ、さらに少し服が凍っている5人を見てルイザとルイズが驚く。


「ななな、なにがあったんですか!?」


「大丈夫、ちょっとお風呂入って来るけど」


濡れただけならすぐに魔法で乾かせば良かったのだが、若干凍っていたため生活魔法で乾かすことができなかった。そこが微妙に不便なところである。


カナデ達が浴室へ向かおうとしたとき、また船が大きく揺れた。

60度近く傾く。


「えええ……これはまずいんじゃない?」


「カナデさんなんで冷静なんですか?」


「そういうシオンさんも何で冷静なの!?」


カナデは特にあわてる様子もなく、魔法陣を展開する。

壁に張り付いていた全員の負担がなくなる。


「え?」


「……何の魔法ですか?」


ナナミが尋ねる。


「重力魔法?とりあえず、重力の向きを変更して床の方向に重力が働くようにしてる」


「その魔法で船ごと浮かせたりできませんか?もしくは船ごと転移させるとか」


「さすがにそれは無理かな……」


ナナミの提案に苦笑いで応える。聞き慣れない魔法に少し混乱している双子。依然として船は大きく揺れ続けている。


「本気でまずいな……」


「転覆しそうですね……」


「いっそ5人で海凍らせますか?」


「やってもいいけど目立ちすぎるなぁ……とりあえずルイザとルイズを伯爵の所まで送ろう」


2人の肩に触れると転移で移動する。そして、伯爵の部屋にも重力魔法の魔法陣を敷いて部屋へ戻る。


「さて、どうしようか」


「全員で一斉に零度の楽園スティーリア・テリトリー発動すれば海ぐらい余裕じゃないですか?」


「私たちは大丈夫でも他の乗客凍死しますよ?」


あ、わすれてた、と素で言うナナミ。忘れちゃダメだろ。

船の揺れは収まらず、時折木が軋む様な音が聞こえる気がする。


「最終手段としては……転移かなぁやっぱり」


「魔力足りないんじゃなかったんですか?乗客だけ転移させるとか?」


「一回に20人運ぶとしても結構時間かかるし。行はいいとしても船が動いている以上帰って来るのに時間かかるんだよね……それまでに沈んだらダメだしね」


「カナデさんより魔力高くて転移使える人なんていませんしね……」


「あ」


「どうかしましたカナデさん」


「一人だけ該当者が……」


「誰ですか?」


「呼んだか主」


「「「「ええっ!?」」」」


急に現れた白髪の男に驚く4人。


「この船ごと近くの島でもなんでもいいからとりあえず転移させて星辰」


「わかった」


星辰を中心に巨大な魔法陣が広がる。

そして、魔法陣が弾けると同時に揺れが少しおさまったように感じた。


「とりあえず近くの島の港に転移しておいた」


「ありがと」


「気にするな。それより神殿に顔を出してやってくれ、司祭が肖像画なり銅像なり作りたいらしい」


「……神殿には近いうちに顔出すけどそれは断っといて」


星辰はすぐに転移して消えていった。


「まさか龍を呼び出してくるとは……」


「え!?あのカッコいいの龍なの!?」


「どういうこと!?」


「話には聞いてたけど見たのは初めてだなぁ……」


シオンの発言にモエ、ナナミ、アスカがそれぞれの反応をかえす。


「まあ全員助かったからいいでしょ?」



次回から閑章にはいります。

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