暴け真実 -14-02-
「さて、と。カナデから報告があったから、臨時で会議を開く。今回の議長はギルド代表であるオレが行う」
エイダイが宣言する。
テーブルについているのは3姉妹以外のメンバー。
「まったく……お前が何かやらかしてたのはわかってたが、まさかカミサマと組んでやがるとは」
「ホントはばらすつもりなかったんだけどね。で、何が聞きたいの?カナデさんから伝わった通りだと思うけど」
「そうだな。最初に聞いておくが、お前は333人すべての名前がわかるか?NPCとそれ以外が」
「わかるよ。NPCといっても、プレイヤーの作ったユニットに自立AIを入れただけだからね。元のプレイヤーの行動データにないようなことをすると混乱するよ。ヨウがナンパしてたまに女の子がぶっ倒れるのはそのせいだね」
「アイツ地味に役に立ってたのか。というかわかるって言ったよな。まさか全員分の名前覚えてるとか?」
「はは、まさか。リストあげようか?」
代表者全員にドキュメントファイルが送信される。
「一応NPCは333人の勇者とあまり交流を取らないように設定されてるけど」
「………自警団員なんかは全員プレイヤーのようだな」
エンマがリストと名簿を照らし合わせながらつぶやく。
「組合の方は……結構NPCが多いね」
「まさか、生産プレイヤーがやたら多いのはそのせいかしら」
ヨウジとレイが小声で話し合いを行っている。
「まあ、各組織に選ばれるような人間は大体プレイヤーだから」
「それでも、相手がNPCだったとわかったっていうのにショックを受ける奴らは結構いると思うぞ」
「あんまり口外しない方がいいのかもね。ログアウトすればわからなくなるだろうし」
「一応NPCたちは個人情報を出さないようにプログラムしてるよ」
「まあこの話はいったん置いておこう。このままじゃ終わらない」
エイダイが一度話を止める。
「犯行理由はわかったとして、方法……もいいか。お前ら名簿見たらわかるだろリストの218番」
「なるほど、御曹司様か」
ヨウジがすぐに答えを出す。
「御曹司?」
「レイさんはご存じないですか?コガネグループは結構世界的に有名ですよ。うちの父も何度かCMで呼ばれたことがあります」
「……クロエのお父さんの方が気になってきた」
「彼女のお父さんは俳優のクロード・ヒューイットだよ?うちの車のCMに何度か出てもらってる」
「………お前のほかにそんな有名人が混じってるとはなぁ」
「まあ、レイさんが有名人なのは知ってたけど」
「ハーゼンバイン家も結構名家だったはずだけど?」
キクロがびくっと肩を震わせる。
「……なんで動揺してんだ?」
「バレてないと思ってた?」
「まあ、正直そうですね。日頃の行いからとても名家の生まれだとは思われないだろうと安心してたので」
「……無茶苦茶やってる自覚あるならやめてあげなよ。ヴィクターくたびれてきてるんだから」
「おい、お前ら脱線するな」
エイダイが再び制止をかける。
「といっても、これ以上聞くことあるか?」
エンマがエイダイに問う。
「……なんかあったか?ヨウジ」
「え!?そこでオレに振るの!?」
「やっぱ3姉妹がいないと締まらないわね……」
「代わりの人員を補給する?上橋九姉妹とかいうのがいるらしいよ」
「……マジ?NPCじゃねぇのそれ?」
「いや僕の記憶が正しければプレイヤーのはず」
「いったい何か国から人集まってんだろこれ……」
「日本アメリカイギリスイタリアスペインドイツロシア中国韓国の9か国?名前から判断できるのはそのあたりかな」
キクロが予測を立てる。
「まあ、中東なんかはまだ混乱してるからね。このタイプの娯楽はあんまり売れないかな」
「確かカナダ出身の奴がいた気がするな」
「というかそろそろ解放してくれない?整理しないといけない資料が多くて……『……え?カナデさん?トニトルに神殿あるらしいから探してくるって?え?ちょっとまって聞いてないんだけど…………もとからその予定だった!?ちょっと?!明後日には帰国の予定じゃ……話聞いてる!?おーい……』
「……なんかあったのか?」
「えーっと……要約すると、もう一国周って来るからしばらく帰らないって」
「うわぁ……」
「新しい神殿の情報が?」
「ああ、嵐の都トニトルに浮遊神殿っていうのがあるらしいって天照が教えてくれたって」
「オトハもまだ今日の連絡来てないんだろ?」
ハルトはため息をつく。
「シズネさんも来てない」
「シズネなら、図書館で母の日記を見つけた!って連絡があったが?」
エンマが淡々と告げる。
「仲良いのはいいんだけど、そういうのは僕にも連絡よこすように彼女に言っといて」
『333人の勇者の皆さんにお知らせします。7番隊隊長代理のツバサがメンシスにて闇の神殿を発見しました。ただいま7番隊が交戦……っとダメだったようですね……』
突然鳴り響いた街内放送は後味悪く、切れた。
「さっきのスズネちゃんだろ?絶対知ってるよなNPC事」
「それも名簿見たらわかるだろ?幼なじみなんだよ……」
「……意外と口硬いんだな」
「驚きでしょ?それよりも『ツバサ君。何があった?』
『神殿に入った途端護衛兵がほぼ無限に湧いて出て、あっという間に轢殺されました』
『龍にたどり着くのも一苦労か……『オトハ、神殿のガーディアンには数的に絶対勝てないから帰ってきな「忠告が遅い!!」……なんだ死に戻りしてたのか……」
「あ、でも倒すの諦めて奥まで特攻したんだけど、龍なんかいなかったよ?」
「こちらも確認できませんでした。といってもあまり奥までは入っていませんが、巨大生物が全く確認できないというのもおかしい気が」
オトハと共に会議室に入ってきたツバサが報告する。
「……僕たち嘘の情報つかまされたんじゃないよね?」
「……さあな。というか女神に騙されるってどんな悪役だよオレら」




