異界の社 -14-01-
船室をそのまま利用できるという事なので、宿などは取らずに一泊。
カード伯爵たちは名所を見て回るらしいが、私たちが最初に目指すのは神社。
着物風の服を着る人々が街を歩いている。フロールやメンシスよりもたくさんの種族が入り混じっている。3割ぐらいが獣人のようだ。
「さて、道案内ぐらい雇おうかと思ったけど、その必要はないみたいね」
港からもわかるほどの朱の大鳥居が山にそびえたっている。
「そのようですね。じゃあ行きましょうか」
江戸時代程度の文化レベルなのか、長屋のような造りの家が多い気がする。川沿いには5分咲き程度の桜が咲いている。
桜の木持って帰れないかなぁ……。
「樹魔法で挿し木すればできますよ?」
「あ、なるほどね。その時はイーリスに手伝ってもらおう」
神社までの直線を歩く。レイさん作の着物のせいかやたら注目されている気がする。
「カナデさんが美人だから目立ってますよ」
「そんな馬鹿な……」
「なんかキラキラしたエフェクトかかってるみたいに見えてると思いますよ。というか私にもちょっと輝いて見える」
ナナミがまぶしっ、とかやっている。
「どっちかというとシオンみたいにスレンダーな美少女の方が着物は似合うと思うけど」
「そんなことないですよ。カナデさんには劣ります」
「ていうか二人ともすごく目立ってるからそろそろ自覚しましょうよ」
アスカの言葉を訂正するなら、目立っているのは2人ではなく5人なのだが。
そんなこんなをしているうちに鳥居に着き、参道へ入る。
「どこにいるんだろうか」
「とりあえず一番奥の社まで行ってみましょう」
軽く山登りをすること30分。一番奥の人気のない社にたどり着く。
「ここにいなかったら私怒っていい?」
「いいと思います」
社の戸を開けようと近づいたところ、勝手に扉がスライドした。
「……自動ドア?」
「残念ながら違うぞ」
見上げると巫女服を着た女性が立っていた。
「えっと……あなたが天照?」
「え!?アマテラス!?」
何も聞かされていないナナミとモエが動揺する。
「まあそういうことになるの。まあとりあえず社の中に入るとよい」
「失礼します」
板張りの廊下を進み、畳の敷かれた部屋へと入る。
井草の香りがとても懐かしい。
天照は部屋の上座に座る。
「さて、何の話からしたものか……ヘシオドスから大部分は聞いてると思うのだが、まずはお主等をこちらの世界に落とした理由から話すかの」
「それに関しては、何も聞かされてないんですが」
「ふむ……魔王復活によるこの世界の滅亡が私たちの世界の滅亡につながるから、という理由でお主等333人の勇者をこの世界に派遣した。これでよかろう」
「え!?ちょっと待って!?333人?50万人ぐらいいるんだけど?」
「は?お主等ハルトから何も聞いておらんのか?派遣勇者の補助として50万人程度のNPCを世界に書き加えておいた」
「え?ちょっとどういう事かわかんないんだけど……とりあえず後でハルトさんにいろいろ吐いてもらうとして……」
「お主等をこの世界に落とした手順を説明するとだな?ヘシオドスからめつぼう魔王復活が近いことを聞いた私が、ハルトとコンタクトを取り、世界を魔王ごとVRMMOとかいうシステムに落とし込み、そして、有能な333人のプレイヤーを勇者として世界に配置した。お主等の仕事は魔王の討伐でそれが終われば私が速やかにろぐあうと?させてやる」
「本当に333人もいるんですか?その割には混乱小さかった気がするんですが……」
シオンが質問する。
「残りの499667人がそれなりに落ち着いていたら混乱も小さくなるらしいぞ?集団心理?とかいう奴だそうだ。といっても、333人も特殊な奴らばかりだからな」
「特殊………」
「まあ、お主等がこの世界に呼ばれた理由はわかったか?」
「はあ……わかったような、わからないような」
結局この世界はゲームだけど、ゲームじゃなくて……。
「他に聞きたいことはあるか?この世界については私はほとんど権限を持ってないから何もしてやれんが……この世界にいられるのも光の女神の席が空いている間だけになるのぅ」
「席?」
「世界によって神様の数は決まっておる。まあ、我々の世界はニッポンとかいう国のせいで神様も大量生産大量消費だがの」
「んー……特に聞きたい事もないかも……魔王倒したら帰れるのよね?」
「それは私が保証しよう」
「天照さんが光の女神として門を開くまで居続けることはできないんですか?」
「それは私も考えていたんじゃが、現在進行形でお主の妹が光の神殿を攻略しておるし、そもそも私はこの世界の龍に認められたわけじゃないから門を開くことはできんの」
よし、光の神殿はオトハに任せよう。
「他の神殿の場所とかは?」
モエが尋ねる。
「知ってたら教えてやるが、この世界の事は私もよく知らんのだ。ただ、トニトルという国に浮遊神殿?と呼ばれるものがあるようじゃな」
トニトルならこの後行くから好都合。ついでに神殿を探してみるか。
「さて、もう質問はないか?後の事はハルトから聞き出すといい。まあ、せっかくここまで来たのだから土産ぐらい持たせてやろう」
そういうと、どこからともなく太刀を取り出し、カナデに手渡した。
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天叢雲剣(レプリカ) (error)
種別:刀
STR +99999 INT +99999 AGI +99999
装備時物理ダメージ無効・魔法ダメージ無効
無+++++ 光+++++ 闇系統の対象にダメージ10倍
障壁無効 物理耐性効果無効 再生無効
使用時に毎秒100ポイントのMPを消費する
与えたダメージの250%のMPを吸収する。
対象に状態異常:聖罰(30秒間全能力損失)を付与
使用回数制限:1分
※譲渡・売却・破棄・不可
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「………………………」
「使えるであろう?」
「……いや、これは正直……ゲームという形をとる以上はこんなチート武器」
レアリティの所もerrorになってるし……。
「ちなみに受け取った以上は返却もできないから」
「ちょっ……っていうかこの武器絶対悪ふざけでしょ……」
「……カナデさん何貰ったんですか」
「なんだ、天之尾羽張とか布都御魂の方が良かったか?ただ、私の立場的にはこれが最良なのだが」
「……ああ、何貰ったか大体わかりました」
「どこで使えばいいのこんなの……」
では、魔王を倒したら迎えに来るからの、と告げると、霧のようにほどけて天照はゆっくりと消え去った。
「とりあえず言いたいことはたくさんあるけど、ハルトさんを問い詰めるとこらから始めようか」
「……そうですね。私もそれがいいと思います」




