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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第13章 旅立つ姉妹と和の国
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戦場の侍 -13-02-

「すいませんでしたカナデ様」


「いいよいいよ。これぐらいしかすることないし。それより給湯室というかキッチンってある?」


「一応執務室のとなりに簡易なものがありますが……どうなされるんです?」


「ちょっと暇つぶしにお昼でも作ろうかと思って。シオン手伝ってね」


「了解です」


シオンを連れて二階に上がろうとしたとき、後ろから声がかかった。


「嬢ちゃん、ちょっと待ってくれ」


「……え?あ、はい私ですか?」


驚いた顔で振り返る。周りの冒険者(地球産)はなぜか殺意を込めて振り返った方向を見ていた。何やってるんだ君たち……。


「あんたホントに代表者なのか?とても強そうには見えんが……。ああ、すまない。俺はロクグという。ここのランク付けだとD+ってとこだな」


……こちらの人間なら英雄クラスだ。転移者の弱い方とならまともに張り合えるだろう。

よく見ると歴戦の戦士を思わせる使い込まれたプレートや刀……刀!?私以外では初めてだ。


「一応本当ですが。すみませんね貫禄がなくて」


「いや別に不快に思っているわけではないんだ。その若さで本当にここの者たちを束ねられるなら是非試合ってみたいなと」


「別にかまいませんが……戦神の加護は?」


「一応あることはあるが……」


「カナデさんのSTRなら一撃でロクグさんの体力の半分は持っていきますよ?」


アイリス……あ、メリルさんに回収されていった。


「……それじゃあ闘技場へ」


歩いていくのも面倒なので転移しました。

大概のこちらの人はひどく驚くのだが、ロクグさんはそうでもなかった。


「なるほど、エルフたちと同じ術が使えるのか……いやハイエルフだったか?」


どうやら経験の量が桁違いだ。

私の物とは違い、刃が厚く太い(長い鉈のような)刀を抜き構えるロクグ。


「おっと、そういや嬢ちゃん得物は?魔法だけか?」


「いえ、私もこれです」


二振りの愛刀を出現させる。

ソムニウムの折れた牙を持ち帰り、手持ちの魔素の結晶をすべてつぎ込んで全力で強化したのち、龍の牙を使い錬成していくと銘が変わった。この工程でレベルが一つ上がったこともついでに言っておこう。

よく考えてみたら私のステータスが高いのって武器のせいではないだろうか……。


「俺以外の刀使いを見るのはヤマトに行った時以来だな。しかも二刀とは」


「えーっと……それでは試合開始!」


シオンの声で開始が告げられる。居合いなんて言う高等技術は使えないので刀を抜き、構える。


ロクグさんは一通り自己強化をした後、まっすぐ突っ込んでくる。

予想していたよりも早い。刃を躱し、一度大きく距離を取る。神速を使って一気に距離を詰めるが攻撃はうけられてしまう。……このパターンは見切りか……。

すると有効策は……。

刃を影にくぐらせ回避不能の一撃を相手の刃に当てる。

思ったより威力が出てしまい、ロクグさん刀は砕け散った。


「奥義・影無か……」


奥義なのかコレ。ガンガン使ってるけど……。


「しかしこの刀が折れるとは……」


「わー…すいません。弁償します。ここまで砕けると修理は無理だと思うので」


「いや、別にいい。それよりその刀を打った鍛冶師を教えてほしいのだが……」


「私のこれは特別製ですので、でもこの子の原型を作った鍛冶師なら紹介できます。ついてきてください」


「そうか、すまないな」


街中に転移するのはなかなか危険なのでロクグさんとシオンを連れてヨウジさんの店に行く。


「ヨウジさん。お客さん連れてきました。刀お願いします」


「ああ、カナデさん昨日振り。さて、どんな感じの刀にします?」


ヨウジさんがすぐさま仕事モードに移る。


「幅広で頑丈な型の刀を頼む」


「素材とかはどうします?持ち寄りなら安くしますが」


「トニトル平原の雷獣の牙なんだが使えるか?」


「あーちょっと見せてください……はい大丈夫です。えっと……「ロクグさん」ロクグさんは雷魔法使えるんですか?」


「少しだけだが。風は使えんのだがな」


それは少し不思議だ。


「あとは金属か……玉鋼なら手元にあるんですが、ミスリルの方がいいですかね?」


「ミスリルを扱えるのか?!」


「はい、一応は。まあこの街でも一応高級品なんですけど」


「大丈夫です。シェリーに格安で譲ってもらいました」


「ほんと?属性付与はミスリルじゃないと安定しないんだよねー。じゃあ御代だけど……50000G、白金貨一枚でどうだろう」


「……安すぎないか?それともミスリルの代金とは別か?」


「いや、全部込みで。しいて言うならこのあとカナデさんが提げてる新しい得物を見せてもらうのが条件になって来るけど」


「やっぱばれてたか……」


結局ヨウジさんとロクグさんとの間で商談は成立したようだった。


「さて、その刀だけど……銘まで変わってるし、何したの?」


「……ちょっと龍の牙を錬成しました」


「なるほど白い方が『玉響(たまゆら)』で黒い方が『悠遠(ゆうえん)』ね。またチートなもの作って……」


「それで店主。完成はいつになる?」


「そうだな……最低で三日ぐらいかな。最近寝てないから無理できなくて申し訳ないけど。代わりと言ってはなんだけどこの刀貸しておくから」


カウンターの裏にあった黒い鞘の刀を預ける。なかなか良い物だったようでロクグさんが感動している。


「ヨウジさんこれって……」


シオンが壁に立てかけている長い武器を指しながら言う。


「ああ、うん、薙刀。最近作れるようになったんだ。それ最高傑作なんだけど、薙刀スキル使える奴いなくて」


「またそんなのばっかり作って……つぶれますよ?」


「薙刀スキルとれたらあれ貰っていいですか?」


「いいけど……あてはあるの?」


「近いうちにヤマトに行くので」


「ああ、なるほど」


ロクグと共に店を出る。


「ロクグさんはしばらくこの街に?」


「ああ、生活のために金が要るのでな。しかし、最近のモンスターは強すぎて歯が立たんな。こんなことなら騎士にでもなればよかった」


「ロクグさんって剣も使えるんですよね?」


解析で確認済みだ。


「ああ、それがどうかしたか?」


「なかなかの技術(レベル)ですし……どうです?講師(せんせい)とかやってみます?給料は要相談なんですけど」


「……詳しく聞こうか」


「この街で子供たちを集めてモンスターとの戦い方の基礎を教える学校を開くので、剣の講師にと思いまして」


「それだとこの街に住まなくてはならんのではないか?」


「部屋は貸しますよ」


「家族もいるんだが大丈夫か?」


「まあそれなりの広さは確保できるかと」


「それならばあとは給料だな……誰に相談すればいい?」


「あ、ちょっと待ってください。連絡取ります」

『ハルトさん。剣の講師見つけました』


ハルトに連絡する。


『わかった。ヴィクターにはこっちから連絡取るから魔研で』


用件だけですぐに会話は切れた。というかキクロさんじゃないんだ……。


「というわけですぐ面接です」


「わかりやすくていい。さて、案内頼めるか?」


「はい。こっちです」


シオンはいまだにヨウジさんと話し込んでいるので、そのまま魔研へと歩き出した。


「ところで嬢ちゃんはいくつだ?」


「えっと……こちらで言うと14歳?いやなんでもないです17歳です」


「なんだ娘と同い年か」


「ロクグさん娘居るんですか!?」


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