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女神の箱庭I =カサナルセカイ=  作者: 山吹十波
第12章 暴龍と女神の選択
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疑惑の長 -12-10-

一応6番隊の隊長でもあるハルトは、いつも通り6番隊の詰所で仕事をしていた。貿易のために港を解放した現在では処理すべき書類が山のように積んである。


窓の外からは片付けに追われる職人たちの声や、冒険者たちの活気ある声、市場から聞こえる売り子の声が響いてくる。

他の隊員は貿易を開始するための港の設備調整に追われている。副隊長のゼオンも旅に出る準備で忙しいそうで、現在一人で黙々と書類にむかっている。


……正直飽きた。


そんな時、部屋にノックが響く。


「ん?……どうぞ?」


「すまん。今いいか?」


ドアを開けてエイダイが顔を出す。


「カナデさんならいないよ?ステラの見送りに行ってるから」


「いや、そうじゃなくてだな……というかカナデはこんなとここねぇだろうが。ちょっとお前に聞いとかないといけないことがあるんだ」


「いいよ。仕事もひと段落ついたし、昼食にでも行こうか」


まったくひと段落ついているようには見えない書類の山の上にペンを放って立ちあがった。


冒険者メインのこの街ではかなりの高級店に含まれると思われる個室有の料理屋へ入る2人。


運ばれてきた水を口に含むとハルトが切り出す。


「で、聞きたいことって?」


「まあ、待とうぜ。とりあえず料理が来てからにしようや。もしかしたら聞かれちゃまずい話になるかもしれんし」


「え?エイダイなんかやらかしたの?弁護士呼ぶ?」


「ちげーよ」


しばらくして料理が運ばれてくる。店員が戸を閉めたと同時にエイダイは話を切りだした。


「実はな、オレ現実(あっち)の世界でベンチャーの社長とかやってるだろ?そうなるとだな、たまーによくわからん金持ち共のパーティーに呼ばれたりするんだわ」


「うん。それで?」


「なんのパーティーだったかは忘れたんだがな、お前にそっくりの奴を見たことがあるんだよ。まあアバターだから多少外見はいじれるかもしれないが、アレはお前だと断定できるほどにそっくりだった」


「ふーん……それって、僕が金持ちってだけじゃなくて?」


いつになく冷たい調子でハルトが返答する。


「何そのいやな言い方……。まあいったん落ちつこうや。もう一つ話をするぞ。このゲームの製作会社ルデーレっていうだろ?その会社ってたしか大手の大企業の傘下だった気がするんだよ。で、ここで話は戻るんだが、その大企業……っていうより財閥の御曹司さんがさっき言ったパーティーに出てたような気がするんだよ。……さて、答え合わせしようぜ『黄金遥人』」


「!!」


「……やっぱり合ってたか」


「……まさかエイダイに見破られるとは」


「……どういう意味だそれ。何のためにこんなことしてんだお前」


「こんなこと?」


「今更とぼけんなよ。ゲームの設定好きにいじくれる立場で、そこまでして苗字を隠さなきゃいけない理由とか、それに、初日にお前が最初に街に着いていた点とか、やたらやるべきことの指示をしてくる点とか……とにかくおかしいところ多いぞお前。そう考えると今回の事に一枚かんでるだろお前」


「うーん……主犯は僕じゃないからまだ何とも言えないけど。誰にもばれずに遂行する予定だったんだけど。まあどのみちもうすぐばれることになりそうだからもう少しの間黙っててね」


「それはお前が今からどんな話をしてくれるかによる」


「んー……何から話したものか……」


ハルトの話が途切れ、沈黙が起きる。このタイミングで食器などが下げられていく。


「まあ、転移について詳しいことは彼女(・・)に任せるからいいとして、そうだな……エイダイはこの世界を何だと思ってる?」


「まあ、ぶっちゃけまだゲームだと思ってるけど」


「普通に考えたらそうだろうけど、この世界は残念ながら実在する世界だ」


「はぁ!?じゃあオレたちはホントに異世界トリップしてるのか?」


「いやいや……順序立てて説明すると、まずこの世界に似せてあのゲームを作った、これはわかるだろ?」


「おう」


「そのあとこの世界をゲームに上書きした」


「そんな無茶苦茶な」


「まあ神様の力とか魔法とか理不尽なものだからね」


「まあ理論的にはわからんが、とにかくこの世界は実在するが、今はゲームの中に押し込められてるっていう認識でOK?」


「うん。大体あってる。っていうかこの説明ってなかったっけ?」


一息ついてお茶を啜るハルト。


「じゃあ先に聞いておくが、魔王倒して世界を平和にしたらどうなるんだ?」


「僕らは精神のみこの世界にいるわけだから、終わったら強制ログアウトみたいな感じになると思うけど。それと同時にこの世界も元の座標に戻すらしい」


「確信を持ってうなずけないが、今は納得するとしよう」


「じゃあ僕の事はしばらく黙っておいてね?」


「それはいつまでだ?」


「カナデさんたちがヤマトから戻るまでかな」


「ん?それはつまりお前の指す『彼女』って天照(カミサマ)のことか?」


「ははは……さてどうだろうね」


そういうとハルトは料理屋を出て行った。

それを見送るとエイダイも立ち上がり店から出る。


「まあ黙っといてやるか。その方が面白いかもしれないし」


「……ってアイツ自分の分払わずに出ていきやがった」


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