無の継承 -12-05-
重い音を立て、ソムニウムが地に沈む。
「……まさか瞬殺されるとは」
「そ れ で?どうするんですか!?」
「資格は十分、そうだろう?ソムニウム」
「ああ、そうだな」
いつの間にか人の形を取ったソムニウムが起き上がる。
「じゃあ、早めに引き継いじゃって。私もそろそろ消えるから」
「わかった。世話になったな」
「お互い様よ」
「ちょっと……まっ!まだ聞きたいことが!」
「ヤマトという国に神社とか言うのがあるからそこに行きなさい。首謀者が全部話してくれるわ」
「よし。カナデに女神の名を与えた」
「そうじゃあ最後の仕事してくるかな。……じゃあねカナデちゃん。リツによろしくね」
ヘシオドスは目の前から消える。
「え!?なんでお母さんの名前……?」
「よろしく頼むぞ新しい主人」
「へ?」
「無の女神。戦の女神。夢の女神。創造の女神。どれがいいと思う?」
「いや、どれも嫌だけど……私ホントに神様にされたの?」
「実感はないだろうがな。まあ、実際あまり変わっていない。大体神様なんて大層な役割でもないぞ」
「人々の信仰を集める以上大したことなんだけど……とりあえず私は何をすればいいの?」
「神殿を探し出して龍どもを叩き起こす。それと、霊峰の鍵はお前に預けた」
「とりあえず2つ質問していい?」
「構わんが」
「ヤマトっていうのは行った方がいいの?」
「お前たちを呼んだのは奴だから話を聞いた方がいいと思うが」
「まあ、それは後で行くとして、じゃあ2つ目の質問。あなたもお母さんの事知ってるの?」
「……水の女神・アーシアとして崇められていたが、親子だったのか」
「私もびっくりだよ……まあおかげで神殿の場所わかった気がするけど」
「何?」
「まあ、とりあえず外を見に行きましょう」
刀の位置を直し、歩き始める。それに半歩下がってついてくる竜眼の男。
「そういえば、私も神様としての名前引き継ぐの?」
「いや、カナデは“アルモ”という女神になった」
「なったの?」
「それに関しては良くわからんのだが。本当の神でもいるんじゃないか」
「女神の付き人がそれを言っていいのかしら……」
「そうだ。我も名前を戴きたい」
「は?ソムニウムじゃダメなの?」
神殿の礼拝堂を抜け外に向かう。途中すれ違った神官に崇められた気がするが気のせいという事にしておく。
「そろそろこの名前にも飽きた」
「名前かー……じゃあ星辰で」
「む?なにか思い切られたような気がするが……」
神殿の外に出て、空を見上げる。
暗雲は晴れ、空には白い雲が浮いていた。
「……何があったの?」
「あ!おねーちゃん。用事終ったの?」
「うん。それよりあの軍勢どうやって……?」
「なんか光ったと思ったら一気に空が晴れてモンスターも消えた」
エイダイがざっくりと起こったことを話す。
「カナデさんの用事は終わったんですか?」
「女神に会えたの?」
シオンとシズネが質問する。
「うん、終わった。詳しくは帰ってから話すけど。会議開かないといけないクラスの要件だから」
「じゃあ帰ろうか?」
「我はどうすればいい?」
「とりあえず神殿で待機?」
「わかった。何かあったらいつでも呼ぶといい」
そういうとソムニウム改め星辰は神殿の方へと歩き出す。
「ソムニウムなんでお姉ちゃんの言う事聞いてんの?」
「ソムニウムではない星辰だ」
星辰が振り向いて訂正する。
「なんで名前代わってんの?」
オトハがますます首をかしげる。
「それに関しても後で説明するから。早く帰ろう?ステラの事も不安だし」
「そういえば要人放置だな」
『アスカ。今から帰投するけど、問題はない?』
『はい、特には。ただ、フロールの騎士どもが若干うるさいです』
『わかった帰ってからエイダイが〆るから」
「おい、なんか余計な仕事増やさなかったかお前」
「気のせいじゃない?」
闘技場の真ん中へと転移する。けが人なんかはいなさそうだ。
「ヨウ、街の被害状況は?」
「大通りの石畳が何故か砕けてるぐらいで他は特にない。まあ、もしかしたら家の中で皿の一枚や二枚ぐらいは割れてるかもだけど」
「タクミ。石畳の方できるだけ早く直しておいてね。危険だから」
「わかった」
「オレの部屋もな」
「来月までには」
「とりあえずみんないったん解散。で、いつものメンバーは会議室ね」




