神試ス -12-04-
白い神殿を進むカナデ。
ゲームで来た神殿の雰囲気とまた違って感じられる。
神殿の奥には神官、巫女、そして参拝者の姿があった。
一番位の高そうな神官に話をすると、さらに奥へと案内された。
「ここから先は私は入れません。さあ、奥へどうぞ」
「案内ありがとうございます」
重い石の扉を開く。
内部は真っ白な大理石の部屋。部屋の真ん中には同じく大理石のステージがあり、一人の女性が立っていた。
「えっと……あなたがヘシオドス?」
「遅い!あなたたちがこちらに来てからもう20日経ってるのよ?一人ぐらい神殿に来てもいいと思わない?」
「いや、いろいろ忙しかったもので……っていうかなんで私が怒られるの?ハルトさんの責任のような……」
「へカテーの子孫と仲良くなったのはいいけど……祭りなんてし始めちゃうから思わず……」
どうやら龍の急襲はこの神のせいだった。
「えっと……私は何で呼ばれたのでしょうか?」
「ああ、そうだった!急がないと。まあ、簡潔に言うと……私もうすぐ死ぬわ」
「……は?」
「だからもうすぐ私死ぬんだって」
「えっと……神様って死ぬんですか?」
なぜか、ため息をつくヘシオドス。
「そこから説明しないとだめなのか……天照の奴、全く説明してないじゃない……」
樹になるワードが出たが、ヘシオドスは止まらずに続ける。
「いい?あまり時間がないから簡単に説明するけど、まず、私も他の10柱の女神も元はヒトよ?」
「10?8じゃなくて?」
「そう10。今から何百年か前の話だけど……魔王が生まれてね?それでその魔王を封印したのが異世界から来た10人を含む11人の勇者」
「!?……それって」
「そう、偶然迷い込んだのこの世界に。でも、あなたたちは私が呼んだんだけどね。……まあ、50万人も来るとは思ってなかったけど……あなた天照にあったら一発殴っといて?」
「はあ……それで、どうなったんですか?」
「とりあえず魔王を封印したら、なんか女神だと崇めたてられたわけ、門の封印を維持するために各地に神殿を建て、龍に守らせた。そして、10人のうち8人は元の世界に帰ったわ」
「え?それじゃあ今神殿は……」
「誰もいないわよ?」
「でも、門の封印は……!」
「そう。9柱の女神がいないと開かないわ」
「それじゃあどうすれば……」
「まあ、その件で呼んだんだけど。まず、この部屋なんだけど、大陸東側にある9つの神殿すべてのステージに女神が立ち、魔力を込めれば門は開くわ」
「だからその女神が!」
思わず身を乗り出したカナデをヘシオドスが牽制する。
「落ち着いて話を聞いて。時間がないの。この部屋は龍に認められたものしか入ることができないわ。まあ、あなたは例外なんだけど」
「どういうこと?」
「《神格》持ってるでしょ?それで、龍に認められる方法だけど」
「龍を倒す?」
「そう。でも、龍は普通に戦っても絶対に倒せない。だから試練を受けるの……認めてもらうために」
ヘシオドスが右手を振り上げると、カナデの視界は雲に包まれた。
「!!?……ここは!?」
「霊力の峰だったかしら、初めて使ったからわからない忘れちゃったけど。この空間なら龍を打ち倒すことができるわ。がんばってね、私の後継者」
「は?」
「それでは始めるか」
いつの間にか現れたソムニウムが声を上げる。
「は?ちょっとまっ……」
振り下ろされた爪をギリギリで躱す。
「おとなしく試練を受けてもらおうか」
「何が嬉しくて自ら神にならなきゃいけないの、よっ!」
一瞬で展開した魔法陣から光球を撃ちだす。
しかしソムニウムはそれを弾く。
「ふむ。お前の魔法は厄介だな……よし」
そういうと、ソムニウムを中心に光の輪が広がる。
「なにを……!?」
展開した魔法陣が砕ける。
「これは……イノセントフィールド!?」
「無の頂点にいるんだ。使えてもおかしくないであろう?」
地面すれすれの滑空で突進をかける。
が、カナデはそれを刀で受け止めた。
「……魔法ぐらい使えなくても、どうにかするわ」
「……赤火、黒鋼、狂咲、桜舞」
4つのスキルを同時に発動させる。
「狂咲は攻撃回数に応じてSTR上昇、桜舞はSTR90%減の代わりに一撃で10連撃に。それぞれ、効果は5分……いや、あと4分42秒で勝負をつける!」
カナデが前に飛び出す、ソムニウムへと最大速度で、連続で攻撃を仕掛ける。
「くっ……速いっ……」
「まだまだ!あと3分ある!」
ソムニウムのHPはまだ8割ほど残っているが、一撃によるダメージが目に見えてわかるほどに大きくなっている。
ソムニウムはここで初めて守勢にまわる。連撃を避けることに集中する。それでも3回に一回は確実に当たってしまう。速さでは負けているかもしれない。
完全に躱したと思った、カナデが眼前に現れる。
「牙貰うね?……砕牙!」
ソムニウムの牙が砕かれる。
そう思ったら背部に強い一撃を受けた。
残りHPは4割。
「あと1分半か。……でも、そろそろ魔法使えるよね?」
「む……」
「“結び・夢幻”」
カナデの刀が白い光を纏う。
無属性の光だ。
「龍爪!!」
二本の斬撃がソムニウムに向かって走る。
もはや躱すことはできず直撃。
「と ど め ! !」
ソムニウムの頭に白刃が振り下ろされる。




