光の半龍と風の獣人 -11-02-
『えーっと……第1試合が微妙な感じで終わったので後味は悪いですが、時間も限られてるので次の試合に行きたいと思いまーす』
『微妙な感じって……でも次の試合から冥府の門の使用は禁止ね?』
『まあ使える奴の方が少ないでしょうがねー。では第2試合、4番隊隊長ヨウと2番隊隊長エイダイ!』
『またこの隊の組み合わせか……』
『えー……ちなみに倍率はエイダイ1.09倍、ヨウ11.11倍となっています』
『ヨウの不人気さが目立ちますね』
そういう事じゃねーだろ!と怒声がフィールドから飛ぶ。
『それではハルトさんサイコロをお願いしまーす』
ハルトがサイコロを振る。
『それでは……4-2“貧民窟”展開します!』
荒い石畳の敷かれた細い道の街が出現する。
『ここで戦ったら柄悪い二人の喧嘩みたいにならない?』
『それでは試合スタートです!』
「はっはっは!普段から街を駆けずりまわってるオレと何もしてないお前どっちが強いかな?」
「……オレだろ?」
「テメェ……負けたら100万払えよ!」
「負けたらな」
エイダイが背負っていた大剣を構える。
ごつごつして走りにくい細道を走る。
「道狭いから大剣は使いにくいんじゃないか?」
「いや、さっきのうちの副隊長から学んだ……先にスペースを確保する!」
円を描くように大剣を振るい、家を薙ぎ払う。
「うわっ……マジかよ」
「行くぞ」
大剣の重さを感じてないかのように素早い動きで一気にヨウへの距離を詰めるエイダイ。
下からの斬り上げを数センチで躱し、攻撃に移るヨウ。
ヨウの上段からの攻撃を剣で受け、ヨウの体へと蹴りを放つ。
「ぐぅっ……かかったなエイダイ」
「は?」
エイダイの足元に転がされた魔法珠が輝き、鎌鼬が発動する。
「キクロに頼んでいくつか用意してたんだよ。スタートと同時に魔力こめれば上級魔法でも発動できるぜ?」
「……そうか」
『エイダイさん無傷に見えますが……。HPもほとんど減ってないし』
『ドラゴニュートだから魔法はほぼ効かないよね』
「……いや覚えてたよ?」
左手で魔法陣を展開しながら逃走を始めるヨウ。
『あの魔法陣は風神の息吹だね。全ステータス上げるチート魔法』
「なんでバラすんだよアホ解説者!」
魔法の発動まで逃げ切ろうと必死に走るヨウ。それを追うエイダイ。
「魔法剣Ⅱmode:Shine」
光をため込んだ大剣の剣閃が直線状に走る。地面に巨大な爪痕が残る。
「ちっ……殺り損ねたか」
「お前マジで殺す気だっただろ!ちょっと掠っただけなのにこんなに減ったぞ!」
4割ほど削られたHPバーを差しながら言う。
「……まあ十分時間稼ぎはできたがな」
全身に風の魔力を纏い、再び剣を抜き攻撃を開始する。
格段に速度の上がった連撃を受けきれずに手傷を負うエイダイ。
「どうだ!とりあえず利き手は潰したぞ!」
『おっと意外にもエイダイが押されてるね』
『これも作戦のうちでしょうか?』
「おい、ヨウ。魔法珠って誰が作ってるか知ってるか?」
「そりゃカナデちゃんだろ?錬金術でしか作れないんだから」
「オレ今朝カナデのとこ行ってもらって来たんだわ……コレ」
三色に明滅する大きめのサイズの魔法珠を取り出す。
「何その不気味な魔法珠」
「シオンとお遊びで作ったらしいが……実はスタートから魔力こめてたんだよ」
「……それ発動したらお前も死ぬ気がするが」
「ほら、オレ魔法耐性あるから。それに右手使えないだけでHPは残ってるし」
「え?ちょっ……早まるなって」
「あー……遅かったな。発動したぞ合成魔法地獄三昧が」
「何その不穏な名前……っ!?」
足元が一気に凍りつき、身動きが取れなくなる。
何とか抜け出そうとしている間にも氷の進行は続き、膝あたりまでが完全に凍りついた。
空からは黒い雷と灼熱の酸が降り注ぐ。
「どうしたヨウ死にそうだぞ」
「お前も結構効いてるじゃねーか!」
「想像以上に強かった」
展開された街(瓦礫の山)は燃え上がり、周りは完全に炎に包まれた。
『なんですかこの地獄絵図』
『というかこんな最終兵器お遊びで作らないでほしいんだけど……』
『あ、ヨウさんダウンしましたね。それでは試合終了……ってまだ消えないんですけどあの魔法』
『エイダイ消して』
「無理ですが?」
『ハルトさん結界やられそうですヤバいです』
『カナデさーん!自分で片付けてー!』
カナデが転移でフィールドの中心に現れ、イノセントフィールドで魔法をかき消す。
『えー……はい試合終了です。勝者はエイダイさんです』
『……魔法珠の使用禁止にしようか』
『とりあえず今回は黙認してください。ルールに書いちゃってるので』




